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» 2010年03月10日 08時49分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:春のビデオカメラ総括 (1/3)

すでにビデオカメラのフルHD化は完了し、各社製品が次のアピールポイントを模索する時期に入って久しい。春モデルはファミリー向けを主としており大胆な新提案は見られないが、麻倉氏の目には今シーズンならではの傾向が映るという。

[渡邊宏,ITmedia]
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 今年も春のビデオカメラ新モデルが出そろった。例年、春商戦に搭乗するモデルはファミリー向けを対象としたコンサバなモデルが多い傾向にあり、大胆な提案を行う商品は登場しにくいが、それでも各社製品を眺めていれば、今シーズンならではの傾向が透けて見える。

 AV業界の最新情報や、独自の分析、インプレッションで定評のあるデジタルメディア評論家 麻倉怜士氏に聞く月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回はビデオカメラ2010年春モデルの傾向と、各社製品について考察してもらった。

麻倉氏: 昨年秋に述べたよう、ビデオカメラのAVCHD/フルHDはもはや当然として、今シーズンのモデルをみてみるとまずレンズの広角化が目に付きます(麻倉怜士のデジタル閻魔帳:ビデオカメラ最新製品、その傾向と課題)。これまではワイド端で40ミリ前後をスタートとする製品が多かったのですが、ソニーが「HDR-CX550V」などで29.8ミリから、パナソニックが「HDC-TM700」で35ミリからと広角化が進んでいます。ビデオカメラはズーム撮影も大切なので、広角化することでテレ端への影響を避けられませんが、室内などの撮影も考慮した結果、広角化に踏み切ったのでしょう。

 ですが、パナソニックがHDC-TM700に実装した超解像など、ズームを補う技術も登場してきました。レンズ交換を行えない家庭用ビデオカメラにおいて、超ワイドから超ズームまでを1台で補えるのは夢ですから、広角化は消費者ニーズに応えての潮流といえますね。

 もうひとつ目に付くのが、裏面照射CMOSセンサー搭載機の増加です。これまではソニーの独壇場でしたが、日本ビクターが「GZ-HM1」に「B.S.ICMOSセンサー」として採用し、キヤノン・パナソニックに差をつけました。裏面照射CMOSセンサーの流れは止まりそうにありません。それは暗所再現性に力を入れてきた証しでもあります。

 手ブレについては各社が強化をしています。ですが、先行するソニーも広角側のブレ補正を強化してきたこともあり、まだソニー製品には一日の長を感じますね。主な記録メディアにHDDではなくメモリを利用する製品が大半を占めるようになりました。パナソニック「HDC-TM700」に至っては96Gバイトものメモリを内蔵しています。家庭用ビデオカメラの世界は「メモリ○Gバイト」「○倍ズーム」など、数値が物を言う世界である側面もありますから、マーケティング的な側面もあるのでしょう。

 ソニー“bloggie”のような製品の登場もトピックです。ビデオカメラが従来型の形状やスタイルにとどまる限り、子どもの成長を中心とした家庭イベント記録機という限界を超えられないでしょう。イベントというハレだけではなく、日常というケを記録する提案を行い普及させないかぎり、市場は広まりません。

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 今後は名刺サイズで日常を静止画/動画の区別なく、シームレスに高画質で撮影する製品が求められると思います。似たような製品もいくつか登場しているのですが、安かろう、画質が悪かろうのものが多いのは残念です。安いではなく高品位な「小さい」製品を作って欲しいと思うのです。

 最近のデジカメはハイビジョン動画撮影機能の搭載が一種のブームになっていますが、ビデオカメラとしてみるとAFや手ブレ対策が甘く、そうした意味ではまだまだで、動画機としての製品作りをもっと丁寧に行うべきですね。

 では各社最新製品を見ていきましょう。

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