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第1回 液晶の特性を知り、写真向けの液晶を選ぶ今日から始めるデジカメカラーマッチング

» 2010年07月09日 11時00分 公開
[小山安博,ITmedia]

 デジタルカメラで撮影した画像をPCに取り込んでみたら、何か色が違う。目で見たときの色と撮影した色がそもそも異なる可能性もあるが、印刷してみてもやっぱり違う。この不揃いの色が起きる理由はなんなのか。そして、どうすれば解消できるのか。その方法を考えていきたい。

正しい色を再現するための「カラーマッチング」

 まず、大前提として本連載では、デジカメで撮影した画像を液晶ディスプレイで見た場合、それがデジカメの記録した色を正確に再現できているのか、という点を問題としたい。

 デジカメは基本的には目で見たのと同じ色をなるべく忠実に、JPEGやRAWといったデジタルデータで保存する。しかし、同じデータであっても撮影時に目で見た色と液晶ディスプレイで見たときの色と、プリンタで印刷してみた色とでは異なって見えることがある。こうしたデジタルデータの色再現性を一致させる手法が「カラーマッチング」だ。

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 デジタルデータの色を正確に再現するためには、「記録されているデジタルデータがどういう色なのか」「どのように再現すれば正しい色になるのか」「そもそもその色が表現できるのか」といったように、確認すべきいくつもの課題がある。デジカメで撮影した画像を、正しい色で確認するためのカラーマッチングを、これから説明していきたい。

液晶の特性を知る

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 まずは表示装置である液晶ディスプレイの仕組みを簡単に説明しよう。液晶ディスプレイの液晶自体は発光しないので液晶の背後からバックライトを使って光を当て、その光を液晶がどれだけ通すかで明暗を表現する。バックライト自体は基本的に常時点灯しており、液晶パネルで光の量を調節することになる。細かくシャッターを開け閉めできるブラインドのようなものと考えればいいだろう。

 電圧をかけることで液晶分子の光の透過率が変わり、一般的なTN方式の液晶は電圧がオフなら白表示、オンなら黒表示になり、電圧量を変えればグレーの色も表現できる。これは、液晶パネルとバックライトだけだと、白と黒、そしてその中間のグレーしか表現できず、モノクロしか再現できないということだ。

 そのため、通常の液晶ディスプレイでは、さらにRGBのカラーフィルターを用いることで、液晶の各画素に赤、青、緑の色を設定し、その3色の組み合わせと光の量の調節によって色を再現する。このRGBの輝度を足し合わせると白色になるという原理を加法混色という。液晶ディスプレイは、この加法混色によって色が表現される。

 液晶ディスプレイは、一般に最大で赤(R)256階調(8ビット)、緑(G)256階調(8ビット)、青(B)256階調(8ビット)の計1677万7216色を表示することができる。それぞれ10ビットや14ビットの処理を行う液晶ディスプレイも存在しするがほとんどが内部処理の段階の値であり、PC用ディスプレイに限れば、最終的な出力に際しては8ビットとなるものがほとんどだ。

 さらに液晶の表示能力には液晶の駆動方式も重要になる。現在の液晶は、一般的に3つの駆動方式に大別できる。TN(Twisted Nematic)、VA(Vertical Alignment)、IPS(In-Plane Switching)の3種類で、通常はTN方式が最もコストが安く、IPSが最もコストが高い。

 この駆動方式の違いは液晶の見え方に大きく影響し、特にTNは液晶を見る角度(視野角)によってコントラストが低下し、色の再現性も低下する。それに対してIPS方式は視野角も広く、液晶を見る位置で色が変化しづらいため、画像を見るのに最も適している。VAはIPSに近い広視野角を確保しているが、視野角によってはIPSより色が変化しやすい。液晶の色再現の正確性という意味ではIPS、VA、TNの順番と言えるだろう。

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