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最新デジカメの幸せと憂い山形豪・自然写真撮影紀

» 2010年04月23日 17時42分 公開
[山形豪,ITmedia]

 アフリカで自然の写真を撮り始めてから、かれこれ17年になる。高校卒業と同時に、父親の赴任先であった東アフリカのタンザニアに渡ったのが直接のきっかけだった。

 タンザニアはセレンゲティ大平原やンゴロンゴロクレーターなどに代表される大自然の宝庫だ。彼の地で過ごした2年半の間に何度もサファリに出かけ、雄大な風景やダイナミックな野生動物たちの世界に触れて行くうちに、美しい瞬間の数々をもっと写真に残したいと願うようになった。以来、野生動物や風景、そして時には人物の写真を撮り続け、現在に至る。ここ10年ほどは、南部アフリカ(南アフリカ、ナミビア、ボツワナ)を中心に活動しているが、フィールドはインド亜大陸にも広がりつつある。

 私は自然の多彩な姿を写真に残したいと常々考えているので、特定のターゲットを追い続けることはあまりしない。むしろ、その時その時の出合いを大切にしながら、感じたまま、気の向くままにシャッターを切るようにしている。車で南部アフリカ各地の国立公園や動物保護区、そして時には保護区にすらなっていない原野を訪れ、キャンプ生活をしながら撮影をする。私にとってこれ以上の幸せは無い。

photo ニコンD200, AF-S 500mm f4D ISO200 1/1000 f5 ナミビア、エトシャ国立公園にて撮影

 2003年以降、撮影の大半はデジタル一眼レフで行っている。ニコンの「D100」から「D2H」「D200」へと移り、現在では「D300」と「D700」を使用している。デジカメの登場によってもたらされた変化は数多い。例えば連続撮影枚数。フィルムカメラ時代には、一度に36枚しか撮影できなかった。秒8コマの連写速度では5秒弱で撮りきってしまう。

 それがデジタルになって、一度に数百枚の撮影が可能となった。決定的瞬間を逃すリスクが軽減され、撮影スタイルがよりアグレッシブになったと感じる。もっとも、シャッターを切り続けてさえいれば、良い写真が撮れるといった単純な話ではないし、ともすればトリガーハッピーになりがちなのが頭痛の種ではある。

photo ニコンD300 AF-S 500mm f4D ISO500 1/800 f4 南アフリカ、ドラケンスバーグにて撮影

 しかし、昨今のデジタル一眼の最大の魅力は、枚数が増えたことよりも、高感度域での撮影が可能になった点にあると思う。薄暮でもストロボに頼る事なく野生動物や風景が撮れたり、高速で移動する被写体に対し、レンズを絞り込んだまま1/2000秒以上の高速シャッターを切れるなどのメリットは非常に大きい。

photo ニコンD700 VR 70-200mm f2.8G ISO5000 1/160 f3.2 南アフリカ、サビサビにて撮影

 技術革新によって、それまで不可能とされていた新しい写真を、どんどん生み出せるエキサイティングな時代に我々は生きている。ただし、それは同時に、機材更新を頻繁に行わなければ、競争から取り残されかねないという事態も招いており、苦慮する部分でもある。カメラを1台買えば10年使えたのは今や遠い昔の話だ。高価なハイエンド・デジタル一眼レフを2〜3年おきに買い替えるのは決して容易ではない。どうにかならんものかと頭を抱える今日この頃だ。

著者プロフィール

山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。

【お知らせ】山形氏の新著として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが出版されました。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)


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