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狙うは写真の原点――富士フイルム「FinePix X100」(2/2 ページ)

» 2010年12月14日 09時06分 公開
[渡邊宏(撮影:矢野渉),ITmedia]
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大きさはファインダーが決めてくれた

――いま「最高画質」に次いで「小型化」というテーマが挙がりましたが、具体的なサイズの目標値はあったのでしょうか。

河田氏: 確かに小型化はテーマでしたが、小さくすればいいというものでもないと考えていました。目指したのは、操作感とサイズ(携帯性)の両立です。単焦点レンズを搭載した高級コンパクトデジカメというジャンルには先行する製品もありますので、どのサイズを目標とするかには迷いもありましたが、ファインダーを内蔵するならばこのサイズが最適と判断しました。

――ファインダー「ハイブリッドビューファインダー」は非常に特徴的です。倍率0.5倍の逆ガリレオ式光学ファインダーと144万画素液晶パネルを組み合わせ、光学式/電子式を切り替えながら利用できます。

河原氏: このアイディアはずっと温めてきたというものではなくて、小型カメラに光学ファインダーを搭載したいと考えたときに発案されたものです。ファインダーについてこのハイブリッドビューファインダーの搭載が決定したのはかなり後の方ですが、光学ファインダーを搭載するというのはかなり初期の段階で決定していました。ちなみに電子式のみを搭載するという案は最初からありませんでした。

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 光学ファインダーを搭載するならば、採光式ブライトフレームがよいだろうと考えたのですが、構造的に暗所では使いにくく、撮影後、すぐさまプレビューすることも難しいという問題もありました。そこで、考え出されたのがハイブリッドビューファインダーという方式です。光学式で利用する際は、発生するパララックス(視差)を補正する機構ももちろん備えています。

他社と同じモノを作っても仕方ない

――FinePix X100は「最高画質」「小型化」を目指したモデルということですね。では、デザインはどのようなコンセプトで形作られたのでしょう。天面にシャッタースピードや露出補正ダイヤル、レンズ鏡胴に絞りリングを配したクラシカルな外観は「フジカ」などのフィルムカメラを連想させるのですが……。

河原氏: このデザインとなった理由は2あります。1つは原点回帰というコンセプトです。「最高画質」を掲げるため操作性についてもシャッタースピード/絞り/露出を素早く設定できることが重要と考え、この3つについてはダイヤルやリングといった物理的な部品を用意し、かつ、ファインダーを搭載したところ現在のスタイルに落ち着きました。オーソドックスで撮影に集中できる操作性を実現した結果とも言えますね。

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photophoto シャッタースピードと露出は上部ダイヤル、絞りは鏡胴のリングで設定する。物理的なダイヤルを設けているため電源を入れなくても設定を確認できる

 もう1つが「良い写真が撮れるカメラ」「カメラらしさ」というイメージの具体化です。ノスタルジックな表現ですが――昔、父親が大切にしていた、本物のカメラ――というイメージの具体化です。ダイヤル類はすべて金属の切削で作り出しましたし、ボディのメイン素材はマグネシウムダイキャストへ、あの頃の連想させる銀色の質感を出すためにはかなりの試行錯誤がありました。

 ですが、「フジカ」「クラッセ」といったフィルムカメラのデジタル版というイメージをしたことはありませんし、そうした方向性を目指したこともありません。

――御社といえばフイルムメーカーとして長い歴史を持つ企業でもあります。そうしたフィルムメーカーとしての仕掛け、くすぐりのようなものは期待できますか?

河原氏: フィルムらしさといえば、ダイナミックレンジとフィルムシミュレーションでしょうか。また、特にモノクロにこだわりたいので、R/G/Yのフィルターイメージを再現できるようにしてあります。さらにカメラ内RAW現像機能を用意しており、RAW現像時にフィルムシミュレーションを設定することもできます。

あこがれの対象に

河原氏: 販売開始は2011年の春を予定しています。価格については未定ですが、長いスパンでファンを増やし、販売していきたい製品です。最初は写真愛好家が興味を持ってくれると思いますが、しばらくした後に、「一生に一台のカメラ」をという層があこがれを持って購入してくれることを期待しています。

photo 「FinePix X100が、写真撮影の楽しさの原点を見直すきっかけになればと願っています」という河原氏

 写真のデジタル化が急速に進み、写真撮影が手軽になったことは歓迎すべきことですが、きちんと構図をとってプリントしてといった、時間をかけての作り込みをあまり行わない風潮が強くなっているとも感じています。

 FinePix X100は撮影者の意図を反映しやすいカメラです。誰でも気軽に簡単に写真が撮れ「なにが高画質なのか、よい写真なのか」が分かりにくくなってきたのだとすれば、そうした風潮の中で「ファインダーをのぞいて撮る」という、写真撮影の楽しさの原点を見直すきっかけになればと願っています。

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