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南部アフリカで見られる野生のネコたち山形豪・自然写真撮影紀

» 2011年02月22日 11時00分 公開
[山形豪,ITmedia]

 「ネコ」という動物は、便宜的に大型ネコと小型ネコという2つのグループに分けることができ、私がもっぱらのフィールドとしている南アフリカ、ナミビア、ボツワナの3カ国には大型ネコが3種、小型ネコが4種生息している。

 それでは、まず大型ネコ3種から見ていこう。

 筆頭はやはりライオンだ。言わずと知れたアフリカを代表する猛獣である。大きなオスは体重が250キロを越えることすらあり、ネコと呼ぶにはあまりにも巨大な動物だ。ライオンはそのサイズ以外にも、およそネコらしからぬ点が多い肉食獣である。例えば、彼等はプライドと呼ばれる群れを作って行動する習性を持ち、組織的な方法で狩りをする。

photo 咆哮するライオン 南アフリカ、カラハリ・トランスフロンティア・パーク ニコンD300 500mm F/4D F/8 1/1250秒 ISO 800

 また、オスのみが長いたてがみを持つため、雌雄の見分けが簡単にできる。これらはネコの世界でライオンにのみ当てはまる特徴だ。サファリでアフリカを訪れる人が絶対一度は見たいと願うライオンは、人目に触れることをあまり気にしないので、ネコ科動物の中では一番出会うのが簡単だ。

 ヒョウは世界の大型ネコ科の中で、最も数が多いと言われている種だ。分布域はアフリカから中近東、東南アジアと極めて広い。インドのムンバイでは、スラム街の中で暮らしていた事例すら報告されているくらい環境適応能力も優れている。数が多ければ、フィールドでの遭遇率も当然高いだろうと思いきや、さにあらず。この優美な狩人は出会うのがとても難しい。人目に触れることを嫌い、気配を消すのがとてもうまいからだ。

photo 木を降りるヒョウ ボツワナ、マシャトゥ動物保護区 ニコンD300 VR 70-200mm F/2.8G F/8 1/1000秒 ISO 800

 そのため広大な南部アフリカでも、間近にヒョウを観察・撮影できるのは、南アフリカのサビ・サンズ私営動物保護区やボツワナのマシャトゥ動物保護区などの限られたエリアだけだ。これらの場所では、何世代にも渡りヒョウたちが観光客や車の存在に馴らされてきたので、人の気配がしてもあまり姿を隠さないのだ。

 ライオン同様、アフリカとセットで連想されることの多い動物、それがチーターではなかろうか。彼等は最高時速110キロを越える速度で獲物を捕らえる俊足のハンターである。スピードを出すのに適したしなやかな胴体と長い脚、そして急速ターン時にバランスをとるための長い尻尾を持つ。

photo カラハリのチーター 南アフリカ、カラハリ・トランスフロンティア・パーク ニコンD300 VR 70-200mm F/2.8G F/10 1/3200秒 ISO 1000

 また、ネコのくせにツメを完全に引っ込められないのも特徴のひとつ。これは、走る際にツメをスパイクとして利用するためだ。このようにチーターの体は高速で走ることに特化している。しかしその代償として攻撃力を失ってしまったため、サバンナの大型肉食獣の中では最も弱い。ライオンやハイエナにすぐ獲物を横取りされてしまうのはそのためだ。

 一見するとチーターとヒョウは良く似ているように思えるが、実は多くの相違点がある。例えば、チーターの胴体には黒い斑点があるが、ヒョウのそれは“点”では無く、ロゼッタと呼ばれるバラ模様である。また、チーターの顔にはティアマークと呼ばれる目から口にかけての黒い線がある。それに良く見ると、この2種は体格も違う。ヒョウの方が基本的にゴツく筋肉質なのに対し、チーターはとてもスレンダーで頭も小さい。生息環境も、ヒョウが植物の生い茂った隠れやすい場所を好むのに対し、チーターは走りやすい開けた場所を選ぶ。

 以上がアフリカの大型ネコ御三家である。次回は南部アフリカの小型ネコたちをご紹介するので、乞うご期待。

著者プロフィール

山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら

【お知らせ】山形氏の新著として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが出版されました。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)


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