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» 2010年09月01日 10時15分 UPDATE

今日から始めるデジカメカラーマッチング:第2回 sRGBとAdobe RGBを理解する

一般的に色再現性を重視するならばIPS方式の液晶ディスプレイを選択するのがベターだが、単純にIPSを選べば正しい色を表示できるかといえば、そうではない。「正しい色」を理解するために重要な「色域」について説明したい。

[小山安博,ITmedia]

 デジタルカメラで撮影した画像を、PCの液晶ディスプレイにて正しく色再現するには、駆動方式の選択も大切な要素だ(→第1回 液晶の特性を知り、写真向けの液晶を選ぶ)。液晶ディスプレイは一般的に駆動方式としてTN、VA、IPSのいずれかが利用されており、色再現の正確性は視野角による影響が少ないが、IPSは最も有利で、次にVAが続き、TNは不利となる。

 実際にはパネルの品質などによって色再現性は大きく変わるが、一般的には、色再現性を重視するならばIPS方式の液晶ディスプレイを選択するのがベターといえるだろう。ただ、単純にIPS液晶を選べば正しい色を表示できるかといえば、そうではない。今回は「正しい色」を理解するために重要な「色域」について説明したい。

sRGBとAdobe RGB

 PCのディスプレイにおける「色域」とは、そのディスプレイが表現できる色再現範囲を指す。この色を数値的に規定することで、どのデバイスでも同じ色が表現できるようにしている。色域を表現する方式は複数あるが、今回はPCで一般的に使われる色空間の規格である「sRGB」と「Adobe RGB」を取りあげる。

 sRGBは国際標準化団体のIEC(国際電気標準会議)が1998年に制定した標準規格だ。パソコン用ディスプレイやデジタルカメラ、プリンタなどのさまざまなデバイスがこの規格をサポートしている。もともとはCRTディスプレイを基準にした規格ではあるが、現在は標準規格として多くの環境で利用できる規格になっている。

 Adobe RGBは、その名の通り米アドビシステムズが制定した色空間で、こちらも1998年に発表されている。特に国際規格として標準化されているわけではないが、DTP業界などで標準ツールとして使われている同社製品がサポートしたことで、多くの環境で利用される規格となっている。

 この2つの規格の違いは、表現できる色域の違いだ。sRGBは、当時のCRTで表示できる色を想定していたので、Adobe RGBに比べると表現できる色の範囲が狭い。sRGBに比べると、Adobe RGBは青から緑にかけての色域が広い。

photo これはCIE(国際照明委員会)が定めた色の統一的な表示基準であるXYZ表色系のxy色度図。点線内が人間の肉眼で判別できるとされる色の範囲、三角形で囲まれた範囲のうち、赤い線がAdobe RGB、青い線がsRGBの色域

 デジタルカメラでは、たいていのコンパクトデジカメはsRGBのみをサポートする一方、ミラーレスタイプを含むデジタル一眼レフカメラはほとんどの製品がAdobe RGBもサポートする。より豊富な色で再現したい場合にはAdobe RGBを利用する方が有益といえる。

 液晶ディスプレイでは、ある程度のクラスの製品ならば「Adobe RGBカバー率95%」などAdobe RGBに対応する製品が多いが、安価な製品では対応していないことも多い。せっかくAdobe RGBで撮影しても、液晶にその表示能力がなければ、Adobe RGBの豊富な色を生かした表示が行えないわけだ。

 さて、ここで1つ問題。Adobe RGBの色空間を持つ画像をsRGBしか表現できないディスプレイで表示した場合、どのようになるのだろうか。

色の誤解

 パソコンで使われる液晶ディスプレイは、色の三原色である赤・緑・青(RGB)を重ね合わせていく加法混色で色を表現している。最近であれば、RGBに各8ビット(0〜255)ずつを割り当てた1677万7216色(256×256×256)を表示できる液晶が多い。

 ちなみにPhotoshopなどの画像編集ソフトで色を作成するとき、R(0)、G(0)、B(0)の色は「黒」、R(255)、G(255)、B(255)の色は「白」になる。では、R(51)、G(98)、B(57)は何色になるだろうか。

 正解は「深い緑」なのだが、sRGBとAdobe RGBの色空間では、色度図上で三角形の頂点の座標が違うことからも分かる通り、RGBの数値が示す色にズレが生じ、同じRGB値でも同じ色にはならない(白と黒は同じ)。実際に試してみよう。

 下の図は、Photoshopを使い、同じRGBの数値を入力して塗りつぶした画像を、それぞれsRGBとAdobe RGBのカラープロファイルで保存し、色情報を見たところだ。sRGB(左)とAdobe RGB(右)では、RGBとしての色情報は同じだが、見た目の色は異なっている。

photo RGBの数値は同じだが、異なる色になっている

 このように、同じRGBの数値でも色が違うのは、色空間ごとに規定された色が異なるからだ。RGBのそれぞれの数値はあくまで相対的なものであり、絶対的な色を表現したわけではない。絶対的に色を表現するには、前述のような特定の表色径の色度図の座標で表す必要がある。

 これが実際の画像になると、写真によって色ががらりと変わってしまう事態が起こり得る。Adobe RGBモードで撮影した画像をsRGBの色域しかサポートしない液晶で表示すると、意図した色とは異なる色、たいていは地味な色に表示されてしまう。こうした事態が起こらないよう、環境を整えるのが「カラーマッチング」の目的といえる。

photophoto 2枚の写真はいずれもNEX-5にてRAW撮影し、付属ソフト「Image Date Converter SR」を使って現像したものだが、左(sRGBモード)と右(Adobe RGBモード)ではわずかながら色味が異なっている。

関連キーワード

Adobe RGB | sRGB | 色再現 | IPS | カラーマネジメント


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