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速いことには意味がある――メモリカードの高速化を推進するサンディスク

» 2011年02月02日 21時09分 公開
[ITmedia]

 サンディスクは100MB/秒を実現する高速コンパクトフラッシュ「サンディスク・エクストリーム・プロ・コンパクトフラッシュカード」(128Gバイト版)ならびにSD3.0規格にて策定されたUHS-Iに準拠したSDHCメモリーカード「サンディスク・エクストリーム・プロ・SDHC・UHS-Iカード」を発表した(→サンディスク、128Gバイト高速CFとUHS-I対応SDHCカードを発売)。

 高速化という意味では既にSDスピードクラス10(最低書き込み速度10Mバイト/秒を保証する)対応製品の低価格化も進んでいるなか、なぜここまで高速な製品を投入していくのか。同製品の発表にあわせて来日した米サンディスクのプロダクトマーケティングディレクター、スーザン・パーク氏に話を聞いた。

photo 米サンディスク プロダクトマーケティングディレクター、スーザン・パーク氏。手にしているのはUHS-I対応の「サンディスク・エクストリーム・プロ・SDHC・UHS-Iカード」

――まずはコンパクトフラッシュですが、コンシューマ市場を見るとコンパクトフラッシュを利用する映像機器は少数派になりつつあります。そこで投入される100Mバイト/秒というような高性能メディアは、プロ向けを意識しているのでしょうか。

パーク氏: そもそも「エクストリーム」ブランド自体がプロの求める要望に応えられるブランドとして位置づけられていることもありますが、確かにデバイス(映像機器)を見渡すと、コンパクトフラッシュを利用するのはプロもしくはハイアマチュア向けの機材が多くなっています。わたしたちの高性能コンパクトフラッシュは、そうした製品向けに、パフォーマンスや耐久性を提供していくことになると思います。

――次にSDHCメモリーカードですが、「エクストリーム」のブランドを関したカードは既に販売されています。新製品は新たにUHS-I対応を果たしたということでしょうか。

パーク氏: 「エクストリーム」シリーズも順次UHS-I対応を進めていくので、「エクストリーム」と「エクストリーム・プロ」の違いは転送速度となります。エクストリームは30Mバイト/秒の読み書き速度ですが、エクストリーム・プロではこれが45Mバイト/秒に引き上げられています。対応するカメラやパソコンでは、その違いを体感してもらえるはずです。

 エクストリーム・プロでは新たなコントローラ「サンディスク・パワーコア・コントローラ」を搭載しており、「UHS-I対応とそれに伴う高速化」「アドバンスド・データ・セーフ・マネージメント」「アドバンスド・ウェアレベリング・システム」「アドバンスドECC」といったメリットを利用者に提供しています。

――それぞれについてもう少し詳しく解説して頂けますか。

パーク氏: まずUHS-I対応とそれに伴う高速化ですが、新コントローラによって4つのメモリチップへ同時にアクセス可能です。また、データの大小や種別を判別しながら最適な書き込みを行う「インテリジェント・データ・ディテクション」も高速化の一助となっています。

 次にアドバンスド・データ・セーフ・マネージメントです。一度書き込まれたデータについては、電源が落ちたりしてもこの機能によって可能な限り守られるため、不意のトラブルに際してもデータの破損を免れる可能性が高くなっています。このようなことができるのはコントローラのほかファームウェアの開発も自社で手掛けているからです。

 ウエアレベリング(書き換え回数平準化)とは、メモリの使われ方を制御して、1カ所に書き込みが集中しないようにする処理です。これによってメモリ全体の耐久性を向上させることができます。この仕組み自体は既存製品から実装されていましたが、プロシューマ向け製品ということもありますので、さらに進化しています。ECC(Error Correcting Code)はリード/ライト時の整合性を高め、結果として信頼性を高めています。

――新製品は2種類とも非常に高速なカードですが、SDメモリーカードについては「スピードクラス」や「○Mバイト/秒」、さらには「UHS-I」など速さを表す言葉が複数あり、利用者の混乱を招いていますように思えます。

パーク氏: SDメモリーカードの速度を表す言葉などについて、誤解や混乱を生じかねない状況があることは把握しています。

 スピードクラスは連続した最低の転送速度を保証する動画保存向けの表現で――720pならスピードクラス4、1080pならスピードクラス6のカードが適しているなど――、カード全体のパフォーマンスを示す数字ではありません。カードをデジタルカメラ用と考えれば、瞬間に書き込めるスピード(ピークスピード)が重要になります。つまり、1秒あたり何Mバイト転送できるかが求められる訳です。

 UHS-Iはインタフェース規格の名称で、より高速な転送を可能としたカードであることを示しています(UHSインタフェースでは最高で104Mバイト/秒(理論値)まで転送速度が速められている)。最低限どれだけの転送を連続して行えるかを示す「UHSスピードクラス」は現在のところ1つしか用意されておらず、「UHSスピードクラス1」のカードは10Mバイト/秒の最低転送速度を持つため、フルハイビジョン映像の記録も問題なくこなすことができます。UHSスピードクラス1の「10Mバイト/秒の最低転送速度」は、スピードクラス10と同じ表現ですが、測定方法が同一ではないので、スピードクラス10相当と考えた方がよいでしょう。


 新製品の発表会では、エクストリーム・プロのデモンストレーションとして、UHS対応のデジタルカメラ(ニコン「D7000」)を利用してのテスト撮影が行われた。D7000で20枚を連続撮影する時間は、最高15Mバイト/秒の「ウルトラ」(SDスピードクラス4)が86秒、最高45Mバイト/秒の「エクストリーム・プロ」(UHSスピードクラス1)が29秒だったそうだ(写真1枚あたりの平均サイズは24〜26Mバイト)。

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 「レスポンスの素早さが大切なデジタル一眼レフでは、カメラ本体の快適さを失わないよう、できる限り高速なカードの利用をおすすめします」 パーク氏は高速カードを選択することによって得られるメリットをこのように強調する。UHSについては対応製品がまだ少なく、恩恵を受けるにはまだ時間が必要な状況だが、カメラの撮像素子数増大やHD動画の普及、3D動画撮影機能の登場など、記録メディアおよびインタフェースの高速化に対するニーズはまだまだ伸びる可能性を秘めているといえる。

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