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第1回 デジイチ動画って、イイモノですか?デジカメ動画活用塾

» 2009年12月16日 08時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

一般化しつつあるデジカメ動画

 フィルムの時代、静止画を撮影するカメラと動画を撮影するビデオカメラは別カテゴリの製品だった。しかし、カメラのデジタル化が進み、両者は緩やかに融合を始めた。

 レンズから入り込んだ光をフィルムに焼き付けるのではなく、撮像素子でとらえとるという仕組みはデジタルカメラでもデジタルビデオカメラでも同一。それならば静止画も動画も1台でまかなえるのではという考えに至るのはさほど不自然なことではない。筆者の記憶している限り、“動画の撮れるデジカメ”は10年以上前から登場しており、現在では、コンパクトデジカメラならば動画が撮れない製品の方が少ない。だが、あまり使われることはなかった。「撮った後にどうするか」に難があったからだ。

 その状況も変わりつつある。ビデオカメラで撮った映像はテレビで、デジカメで撮った写真はパソコンでというのがこれまでだったが、記録メディア(メモリカード)の低価格化や高圧縮コーデックの普及、なによりも動画投稿/共有サイトの一般化によって、「手軽にひとへ動画を見せる」ことが簡単になった。

 いまでも子どもの入学式や学芸会、運動会など長時間かつ高品質な動画を撮るならばビデオカメラの方が適しているのは確かだが、手軽かつ日常のヒトコマを記録する(そしてひとに見せる)ならばデジカメの動画機能で十分というシーンも増えた。積極的に動画デジカメを使う時代になったといえる。

「デジイチ動画」のメリット

 デジカメ動画を取り巻く最近のトレンドで注目すべきは、デジタル一眼の動画対応だ。細かな説明は次回以降とするが、デジタル一眼の動画対応がコンパクトデジカメに比べて遅く、動画対応を果たした製品は2008年9月のニコン「D90」からに過ぎない。誤解のないように書き添えておくが、対応が遅かったのは技術的な課題もさることながら、個人的には「デジタル一眼で動画」への需要見極めが大きな要因であるように思える。

 さてその“デジイチ動画”。まずは下の作例を見てほしい。キヤノン「EOS Kiss X3」にてフルHD撮影した動画から静止画をキャプチャしたもので、人物の背景にボケが生まれており、いわゆる“一眼っぽさ”が感じられるのが分かるはずだ。

 次は同じ被写体をデジタル一眼(キヤノン「EOS Kiss X3」とパナソニック「DMC-GF1」)、そしてコンパクトデジカメ(キヤノン「PowerShot G11」)で撮り比べた。EOS Kiss X3は「EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS」、「DMC-GF1」はパンケーキレンズ「20mm/F1.7 ASP」とレンズが異なるほか、3製品は撮像素子のサイズやから記録したフォーマットも異なる。だが、デジタル一眼の2製品とコンパクトデジカメでは背景のボケや解像感に大きな違いが見受けられる。この違いこそがデジタル一眼で動画を撮る最大のメリットだ。

photophotophoto 動画撮影に使用した3機種。左からキヤノン「EOS Kiss X3」、パナソニック「DMC-GF1」、キヤノン「PowerShot G11」

 デジタル一眼の静止画の画質そのままともいえる高画質な動画を撮影できるのが、「デジイチ動画」最大のメリット。しかし、注意しなくてはならない点もある。その最大の注意点がオートフォーカスと絞り、そして音だ。

 動画撮影時でもオートフォーカスの利用できる製品も登場しているが、動画撮影に特化したビデオカメラに比較すると、その合焦スピードは遅い。ペットや走ってくる子どもといった動きの速い被写体へ素早くフォーカスをあわせ続けることは苦手とする製品がほとんどだ。絞りについても同様で、露出が大きく変化した際、その変化へ速やかに追従できる製品も少ない。音についてもビデオカメラほどのクリアな録音は難しいほか、製品とレンズの組み合わせによっては、録画中にオートフォーカスを動作させるとその動作音が録音されてしまうこともある。

 ただ、最近のデジイチ動画が、その画質や使い勝手、周辺環境も含めて「普段は静止画、ときどき動画」という使い方にふさわしいものとなっていることは間違いない。機能として用意されているけれど使ったことがないというひとはぜひ一度、その楽しさを体験して欲しい。

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