インタビュー
» 2010年08月30日 17時17分 UPDATE

「いまがチャンス」――レンズ交換式ビデオカメラ「NEX-VG10」の狙い

誰でも簡単キレイ、このイメージが定着しているソニーの「ハンディカム」にレンズ交換式の新製品が投入される。その「NEX-VG10」について狙いを尋ねた。

[渡邊宏,ITmedia]
photo 「NEX-VG10」

 ソニーより間もなく販売開始される、「AVCHD形式の家庭用デジタルビデオカメラとしては世界初」(同社)となるレンズ交換式デジタルビデオカメラが「NEX-VG10」だ。

 ハンディカムシリーズには「HDR-AX2000」など豊富なマニュアル撮影機能を有した製品も用意されているが、NEX-VG10はその型番からも分かるよう、この兄弟機としても位置づけられていない。「ミラーレスα」として大きなヒットとなったデジタルカメラ「NEX-3/5」と同じ“NEX”の型番を名乗る新製品の狙いを、同社パーソナルイメージング&サウンド事業本部 商品企画部門の田中大氏に尋ねた。

田中氏: ハンディカムの商品企画に携わる者として、「レンズ交換」という要素は社内ミーティングなどを開くたびに話題に上っていたのです。レンズ交換式のメリットは、撮りたい映像に合わせたレンズをユーザがチョイスできることで、それによって映像表現の幅は飛躍的に拡大するのですが、家庭用製品でそれを実現するにはあまりにも多くのハードルが存在していました。

 しかし、Eマウントの開発が社内で進められ、同時に本体の小型化やAFについても勘案すると「ハンディカム」として製品化することのメドが付くことが分かりました。業界初の家庭用レンズ交換式ビデオカメラを手掛けたいという、技術サイドからの思いもありましたね。

photo パーソナルイメージング&サウンド事業本部 商品企画部門 商品企画1部 1課 商品企画チームリーダーの田中大氏

――Eマウントという技術要素があってこその製品企画だったのでしょうか。

田中氏: それだけではありません。映像についても「絵を作りたい」要望があると思っていたのです。「大切な映像をキレイに」「ありのままに」はハンディカムの存在意義ですが、「こんな絵を撮りたい」という思いを持つ人も多いのではないでしょうか。静止画の世界でデジタル一眼が広く普及してきたのも、その「こんな絵を撮りたい」という欲求の表れではないでしょうか。

 ハンディカムシリーズには、マニュアル撮影機能の充実した「HDR-AX2000」という製品もご用意しています。ですが、HDR-AX2000は機動力が必要な報道関係向けなどという、半業務用機器という色彩を強く持った製品です。「絵作りをしたい」という欲求を満たすには、やはり新しい考え・コンセプトを持った製品を提供することが最適と考えたのです。

――それでも「ハンディカム」は子どもの成長記録を主な用途とする、ファミリーユースを指向した製品というイメージが強く定着してると思います。「絵作り」を一義に掲げる製品であるのに、なぜハンディカムのブランドを冠したのでしょうか。

田中氏: 新ブランドで世に送り出すことも考えました。ですが、ソニーとして動画を撮る製品」は“ハンディカム”として愛して欲しいのです。撮れる映像の種類であったり、交換レンズ式であることを注目すると分かりにくさはあるかもしれませんが、「ソニーの提供する動画を撮る製品」という観点からハンディカムブランドを冠することに決めました。型番に「NEX」を使ったのは、レンズ交換式であることを打ち出すためです。

photo NEX-VG10はEマウントを採用しておりレンズ交換が行える

 同社通販サイト「ソニースタイル」ではNEX-VG10の予約受付に先立ち、モニターの募集を行った。募集当初から多くの応募があり、その数は大きく予想を上回ったという。クリエイティブに映像を撮影したいというユーザの期待が、新製品には向けられている。

田中氏: 動画撮影可能なデジタル一眼の普及もあり、ここ数年、ボケ味があるなど「一眼的な映像」が受け入れられる土壌が醸成されつつあります。NEX-VG10はショートムービーや音楽のプロモーションビデオといった、印象的な映像を撮影するビデオカメラとして利用されることを想定しています。

 ユーザとして狙っているのは、映像撮影のプロではないけど、意図のある映像を撮りたいと考えている、プロとアマチュアの中間層です。確かに絶対的なユーザ数は少ないかもしれませんし、挑戦的な製品ではありますが、さきほど申し上げた「印象的な映像を撮る」市場は徐々に大きくなっていると感じています。

 市場が大きくなりつつあるタイミングと感じたからこそ、急ピッチで開発したのです。HDR-CX550Vのような既存製品でもマニュアル撮影はできますが、クリエイティブ指向の人には不十分で、それを補うには大判センサーやレンズ交換が必要なのです。

 レンズ交換を特徴としているのに交換レンズが3本というのは少ないという指摘は確かに頂いています。ですが、多ければいいというものでもありませんし、とりあえず出しましたというつもりもまったくありません。市場の状況を良く見させていただいて今後検討していきたいと思っています。交換レンズを含め、「クリエイティブ指向のビデオカメラ」という、カテゴリを充実させていくつもりです。

――その「クリエイティブ指向のビデオカメラ」が満たさなくてはいけない要素とはなんでしょうか。

田中氏: 大判センサーとレンズ交換は不可欠と考えます。加えて、NEX-VG10ではクリエイティブ指向の製品として何が譲れないかを重ねて議論した結果、「音」「長時間の録画ができるホールティング」「バッテリ寿命」など「録画機器」としての要件を重視しました。なかでも特に重視したのは「音」です。

 デジタルカメラ「NEX-3/5」でもフルハイビジョン映像の記録が行えますが、音の臨場感は映像に欠かせない要素です。NEX-VG10は4つのマイクを1ユニットとする「Quad Capsule Spatial Array」ステレオマイクを搭載しました。マイク1つ1つの指向性はさほど強くありませんが、4つ並べて制御をすることで録音時の指向性を高めています。音の臨場感がどれだけ映像に強い影響を及ぼすかはぜひ体感頂きたいところです。

photophoto 4つのマイクを1ユニットとする「Quad Capsule Spatial Array」を搭載する

――「挑戦的」との言葉がありましたが、今後、ビデオカメラ「NEX」シリーズはどのような展開を意図するのでしょう。

田中氏: NEX-VG10がまだ市場に出ていないのですが(笑)、「絵を作る」ことの方向性は変わりません。同時に、あくまでコンシューマ機器であることにこだわっていくつもりです。繰り返しになってしまいますが、「印象的な映像を撮る」市場はいままさに大きくなるタイミングですから、“いまがチャンス”だと認識しています。

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