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「挟撃」されるコンパクトデジカメ、新たな進化の方向性2010年注目したカメラ&トピックス(ライター小山編)

» 2010年12月28日 09時02分 公開
[小山安博,ITmedia]

 2010年もいろいろなカメラが登場したが、いわゆるミラーレスタイプのカメラが大きな伸びを見せ、一定規模を確保した点が大きな話題だと思う。ミラーレス自体はパナソニック「LUMIX DMC-G1」以来、3年が経過しているが、その間、パナソニックとオリンパスのマイクロフォーサーズ勢が少しずつシェアを高め、今年になって、ソニーがNEXシリーズで参入してきた。

 ミラーレスカメラの登場によってレンズ交換式カメラの「難しそう」というイメージが緩和され、多くの初心者ユーザーを引きつけている中、ソニー「サイバーショット DSC-HX5V」、パナソニック「LUMIX DMC-TZ10」、カシオ計算機「EXILIM EX-H20G」といったGPS内蔵デジカメが複数登場したほか、裏面照射型センサー搭載機が増えたことなど、コンパクトデジカメにはさまざまな付加価値が搭載されてきているのも注目したいところといえる。

 裏面照射型センサーによる低ノイズ高感度撮影はカメラのいわば“足元”の強化だが、それ以外にもこのセンサーの搭載による超高速連写、フルHD動画、3D、HDRなど、単なる「写真撮影機」ではない付加価値は、携帯電話のカメラとミラーレスカメラに挟撃されるコンパクトデジカメの新たな進化の方向性だといえる。もちろん、コンパクトデジカメという形態でひたすらに高画質を目指すというのも1つの方向性だし、苦境だからこそそうしたさまざまな取り組みを来年も示して欲しいところだ。

ミラーレスカメラをさらに面白くするNEXシリーズ

 今年のミラーレスカメラを振り返ると、オリンパスは「E-PL1」「E-PL1s」という、どちらかというと初心者層に向けたモデルを発売。パナソニックは「LUMIX DMC-G2」「DMC-GH2」「DMC-GF2」の3モデルでバラエティに富んだラインアップを構成した。そして、今回取りあげるソニーのNEXシリーズ。「NEX-5」「NEX-3」の2モデルが登場したソニー初のミラーレスカメラは、その独特のデザインで注目を集めた。

photophoto ソニー「NEX-5」「NEX-3」

 これまでのオリンパスとパナソニックのマイクロフォーサーズ(センサーサイズが4/3型)陣営に対して、NEXシリーズはそれより大型のAPS-Cサイズセンサーを搭載しながらも、既存マイクロフォーサーズ機よりもコンパクトなサイズを実現した。

 NEX-3/5は初心者向けに特化したユーザーインタフェースを採用しつつ、カメラらしくないともいえる独特のデザインと3DパノラマやフルHD動画(NEX-5のみ)などといった特徴を備えている。大型センサーにより、マイクロフォーサーズ以上にボケ味を楽しめるということで初心者から上級者まで人気を得たようだ。

 これまでマイクロフォーサーズの独壇場だったところにソニーが参入したことで、さらにバラエティが豊かになったミラーレスカメラ。今後の他社の動向にも注目したくなるという意味で端緒となったカメラだろう。

通信とカメラの融合

 カメラのデジタル化によって撮影がより身近になったことに加え、デジタルならではの機能を備えたカメラも増えてきた。そうした中でもトレンドと呼べるのがハイビジョン(HD)動画撮影機能だ。コンパクトデジカメでもフルHD動画撮影機能を備えたモデルが増えたほか、レンズ交換式カメラでも、ドラマや映画にも活用されているキヤノン「EOS 5D Mark II」、動画機能を強化したパナソニック「LUMIX DMC-GH2」、ソニー「NEX-5」といった製品が人気を博している。

photo 「CEREVO CAM live!」

 動画撮影に続くもう1つの潮流として注目したいのが誰でもインターネット経由の生放送が行える「Ustream」の存在だ。撮影した動画をそのままリアルタイムに配信し、誰でも生中継ができるUstreamは、企業から個人まで、幅広く活用されている。

 そのUstream放送機能を備えたのがCEREVOの「CEREVO CAM live!」だ。本体に無線LAN機能を内蔵し、「Pocket WiFi」のようなポータブル無線LANルーターと併用すれば、外出先からでもいつでもどこでもUstream中継ができるのが売りだ。カメラとしては有効画素数900万画素CMOSセンサーに35ミリ換算42ミリの単焦点レンズを搭載し、比較的機能の少ないコンパクトデジカメではある。しかし、720pのHD動画を撮影してそのままUstreamで配信できるという大きな特徴がある。

 画質を求めるカメラではないが、Ustreamを始め、YouTubeやツイッター、mixi、Flickrなどの動画/画像共有サイトにもそのままアップロードできるほか、インターネット経由でカメラを操作することもできるなど、通信を生かした機能を盛り込んでおり、新しい世界観を生み出している。

 カメラではないが、無線LAN内蔵SDカード「Eye-Fi」も今年に入ってより高速化、大容量化を実現しており、こちらはSDカードスロットを有する多くのカメラを、セットするだけで無線LAN対応にできるのが大きなメリット。現在のところUstreamには非対応だが、こうした通信機能は、今後のカメラのひとつの方向性と言えそうだ。

進化するカメラ「iPhone 4」

 いわゆるデジカメではないが、アップル「iPhone 4」のカメラ機能も1つのトピックとして注目したい。裏面照射型CMOSセンサーを搭載し、有効画素数500万画素に抑えつつ、タッチパネルでサクサク撮影できる感覚は見事。携帯電話のカメラにおいて、コンパクトデジカメに匹敵する画質を実現しているのも注目だ。

photo 「iPhone 4」

 携帯カメラでも最近は高画素化が著しいが、下手に高画素化して逆に画質を低下させ、なおかつ、保存に時間がかかるのはナンセンスであるというiPhone 4の哲学は正しい。AFやGPSもそこそこで諦め、多少のずれは許容するという割り切りは、携帯カメラだから許せるし、日本メーカーにはちょっとマネできないかもしれない。静電容量式で快適に動作するタッチパネル液晶は、撮影した画像をサクサク閲覧でき、拡大縮小も実にスムーズで快適だ。

 発売後にはバージョンアップでHDR撮影機能にも対応。どちらかというと日本メーカーのカメラのHDR機能は、なるべく不自然ではないように効果を設定しがちだが、iPhone 4のHDRは極端な露出で撮影して合成しているので、効果がハッキリと分かりやすい。

 こうしたバージョンアップで機能が向上するというのは、これまでの携帯電話にはあまりなかったことであるし、デジカメ業界にもそれほど多くはない。とはいえ、最近はソフトウェアで機能向上する例も増えてきているが、デジカメではマネできないのが、iPhoneを含むiOS用のアプリの存在だ。

 モノクロ、魚眼風、トイカメラ風など、さまざまな効果を備えたカメラアプリや、画像を編集するアプリなど、必要な機能をユーザーが自由に追加できる感覚は、通常のデジカメにはない世界だ。すべてをメーカーが開発しなければならないデジカメに比べると、外部のリソースに開発を任せるというのはスマートフォンならではだろう。

 もちろん、CEREVO CAM live!のように、通信機能を使ったUstreamや画像アップロードなどの機能も備えており、GPS内蔵による位置情報の取得、地図表示もできてしまう。iPhone 4のような拡張性と通信機能を備えたカメラに対抗するためには、コンパクトデジカメはまた異なる考え方・アプローチが必要になってくるだろう。

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