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高倍率スリムデジカメ7機種を比較する(前編)――テレとワイドの写りはどう違う?(1/3 ページ)

» 2010年09月07日 15時45分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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 一昔前、コンパクトデジカメはおおざっぱにいって、コンパクトな3倍ズーム機と、大きくてかさばる10倍超ズーム機に分かれてた。そんな時代、当時としてはコンパクトな10倍ズーム機「CAMEDIA C-700 Ultra Zoom」を投入したのがオリンパスである。2001年のことだ。その後、こうした「コンパクト系10倍ズームデジカメ」に明確なコンセプトを与えたのがパナソニックだ。旅行向きデジカメとして「LUMIX DMC-TZ1」を投入したのである。比較的薄型で、広角から望遠まで1台で済む旅行に最適な「旅カメラ」と定義したのだ。

 当時の技術で薄型10倍ズームを作るため、屈曲光学系と沈胴式レンズを組み合わせたユニークなレンズ構造を持っていた(ちなみに、今回の取りあげるIXY 50Sも同様の工夫をしている)のが印象深い。

 以降、同様のコンセプトを持つコンパクト高倍率ズーム機が各社から登場し始め、ひとつのジャンルを確立するに至ったのだ。今回はそんな10倍超のコンパクトズームを7台ピックアップしてみた。2010年春モデルも、最新の秋モデルも混じっているが、ざっとこんな感じ。

photo 今回用意した各社の高倍率スリムデジカメ。手前が秋モデルで、左からリコーのCX4、キヤノンのIXY 50S、富士フイルムのFinePix F300EXR。奥は春モデルで、左からソニーのDSC-HX5V、カシオのEXILIM EX-H15、パナソニックのLUMIX DMC-TZ10、ニコンのCOOLPIX S8000である

 2010年秋モデルは3台。キヤノンの「IXY 50S」はシリーズ初の高倍率ズームである。富士フイルムの「FinePix F300EXR」は15倍ズームと倍率を上げてきた。リコーはCX3のマイナーチェンジ版「CX4」。パナソニックから12倍ズームの「DMC-TZ10」。ソニーから10倍ズーム「DSC-HX5V」。この2機種は「GPSを内蔵」しているという点が他の5モデルと大きく異なっている。続いてカシオのEXILIM「EX-H15」とニコンの「COOLPIX S8000」はどちらも10倍ズーム。

 数が多いので、まずは、概要および広角端・望遠端の風景作例から。同じ青空を撮っても機種によって微妙に色が違うし、画角の差もはっきり現れるのでそれも見比べながらどうぞ。

キヤノン 「IXY 50S」

 キヤノンは高倍率ズーム機をずっとPowershotシリーズで担い、IXYで倍率よりスタイル重視でやってきた。だが時代の波か、とうとう10倍ズームIXYが登場した。「IXY 50S」である。

photophoto IXYらしいデザイン。薄さに気を配っただけあり、7機種中で唯一、レンズをひっこめたとき前面が完全にフラットになる(写真=左)、上面は他のIXYシリーズと同じ。オート・静止画・動画の切り替えスイッチで撮影モードを変える(写真=右)

 IXYらしい薄型ボディに光学10倍の高倍率ズームレンズを埋め込むため、屈曲光学系と沈胴式を組み合わせた「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」を採用している。本体内に横向きにレンズが入っている。おかげで沈胴式レンズもほとんど飛び出さない。それにともなってバッテリも小型のかまぼこ形になった。

photo 背面は右上に大きな録画ボタンを装備。電子ダイヤル兼十字キーの下に、MENUと再生キーがついた。画面はワイドでオートモードで人物と認識したところ

 気になるのは2010年モデルなのに、35ミリ換算36〜360ミリと他製品に比べて広角に弱いこと。撮像素子はIXY 30Sと同じ1000万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用した。

 シーン自動認識オート(こだわりオート)では「スポットライト」に対応した。ステージなどスポットライトを浴びた被写体を撮ると、今まではライトが当たってない場所にひっぱられて露出オーバーになるのが普通だったが、自動的にスポットライトと認識すると、明るいところに露出を合わせてくれる。これはよい。

photophoto 広角端(撮影モードは「こだわりオート」)。他の6機種に比べると画角がやや狭いのがわかると思う。空の色も自然で全体のバランスはいい(写真=左)、望遠端はさすがにかなり寄れるし、望遠時の空の色も乱れてないのはさすが。ディテールの処理もきれい(写真=右)

リコー「CX4」

 CX3ではじめて裏面照射型CMOSセンサーを採用したリコーのCXシリーズ。「CX4」はそのマイナーチェンジともいえる製品で、外装はグリップ部の処理が変わった以外は大きな違いはない。レンズも35ミリ換算で28〜300ミリ相当とCX3と同じ。

photophoto CX3からデザインコンセプトを引き継いだCX4。飾り気のなさがいい。ただグリップ部のデザインが変わった。指をひっかける出っ張りはあるが、CX3より滑りやすく感じる(写真=左)、モードダイヤルにある「C」と書いてあるポジションが新しい「クリエイティブ撮影モード」。MY1、2とセッティングを登録しておけるのもCXらしい(写真=右)

 マクロは相変わらず最強。広角端(といっても31ミリ相当くらいになるが)で1センチまで寄れるのに加えて、望遠端でもレンズ前28センチまで寄れる。300ミリ相当の望遠で28センチまで寄れるなんてCX4だけである。これは偉大。

photo 液晶モニタは相変わらず高精細。これはよい特徴だ。画面に見えている緑のグラフは「電子水準器」。このクラスで唯一の搭載モデルだ。右上にあるスティックが十字キーとなっており、クリックするとADJメニューが出る。Fnキーにも好きな機能を割り当てられる。

 機能面では「クリエイティブ撮影モード」に注目。ここではクロスプロセス、トイカメラなどデジタル処理をほどこすアート系フィルタ満載。これは遊べる。リコーらしいのはそれぞれに細かいパラメータ設定ができることと、通常撮影の写真も同時に残せること。連写+合成の手持ち夜景モードも搭載された。

 けっこう好きなようにカスタマイズできるのもリコーらしさ。良い意味で、オートより自分でどういう写真を撮りたいかコントロールして撮るのが好きな人向けだ。

photophoto 左は広角端。ちょっと露出オーバー気味というか、コントラストが高いかなという感じがする。少しアンダー気味にしてやるともっときれいな色が出たかも(写真=左)、望遠端は300ミリ相当。けっこうシャキッとしててよいが、色が少しかぶってしまった。そこが少し残念(写真=右)

富士フイルム「FinePix F300EXR」

 FinePix Fシリーズは高感度時の画質で高い評価を得たF10以来、どうもあか抜けない微妙なデザインが続いたが、今回の「FinePix F300EXR」はデザインもフルリニューアルしてきた。個人的には非常によいデザインになったと思う。曲面が多用され、全体に柔らかいイメージだ。

photophoto 電源オン時は必ずポップアップするフラッシュ。曲面をうまく使ったボディは魅力的。F200EXRの後継とは思えないデザイン(写真=左)、斜めのモードダイヤルがまたデザイン的に使い勝手的にもいい。EXRならではのダイナミックレンジ優先や高感度低ノイズ優先はEXRポジションのみで動作する。Adv.ポジションにはユニークな機能(パノラマなど)が納められている(写真=右)

 レンズは35ミリ換算24ミリ相当からの15倍ズーム。望遠端は360ミリ相当になる。今回の7機種ではもっとも高いズーム倍率で、それでいてボディはコンパクト。これが一番の特徴だ。

photo 背面の円形十字キーはホイール兼用。EXRオート時にシーン自動認識がはたらく。顔検出の精度はなかなか高い

 もうひとつ、このカメラには画期的な新機能がある。撮像素子である。1200万画素のスーパーCCDハニカムEXR――これは富士フイルム独自の構造を持つCCDなのであるが――になんとAFセンサーを埋め込んでしまったのだ。

 デジタルカメラのAF機構にはコンパクトデジカメやミラーレス一眼が採用する「コントラストAF」と、一眼レフが採用する「位相差AF」がある。位相差AFは高速だが、AF専用センサーが必要なため、コンパクトデジカメには採用しづらかった。富士フイルムは位相差AF用のセンサーをCCD上に埋め込んでしまったのである。

 で、結果はどうかというと、AFはコンデジ最速といっていいくらい速い。時間がかかりやすいマクロや望遠時でも速い。半押しをするとすっと合う。顔検出AF時はコントラストAFになるけれども、全体としては非常に速い。これは画期的だ。

 ただ、気になる点がひとつ。ひとつは「電源をオンにするとフラッシュが必ずポップアップすること」。発光禁止にしててもとりあえずポップアップする。これはちょっとイヤかな。

photophoto いずれも広角端で、左が「オート」、右がダイナミックレンジ優先EXR(DR)での撮影。DRの方は600万画素相当に画素数が落ちている。が、よほど大きくプリントしない限り、600万画素あれば何の問題もあるまい。等倍表示にすると気になるのがディテール描写の甘さと不自然さだ。色はいい感じなのだが
photo 15倍ズームという高倍率のため望遠端はここまで寄れる。あのボディでここまで寄れてAFが速いというのは魅力的だ。

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