インタビュー
» 2011年02月22日 17時05分 UPDATE

写真を楽しむソフト――開発者に聞く「Lightroom 3」

アドビシステムの「Lightroom」といえば一般には「プロ向けの現像ソフト」として認識されているが、開発者によればそうでもないらしい。メッセージは、「より大きくの時間をカメラに、パソコンの前の時間を短く」だ。

[渡邊宏,ITmedia]

 アドビシステムの「Lightroom」といえば、プロの写真家も多く愛用する写真管理ソフト。最新のバージョンの「Lightroom 3」が昨年6月より販売されており、昨年末にはニコン「D7000」やパナソニック「DMC-GH2」などのRAWデータに対応したバージョン3.3となっている。

 文字通りのプロ向けツールとして認識されることの多い本製品だが、デジタル一眼の普及とそれに伴うユーザー層の拡大もあり、近日ではハイアマチュア層の愛用者も増えているという。バージョン1.0から開発に携わっている、米アドビシステムズのトム・ホガーティ氏に話を聞いた。

photo 米アドビシステムズ プロフェッショナル イメージング シニアプロダクトマネージャーのトム・ホガーティ氏

ホガーティ氏: 実は、Lightroomは最初からソフトとしてプロ向けとして開発した製品ではなかったのです。ですが、プロの写真家がデジタル写真の処理について「痛み」――特にワークフローについて――を抱えていたこともあり、結果として多くのプロに使ってもらえることになりました。これは北米市場の話ですが、最近の調査ではプロの写真家にとって、Photoshopに次いで使われているソフトがLightroomであるという結果も出ています。

 加えて、その調査ではハイアマチュアのユーザーが増えていることも同時に判明しました。Lightroomは、プロの利用に耐えるクオリティを保ちながら、ハイアマチュアにも使ってもらえることを目指していましたので、その目的は達成することができたと考えています。

photo Lightroom 3

――いつ頃からハイアマチュアの利用が増えてきたのですか? また、最新バージョンの「3」ではどのようなポイントをバージョンアップの念頭においたのでしょう。

ホガーティ氏: 実は、初めてのパブリックベータから、ハイアマチュア層の反応は良いものでした。現在も登録カスタマーベースでいえばノンプロがほとんどで、iPhotoやPicasaといったソフトからステップアップしてくれたようです。

 バージョンアップについてまず念頭においたのは、ユーザーの負担にならない、シンプルなものにすることでした。Photoshopはバージョンアップ時に設定のほぼすべてを別途保存する必要がありますが、Lightroomではほぼすべての設定がそのまま引き継がれます。

 新バージョンの設計にあたっては、アプリケーションのパフォーマンスと画質について注力しました。既存のコードも利用していますが、基礎部分を再度レビューすることで、処理の高速化を図っています。画質についてはプロセッシングの部分を根底からから作り替えることで、より高品質な画像を生成できるようになりましたし、レンズ補正やより効果的なノイズ低減、遠近感補正も可能になりました。

photophoto レンズプロファイルはキヤノン、ニコン、ペンタックス、サムスン、シュナイダー、シグマ、ソニー、タムロン、ツァイスの各社レンズについて用意されている(写真=左)、シグマの登録レンズ。リストは画面下にも続いており、非常に多くの製品がバージョン3.3にプリセット登録済み(写真=右)

 バージョンアップについて、実は3.1を飛ばして、3.0から3.2、3.3としています。これはPhotoshop CS5向けの「CamaeraRAW」プラグインと足並みをそろえるためです(CameraRAWの最新バージョンは6.3)。

 バージョン3での大きな機能強化にレンズ補正があります。この補正に利用するプロファイルは3つの作成方法によって作られます。1つはわたしたちがラボで分析して作成する方法、1つはシグマやタムロン、ペンタックスなどから提供されたデータを元に作成する方法、1つが提供されたユーティリティ「Adobe Lens Profile Creator」でユーザーが作成する方法です。ユーザーによって作られたプロファイルはサイトにて共有され、基本的なデータチェックはわたしたちの手によって行われます。

――Lightroomは現在、「RAW現像ソフト」として認知されているように思えますが、これは歓迎するかものでしょうか。それとも「デジタル写真のツールボックス」として認識されるべきでしょうか。また、RAW現像についてはカメラ付属のソフトで十分という考えを持つユーザーもいると思われます。

ホガーティ氏: 「RAW現像ソフト」ではなく、「デジタル写真のツールボックス」として認識して欲しいと願っています。個人的にはiPhoneやコンパクトデジタルカメラの画像もLightroomで管理しています。Lightroomは画像管理ソフトとしても非常に強力ですし、Photoshopなど他のアプリケーションと連動させることもできますので、写真家にとっての「ハブ」として利用してもらいたいのです。

 私たちソフトウェアプロバイダの目標は、最高の体験をしてもらうことです。そのためにLightroomはユーザーインタフェースなどに高い柔軟性を備えていますし、メーカー純正のソフトウェアに比べて比べて、より包括的なソリューションを提供できると考えています。

 「メーカー純正の方が良いのでは」というユーザーの考えがあることは認識しています。純正ソフトと色が違うなど指摘されることもあります。ですが、Lightroomではさまざまな写真について、純正ソフトで体験できることはほぼすべて体験できるように配慮しているつもりです。

――細かいことですが、DxO社のRAW現像ソフト「DxO Optics Pro」では、コダクロームなどの実際のフィルムの商品名を選ぶことで、それに近い粒状感を作り出せますが、Lightroomではそこまではできません。

ホガーティ氏: フィルムスタイルについては再現機能を搭載していますが、フィルムの見え方は主観的な部分が多いように思います。そうした主観的なものを再現するのは難しいので、プリセットを用意したうえで、自分でコントロールできるようにしています。

photo プリセットされている補正パラメータのひとつ、「粒子―軟調」の適用例

――Photoshop CSとPhotoshop Elementsのように、Lightroomにもファミリー/エントリーユーザー向け製品の計画はありますか。

ホガーティ氏: 先ほども述べましたよう、Lightroomの目標はプロの要求に応えつつ、ハイアマの要望に応えることにありますので、対象別に切り分けるならば、それはその目標を達成できなかったことになりますね。

 価格を考える際、単純に価格を比較するのではなく、画質向上という観点から、レンズなどカメラパーツとの比較で考えて欲しいと思います。それに、Lightroomのワークフローによって得られる体験、それも考えて欲しいと思います。単純な画像補整ならば他のソフトでも可能かもしれませんが、それはカメラパーツと同一にとらえることは難しいですよね。

 Lightroomが秘めるメッセージの1つに、「より大きくの時間をカメラに、パソコンの前の時間を短く」というものがあります。ぜひ、これからも写真を撮ることを楽しんで欲しいと思います。Lightroomは学びやすいソフトですから、触れているだけで使い方を身につけられるはずです。

 写真がデジタル化した今、写真がメモリカードやパソコンのHDDに死蔵される事態が散見されますが、Lightroomを使えばプリントやWeb共有などさまざまな使い方をより楽しめますから、ぜひとも撮影した写真で楽しんでください。Lightroomは「高価なRAW現像ソフト」ではなく、「写真を楽しむソフト」なのです。

photophoto HTMLやFLASHでのアルバムも容易に作成できる。「Web」タブからはFTPサーバへのファイル転送も可能だ
photophoto FacebookやFlickrへのアップロードもLightroomから行える

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