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2010年、デジカメのデジタル的進歩とは何か編集長に聞く(2/2 ページ)

» 2010年04月01日 15時00分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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高速連写を「連写」として搭載しない提案

ITmedia データ処理という意味で、2010年に注目すべき機能はありますか?

渡邊: 機能ではありませんが、昨年からトレンドになりつつあるのが裏面照射型CMOSの採用です。CMOSはCCDとの比較でいえば、画像読み出しのスピードが速いかわりにノイズが多く画質面に問題があるといわれてきましたが、近年の技術進歩で画質面の課題はほぼ克服されました。

CMOSセンサーを使い連写した画像を合成してダイナミックレンジを拡張する「ダイナミックレンジダブルショット」を備えたリコー「CX1」

 ソニーが初めて搭載製品を投入した裏面照射CMOSセンサーは、CCDに比べ低消費電力性や高速性に優れるというCMOSセンサーのメリットを生かしつつ、受光面を表面(配線側)から裏面へと変更、あわせて、構造面での変更も行うことで高感度/低ノイズを実現しています。

 ここで注目すべきは、裏面照射型CMOSセンサーを搭載した製品が、CMOSの高速な読み出しと高速化したデジタル処理を組み合わせることで実現した“高速連写”を、単なる“連写”としてのみ実装しなかったことです。裏面照射CMOSセンサーを搭載した製品が備える「ダイナミックレンジ拡張」「夜景手ブレ補正」「パノラマ」などは、ほぼ高速連写した画像をカメラ内で合成することで実現されています。

ITmedia ダイナミックレンジ拡張というとアーティスティックな写真のイメージがありましたが、通常撮影のいち手法としても使われ始めたということなんですね。

渡邊: デジタル処理の進化によって得られる恩恵は、高速連写にとどまるものではありません。富士フイルム「FinePix Z700EXR」などに搭載された「ペット検出」やパナソニック「DMC-FX66」に搭載された画像の特徴を解析して補正する「超解像」など、「デジタル処理をどのように使うか」という提案が、今後の製品作りのカギになると思います。

使う人の目的をかなえるカメラの増加

ITmedia コンパクトデジタルカメラにおいては、高倍率レンズや手ブレ補正、高感度、顔認識、レンズの広角化など過去にいくつもキャッチーな「トレンド」がありました。2010年のトレンドはなんでしょうか。

渡邊: メーカーによってアプローチが異なる状況です。例えば先ほどの高速連写。ソニーや富士フイルムやカシオ、リコーは、高速連写をうまく機能に落とし込もうとしています。カシオは「HIGH SPEED EXILIM EX-FS10S」にて、「ゴルフのスイングをチェックする」目的に高速連写を使いました。これは特定のターゲット層に強く訴求することですごく売れたんですね。

 連写や動画は昔から機能としてはあります。各メーカーが腐心しているのは、それをどうやって分かりやすいメリットに落とし込むかです。今シーズンの新製品でいうと、ニコン「COOLPX S6000」は夜景と人がキレイに撮れます、富士フイルム「FinePix Z700EXR」はタッチパネルで大量の写真が快適に見られます、ソニー「DSC-TX7」なら高速連写を使ってパノラマも撮れます、カシオ「EXILIM G EX-G1」ならばタフネス性能でどこでも撮影できます――−などなど、機能じゃなくて目的をうたうようになっているんです。使う人の目的をかなえる、提案型の製品が増えている印象です。

(後編に続く)

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