スノーケリングでは重力ではなく水の浮力が勝って上向きの力が働きます。それに風、波、潮の影響で思っているより体は動かされます。水中に入り込むダイビングだと呼吸で浮き沈みしてしまうため、やはり水中で止まって撮影することは難しいのです。
そう、水中撮影で最も気をつけることは「体を固定させる」ということです。ワイド撮影ではシャッタースピードを遅くしない限りまだ問題ないのですが、マクロ撮影では体をしっかり固定させなければ撮ることができません。ベストな方法は被写体からちょうど良い距離にある岩などをつかんで撮影することです。
これでスノーケルでのマクロ撮影ができました。ピントが甘いですが、まずはこれくらいからで十分です。少しずつ練習していけばキレイな写真が撮れるようになります。
ここまででも十分によい写真を撮れたと思いますが、せっかく海に来て写真を撮るのですから、もう一段階だけ写真を向上させる考え方をお伝えします。
デジタルエンタテインメントの世界でもそうですが、コンセプトが明確でないと、作品になった時に相手に伝わりません。写真も作品ですので同様のことが言えます。大切なことは撮る写真、作品を「イメージすること」です。撮る前に「何をどうやってどういう絵を撮りたいのか」。構図でも色のイメージでもなんでも良いです。
今回ボクがイメージをもって撮影したことを文字で伝えるとすると、
目線は砂浜に置いて遠くまで見えるような構図をとる。少し遠目にピントを合わせて、魚などは一切入れない。そうすると右にあるサンゴがドクロのようにも見えてきませんか?海の方に向かって撮っているようにも見えますが、実はこれ、海岸方向に向かって撮りました。
水面とサンゴの比率を同じになるような構図をカメラを構え、アオリ気味で撮影しました。波が多く存在していたために、魚を入れて少しうねった表現にします。水面反射の白色とサンゴに当たる太陽光の白色が織りなす空間を意識しました。
こうやってイメージして撮った写真は他人にも説明しやすいものですし、伝わりやすくなります。写真の意図を、少しずつでも言葉や文章で伝えられるようになるころには、技術面でも進歩していることでしょう。ただ、長い言葉や文章で伝えられるようになったからといって、それが「よい写真」なのかといえば、そうではないところがまた奥深く面白いところでもあります。
まずはシンプルなコンセプトを胸に、たくさん撮ってみてはいかがでしょうか。デジタルカメラの一番の良さは何枚でも撮れるところにあると思いますので。
「モテ」を実現する水中写真、いかがでしたでしょうか?
書いていて思うことは「モテ」とは「独りよがりにならない」ことではないでしょうか。熱意があればあるほどその行動では相手が引いてしまう。それを取り戻そうとあがけばあがくほどその必死さが相手には痛々しく感じてしまうでしょう。
撮った水中写真も同じく、相手に見せる機会があった時にウンチクは要らないのだと思います。「こういうのを撮るのがスキなんだ」とさらりと紳士をきどって言ってみてはいかがでしょうか。
次回、さらなる「モテ」をご紹介できればうれしいです。
平井武史(ヒライタケシ)。1971年3月5日生。
ネイロ株式会社 代表取締役 http://neilo.co.jp/
ゲーム業界エンジニア出身で暇さえあればダイビングおよび水中撮影に行くほどの大の海好き。特にフィッシュアイでのワイド写真が大好き。誰が見てもキレイで面白くて、そこに行きたくなるような写真を目指している。最近覚えた具志堅用高さんのオヤジさんのように「海を歩く人」に憧れる。
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