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空気感まで写せるコンパクトなカメラ――シグマ「DP1x/DP2s」開発者に聞く永山昌克インタビュー連載 (2/3 ページ)

» 2010年05月31日 09時20分 公開
[永山昌克,ITmedia]

――DP1発売後の反響はいかがでしたか?

桑山氏: 一眼レフと同じ大型センサーを搭載した高画質コンパクトカメラという点を高く評価していただき、発売当初は、供給が間に合わないくらいの人気を得て、品薄になってしまいました。遅い、使いにくいといった反応も覚悟はしていましたが、実際に購入されたユーザーの方は、1週間くらいでDP1のペースに慣れてしまう人も少なくないようでした。逆に不自由だからこそ、良い写真を撮る為にさまざまな工夫をした、写真を始めたころの撮る喜びを思い出した、といった感想を多くの方からいただきました。

 カメラの進化の方向としては、誰でもきれいな写真が簡単に撮れるよう、さまざまな機能が自動化していく大きな流れがあります。そのこと自体、全く否定はしませんが、その一方で、カメラが簡単になりすぎたことで、失われたものがあるのかもしれません。

photo P/A/S/Mに絞ったシンプルな撮影モードは、DPシリーズ共通の特長だ

 フィルム時代から多くの写真が好きの人の多くは、良い写真をたまたま撮れたことが、写真を始めたきっかけだったかと思います。最初のころは夢中になってたくさんの写真を撮り、たくさんの失敗を経験したはずです。ピントが合わない、露出が合わないといった失敗があったからこそ、勉強し、工夫をして撮影を行ったと思います。それだからこそ、うまく撮れた瞬間の喜びも大きいでしょう。それに、失敗することだって、それ自体が面白い体験だと思うのです。

 DP1は、結果として使いにくい部分があったことは確かですが、われわれの狙いとして写真の原点に帰り、写真を撮る喜びを感じられるカメラを目指したともいえます。ズームも、手ブレ補正も、顔認識も、今流行りのモノは何もなく、一見すごく使いにくく思えるカメラですが、慣れるにしたがって、それが苦にならなくなり、写真を撮ろう、作品を撮ろうと感じていただけると思います。

41ミリ相当の標準レンズを搭載した「DP2」

――DP1の発売から約1年後の2009年春に、シリーズ第2弾「DP2」が登場しました。41ミリ相当の標準レンズを搭載したモデルです。DP1に比べて、画像の処理速度など使い勝手の面が大きく進化しましたね。

photo DP2の後継機種「DP2s」にオプションのビューファインダーと専用フードを付けた状態

桑山氏: DP1の使いにくい面は、もちろん我々も反省をしていました。当時としては、なんとかして、このカメラを発売しなければいけないという思いがあり、その時点で可能な限りのモデルを発売しました。そして、その次の段階となるDP2では、より使いやすい製品を目指し、DP1ユーザーからの声を踏まえながら、さまざまな改良を施しました。

 特に大きな進化といえるのは、新しい画像エンジン「TRUE II」の採用によって、動作速度の向上と並行処理の実現、そしてより使いやすいようにユーザーインタフェースを改良したことです。それまでは、シングルモードで1枚しか撮れなかったところを、3枚まで連続的に撮影可能になりました。

 レンズについては、28ミリ相当では広すぎるという意見もあり、第2弾となるDP2では標準系のレンズに決め、その中でも使いやすい41ミリ相当のレンズを採用しました。と同時に、DP1ではできなかった開放値F2.8を実現しました。しかも、光学性能的にはDP1のものを上回るレベルで、非常に高性能です。このDP2の発売によって、主に風景や建物などを広く撮りたい人向けのDP1と、主にポートレートやスナップを撮りたい人向けのDP2といったラインアップになりました。

細部を改良した「DP1s」と「DP2s」、そして「DP1x」へ

――さらに2009年秋に、DP1の後継機「DP1s」が登場します。これはDP1のスペシャルバージョンですが、新エンジン「TRUE II」は搭載していません。

桑山氏: DP2で採用したクイックメニューのズームキー割り当て機能を搭載し、対逆光性能を改善したカメラがDP1sです。レンズやエンジンなどの基本仕様の部分は、DP1とDP1sの間で違いはありません。本来であれば、DP2と同等の新エンジン「TRUE II」を搭載するのが理想でしたが、そのためには開発に時間がかかってしまいます。それよりも早急に、より使いやすいカメラを提供したいと感じたため、DP1sを発売しました。

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