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第43回 桜と景色の関係今日から始めるデジカメ撮影術(1/3 ページ)

» 2006年03月09日 09時32分 公開
[荻窪圭,ITmedia]

 毎年3月下旬から4月初頭……年によって微妙に開花日が違う上、満開の時期が本当に短いという「旬」っぷりと、その淡くほのかではかない咲きっぷりが魅了して止まないのが「桜」。同時に人が桜を観るときって、「桜」だけを観てるわけじゃない。それこそ桜に「はかなさ」を観る人もあれば「華やかさ」を観る人もいるし、「桜の木の下に死体が埋まってる」と書いたのは坂口安吾だ(注1:)。そういう存在を写真に残すのはとても難しい。だから毎年ああでもないこうでもないと桜の写真に挑戦する人があとを断たない。

(注1:と、思いこんでいたけど、最初にそれを書いたのは梶井基次郎「桜の樹の下には」では、と指摘を受けた。確かにその通りのようだ。ここに訂正します)

 でも考えてみると、我々は桜の花びらや木、というより桜がある風景を通じて桜を感じているのだ(と思う)。そこで今回は、桜のある風景をテーマに撮ってみたい。

桜と建物

 桜のある風景を撮るということは、その1枚に「どこで撮ったか」が記されるってことでもある。普段よく知ってる場所だと特に、桜の季節とそうじゃないときの風景の差が感じられて面白いし、有名な場所や写真映えのする場所で撮るとすごく桜も映える。

 まずは有名な建築を背景に撮ってみよう。

 これは目黒区の駒場公園にある旧前田侯爵邸洋館。洋館の広い庭には桜が植わっていて、春になると花見にいいのだが、さほど有名な場所じゃないだけに落ち着けてよい。

 でもこれだと桜も洋館も中途半端。思いきって望遠で大きくして洋館と桜を向かい合わせたり、手前の桜と洋館を重ねたりと工夫すると雰囲気も違ってくる。

桜の枝と洋館を重ねて撮影
逆に洋館と桜が向かいあう構図で撮影

 どちらにもそれなりに味があってよい。

 さて今度はもうちょっと派手な建物を。北の丸公園にある国立近代美術館工芸館でかつて陸軍近衛師団司令部として使われていた明治時代の建物だ。ちょうど千鳥ヶ淵の桜と重なる位置にある。

青空に赤煉瓦が映える国立近代美術館工芸館。

 でもこれだと洋館が桜で隠れてしまうし、桜がいまひとつ目立たない。

 そこで建物をあまり隠さず、桜の花ももっと明るくなるような構図を見つけて撮ってみた。

縦位置にして桜が洋館の上から垂れ下がる感じで

 ポイントは下に建築、上に空&桜と構図を二分割していながら、桜の枝が右上から斜めに下がって屋根にかかっていることと、縦位置にしたこと。慣れないとつい横位置で撮っちゃうクセがある人も多いと思うけど、縦位置には縦位置ならではの面白さがある。

 PCの画面やテレビに映してみるときは左右に余白がたくさん出ちゃうけれども、そんなことは気にしないで積極的に縦位置撮影も活用しよう。

 ちなみにこの写真は3倍ズームの望遠側で撮ってるのだが広角側で撮るとちょっと社会派っぽくなる。

明治の近代建築と桜の間を分断する無粋な高速道路という絵だね

 今回、建物のカットが全景ではなく上半分だけだったのは、下はこんな風になってたからなのだ。なんとも無粋である。

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