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高倍率スリムデジカメ7機種を比較する(後編)――夜景とHD動画、独自機能を見比べる(4/4 ページ)

» 2010年09月10日 11時03分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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アート系フィルタ

 今までも色を派手にしたりセピア色にしたり、という簡単なフィルタ機能はあったけれども、それを使っていた人はさほどいなかったと思うそういう話も聞かなかったし。

 でもデジタル処理性能が上がった2009年あたりから出てきたのが、もうちょっと凝ったアート系のフィルタ。オリンパスが同社の一眼レフやPENシリーズで採用して以来脚光を浴び、コンパクトデジカメでも採用がはじまった。ミニチュア写真のように仕上げる「ジオラマ」や「ミニチュアライズ」、周辺部をわざと光量低下させて色やコントラストを処理する「トイカメラ」風など、今まではパソコン上で処理しなければできなかったフィルタだ。

 そこで、注目機能として取り上げてみた。

 DMC-TZ10はシーンモードの中、下の方に面白いフィルタが隠れている。例えば「ハイダイナミックレンジ」。暗部を持ち上げてダイナミックレンジを広げてみせる機能に色の処理を加えた「アート」などがそうだ。

photophoto 左が通常撮影、右がハイダイナミックレンジの適用。暗部を持ち上げるとコントラストが弱くなって地味になりがちだけど、より鮮やかにすることで印象的な絵に仕上げてくれる

 ほかにもピンホール写真風にするピンホールやわざと増感してざらついた白黒写真にするサンドブラストも容易されている。EXILIM EX-H15は「ベストショット」の中に油絵調や水彩画調、イラスト調のフィルタを持っている。カメラ内のフィルタにしては処理がうまくてそれっぽい。

photophoto EX-H15の「油絵調」(写真=左)、「イラスト調」(写真=右)

 IXY 50Sではここ最近のトレンドになりつつある「ジオラマ調」が面白い。また彩度を極端に上げる「極彩色」も一度使って見たい機能だ。これらはFUNCメニューの撮影モードの中にある。

photo 画像の一部を矩形に残して他をぼかし、彩度を上げてミニチュア風の写真に仕上げるジオラマモード。これはお見事。かなりミニチュアっぽい
photophoto 左が通常撮影、右が「極彩色」。一度は使ってみたい極彩色。地味な方が現実に近いのだけれども、晴れた日に極彩色で撮るとコントラストも彩度も上がって超ハデハデになって面白い

 CX4はアート系の「クリエイティブ撮影モード」を独立したポジションで用意した。これがまたけっこう数多く用意されていて面白い上に、ノーマルな写真も同時に残してくれるので気軽に使える。また、効果の度合いなどをコントロールできるのもリコーらしさ。自分好みのセッティングでアート系フィルタを楽しめる。

photo クリエイティブモード選択。数も多く、高精細液晶を生かして細かく解説してくれる。Fnキーを押すとさらに詳細な設定ができるのもリコーらしい
photophotophoto 「ミニチュアライズ」。ぼかさずに残す範囲と位置を決めて撮影。ただ、ミニチュアっぽさはIXYの方がでてたかな(写真=左)、「ソフトフォーカス」。ソフトフォーカスフィルタをつけて撮ったような効果。エッジがほわっと光るので印象的できれいな写真になる(写真=中)、「ハイブライト」。単なる白黒写真ではなく、ハイコントラストのざらっとした写真にしてくれる。これは印象的でよい(写真=右)

幅広いシーンで活躍する汎用性がポイント

 冒頭で書いたように、10倍超のズームレンズを持つコンパクト系高倍率ズーム機に各社力をいれてきた。はじめからそこを主力モデルとしてきたリコーにいたっては、春先にCX3を出したばかりなのにもう後継機CX4の登場だ。

 高倍率系コンパクトのメリットはいうまでもなく、3〜5倍ズームよりひとまわり大きいだけのボディで望遠に強いこと。撮りたいシーンが決まっているなら、レンズスペックは最初にチェックすべきだろう。

 「旅カメラ」として使うなら、旅行中に訪れそうな様々なシチュエーションに対応できる機種がいい。特定のジャンルに強いよりも幅広く撮れること。

 レンズは広い風景を撮れるよう広角系がいいし、夜の撮影もあるだろうしフラッシュ発光を遠慮したいシーンも多いだろうから、高感度撮影に強い方がいい。GPSはあった方がいいが、現在のGPS搭載機はまだ「はじめて搭載してみた」というレベル。今後もっと使い勝手がよくなっていくだろう。今の問題点は、GPSの精度より測位にかかる時間やタイミングだ。DCC-HX5VやFinePix F300EXRのようなパノラマ機能があるとより楽しめる

 日常的に使うのならコンパクトな方がいい。驚きはIXY 50Sだ。今までIXYはズーム倍率よりスタイリッシュさを重視したコンパクトモデルで、高倍率機はPowerShotシリーズに任せていた。そこにIXYらしい薄さ・デザインを持った10倍ズーム機を投入したのだ。ただ広角側に弱いので注意。広角側が35ミリ相当でOKというのなら、もっとも薄くて持ち歩きやすいIXY 50Sは候補だ。これらはオートで気軽に撮りたい人によい。

 逆にカスタマイズが充実していて、設定を自分であれこれいじりたい人に面白いのがリコーのCX4。マクロは相変わらず超強力で、望遠端でもかなり寄れるのがいいし、クリエイティブ撮影モードも使ってみると面白い。

photo CX4はテレ端で約28センチまで近寄れる。ピントはシビアになるが、なかなかすごい

 CX1の頃と比べると、他社も広角系10倍ズーム機を当たり前のように出す時代になったのでスペック的な優位性はなくなってきたが、CXシリーズ独特の個性は生きている。カメラ好きの人、フルオートよりカスタマイズして撮りたい人にお勧め。

 驚いたのが富士フイルムのFinePix F300EXRだ。デザインにも15倍ズームレンズにも驚いたが、もっと驚いたのは新型CCD。CCD上の画素の隙間に位相差AFセンサーを埋め込んだ、AFセンサー内蔵CCD。おかげでAFが速い。特にコントラストAFで遅くなるマクロや望遠端でのAFも速い。将来が楽しみな技術だ。

photo 何の変哲もないセミの写真だが、メイン被写体のコントラストが背景に比べて低く、なかなかピントが合ってくれない機種もあった中、FinePix F300EXRは迷わず合わせてくれた

 今回は春モデルと秋モデルが混在し、より新しい秋モデルを手厚く見てきたが、どれも便利すぎ。このサイズと価格で広角から300ミリ相当前後の望遠まで使えるとなるとお得すぎるシリーズだ。

 さすがに画質面やAFの正確さなど性能面で完璧な機種はなく、クオリティ重視派には不満な点も多いだろうし、各社が主力としている3〜5倍ズームモデルに比べると少し分厚くて大きめだ。それでも、このクラスに求めるのはクオリティより「持っててよかった」感。世の中、突然広角で撮りたいシーンや望遠で撮りたいシーン、動画で残したいシーンに出くわしたりするもので、それを逃さない方を優先するなら、高倍率系コンパクトに優るものはあるまい。

 その上で、自分が求めるプラスアルファ……たとえばより広角だったりより望遠だったり高感度だったりパノラマだったりフルHDだったりマクロだったり高速AFだったり遊び心だったりジオラマ撮影だったり、を加味して選んでみるのがよいと思う。

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