インタビュー
» 2010年07月27日 12時30分 UPDATE

インタビュー:「シャッターを押すことは制約ではない」――カシオの考える、カメラの未来像 (1/2)

デジカメ市場はミラーレス一眼のヒット、そして市況の回復によって緩やかながら回復の兆しを見せている。ただ、カシオ計算機は「カメラ」としての純度を高めた「高性能デジカメ」ではこれからの時代を切り開けないとの危機感を持つ。

[渡邊宏,ITmedia]

 デジカメが“デジカメらしさ”を本格的に身につけ始めた年――。後に振り返ると2010年はこのように回想されるのかもしれない。

 いうまでもなくデジカメの発想の原点は、フィルムカメラのデジタル化だ。その性能は飛躍的な進歩を続け、画素数のアップやオートフォーカス/自動露出といった基本的な機能はもちろん、被写体を含めた状況の自動判別やハイビジョン動画撮影などデジタル機器ならではの高機能化を続けた。また、製品価格も下がり、デジタルカメラは愛好家だけのものではなく、広く一般的なひとも多く利用する日常品となった。

 しかし、高機能製品の日常品化と普及に伴う単価下落によって、市場の成長は2008年夏のリーマンショックと歩みを合わせるよう伸び悩みの時期に突入する。需要が一巡したこともあり、各社は買い替え需要を狙う、あるいはいままでカメラに興味を持っていないと思われていた女性層を意識した製品の投入などを対抗策としたが、これまでの成長を回復するまでには至らなかった。

 その状況に変化が表れている。

 製品的な視点でいえば、オリンパス「PEN」やソニー「NEX」といったミラーレス一眼がヒットとなり、また、経済環境の緩やかな回復に伴い、市況的な視点でいえば、デジカメの国内総出荷量(台数ベース)は対前年同時期比で110.4%と持ち直しの傾向を見せている(CIPA発表、2010年7月発表資料より)。ただ、カシオ計算機のデジカメ事業部門トップである中山仁氏(執行役員 QV事業部長)は、これまでのように、「カメラ」としての純度を高めた「高性能デジカメ」の投入だけではこれからの時代を切り開けないとの危機感を持つ。

――先日、富士フイルムの樋口武氏(同社 取締役常務執行役 電子映像事業部長)は、本年度を「反転攻勢の年」と位置づけ、ワールドワイドで1200万台の出荷を目指すとしています。本年度、ここまでの市況をどのようにご覧になりますか。

photo カシオ計算機 執行役員 QV事業部長 中山仁氏

中山氏: 市況全体でいえば「戻ってきたかな」という印象です。ですが、コンパクトデジカメは金額比でまだ前年割れしている状態です。単価は毎年下がり続けているのですが、昨年から今年にかけてはそのぺースが早まった感があります。

 高機能製品が一般化したこともあり「カメラ」としての機能について、満足している人は多いのかもしれませんが、「デジタルならではの楽しさ」については、まだまだメーカー側からの提案――わたしたちであればカメラ内画像合成機能「ダイナミックフォト」と高速連写/高速動画撮影機能「ハイスピード」の用途提案――を行い、あらたな需要を掘り起こしていく必要があると感じています。

――ダイナミックフォトは2009年の春モデルから搭載されていますから、搭載製品が市場に出回り1年以上が経過します。反響はいかがでしょう。

中山氏: いわゆる「まじめな写真好き」からはまだ反応が薄いですが、女性や年輩の方を含めた幅広い層から反応を得ています。ですが、ダイナミックフォト機能を搭載していても製品の見た目はいわゆるコンパクトデジカメです。新しい用途や体験については、メーカーから提案してお見せしていかないと、楽しさや感動は伝わりにくいのです。

 いままでの製品では利用者がキャラクターを自分で切り抜き、合成する必要がありましたが、「EX-H15」など最近のモデルでは、あらかじめ動くキャラクターが内蔵されているので、それを使って、すぐにお気に入りの写真と合成できます。ここにきてようやく利用頻度も上がり、浸透してきたように感じます。

photo CP+に参考出品された、ダイナミックフォトの再生機能を搭載したデジタルフォトフレーム

 3月の展示会「CP+」ではダイナミックフォトの再生機能を搭載した、デジタルフォトフレームの参考展示も行いました。CP+はパシフィコ横浜という開催立地もあり、若い家族連れや女性も多く見えましたが、その多くからダイナミックフォトは驚きをもって見て頂けたと思います。「デジタルでしかできない体験を提供したい」という考えは、はQV-10のときから弊社内にある考えで、その思いはブレることなく引き継がれているのです。

――ダイナミックフォトについては、御社製品のみの搭載ですが、対象の切り抜きや合成といった技術やノウハウの他社提供はあり得るでしょうか

中山氏: あくまえでも自社でやっていきたいと考えています。機能や楽しさを普及させるために他社と協業するという考え方もありますが、まだ、それはないです。他社のやらないところを掘り起こしていく。それがカシオ計算機のアイデンティティです。

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