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» 2010年08月25日 08時30分 UPDATE

山形豪・自然写真撮影紀:カラハリ砂漠でキャンプの日々

ワールドカップの狂騒に包まれた南アフリカ。大都市もある南アだが、自然の宝庫であることにかわりはない。その自然界の恵みをどれだけ感じられるかが、良い写真が撮れるかのカギだ。

[山形豪,ITmedia]

 岡田ジャパンのベスト16進出もあって、日本でも注目されたサッカーワールドカップ南アフリカ大会は、非常に大きな盛り上がりを見せ、大成功のうちに閉幕した。私は日本のテレビ局の現地コーディネーターとして、開幕前から閉幕まで直接大会に関わるという貴重な体験をさせてもらった。

 大会閉幕後の7月半ば、自分のフィールドワークを一切せずに南アを去るのはもったいないと思った私は、滞在を2週間延長し、レンタカーを借りてカラハリ砂漠へと向かった。カラハリ・トランスフロンティア・パークと呼ばれる南アフリカとボツワナの2カ国にまたがる国立公園は、野生の宝庫とでも言うべき素晴らしい場所で、10年近く前に初めて訪れて以来、私のフィールドの1つとなっている。

photo カラハリ・トランスフロンティア・パーク内の風景 ニコンD700, AF-S 17-35mm f2.8, 1/1250 f8 ISO 320

 砂漠と言っても、カラハリは一般に連想されるような砂だけでの世界ではなく、まばらながら木や草が生えており、厳密には半砂漠と呼ばれる環境だ。それだけに野生動物も多く、自然写真家にとっては魅力的なのだ。

 カラハリ・トランスフロンティア・パークは、南アフリカの首都プレトリアから車で西へ1200キロメートルほど走ったところにある。日本でいうと、新幹線の東京〜博多間と大体同じくらいだ。これだけだとえらく遠いように聞こえるが、道路事情が良い南アフリカでは、丸1日のドライブでたどり着いてしまう距離でもある。

photo カラハリへと続く一本道 ニコンD700, AF-S 17-35mm f2.8, 1/1250 f10 ISO800

 ただし、問題は道中の景色がとても単調。ひたすら長い直線ばかりなため、睡魔に悩まされるのが難点だ。そのため、MP3プレーヤーはデジカメのメモリカードと同じくらい必要不可欠な持ち物だ。これにFMトランスミッターをつなぎ、車のステレオで音楽を聴けるようにすると、レンタカーは移動カラオケボックスへと変身する。大声で歌えば目も覚めるというわけだ。今回もプレトリアから目的地までは12時間の長丁場となったが、無事、1日で無事たどり着いた。その間かなりの曲数を歌い、多少声が枯れていた気はするが……。

 私の南部アフリカにおけるフィールドワークはキャンプ生活を基本としている。カラハリにはコテージやバンガローなどの設備も存在するが、それらを利用することはない。周囲の環境と自分との距離をなるべく縮めることも、写真を撮る上で重要な要素だと考えているからだ。それは就寝中でも同じだ。四方を壁で囲まれ、地面からも遠いベッドの上で寝ていると、自然のリズムから隔絶されてしまう。対してテント生活では、夜の生き物たちがたてる物音や、微妙な天候の変化、星々の瞬き、それらすべてを肌で感じられる。この大自然との一体感が私はたまらなく好きだし、感覚も研ぎ澄まされるのだ。

photo 縄張りをパトロールするオスライオン ニコンD700, AF-S 17-35mm f2.8, 1/400, f18 ISO500

 フィールドでの一日は夜明け前、鳥たちがさえずり始めるころに始まる。寝袋からはい出して靴を履き、テントの外に出て大きく深呼吸をする。ガスコンロで湯を沸かし、濃い目のコーヒーを入れて目を覚ましたら、太陽が地平線上に顔を出す前に撮影へと出発する。

 ライオンやヒョウなどの大型肉食獣がいる地域では、撮影は車内から行うのが基本だ。期待に胸を膨らませながら、ゆっくりと車を走らせターゲットを探す。ベストタイムは日の出からの2時間と、日没までの2時間だ。昼間は光線が強すぎるし、向きも悪いため、コントラストの無いフラットな写真になってしまう場合が多いからだ。

 日が暮れたらキャンプに戻り、夕飯の支度をする。ただし、これでフィールドワークが終わりとは限らない。星空や月明かりに照らされる風景、さらには夜行性動物など、夜は夜で撮影できるものが案外、多かったりするのだ。自然界のもたらしてくれる可能性は常に無限大だ。良い写真が撮れるかどうかは、その可能性をどれだけ敏感に感じ取れるかにかかっている。

photo 夜行性のケープギツネ ニコンD700, AF-S 70-200mm f2.8 VR, 1/125 f5.6, 内蔵ストロボをコマンダーモード、SB-800をリモートモードで三脚にマウントして使用
photo 月光で撮った自分とテント ニコンD700, AF-S 17-35mm f2.8, 10秒 f5.6 ISO2500

著者プロフィール

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山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。

【お知らせ】山形氏の新著として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが出版されました。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)


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