今回4800Zを「クラシック・デジカメで遊ぶ」で取り上げるに当たって軽いためらいがあったのはスマートメディアの問題だった。一応手に入れることは現在でも可能だが、実質もう終了している記録メディアである。富士フイルムは4800Z発売の翌年(2002年)、xDピクチャーカードへの切り替えを行った。そういう意味でも、このカメラは過渡期に遭遇してしまった運の悪い機種だと言える。
スマートメディアの最大容量は128MB(!)。4800Zの最高画質である432万画素/FINEで撮影すると74枚しか撮れないのだ。またこのスマートメディアは想像を絶するほど大きく、薄く、電気接点が盛大に露出している。取り扱いに気を使うメディアなのである。
それでも僕はあえて4800Zを取り上げることにした。細かい欠点があるにしろ、それを凌駕する「ポルシェデザイン」の魅力には代えがたいのである。
ただ所有し、部屋のインテリアとして置いても充分に満足できるデジカメだが、全く電源が入らずに撮影もできないのではさすがに味気ない。ここで現在でも普通に使えるのかを検証したい。
電源まわりは今でも充分に使えそうだ。またうれしいのはレスポンスがとても早いこと。とても10年前の機種とは思えない。過去にスマートメディアのデジカメを所有していたことがあり、手もとにカードがまだ残っている人は中古の4800Zを購入して遊んでみることをお勧めする。所有するだけでも満足感はある。
この時代の富士フイルムのデジカメの発色はかなり派手だ。今の「フィルムシュミレーションモード」の「ベルビア」モードのようなこってりとした色が乗ってくるのではなく、もっとスコーンと抜けたような派手さがある。途中の階調を少し抜いたような、いわゆる「ヌケの良い」絵が作れる。
原色に近い色、特に青や赤は色飽和(カラーサチュレーション)が起こるぎりぎりぐらいの感じで表現されるので、逆に原色の被写体を撮るのが面白い。背面のシリコンポリマー液晶の発色もかなり鮮やかなので、撮影しているうちに気分がラテン系に高揚してくるのがわかる。
調子にのってどんどんシャッターを切るとスマートメディアはすぐに容量がなくなってしまう。このへんは同社も予想していたようで、液晶を「プレビュー」モードに設定すると、シャッターを切るごとにそのカットを記録するかどうかを尋ねてくる。この状態で写真を拡大して見られるので、一息置いてピンボケ写真などを排除することができるのだ。
これは0.2秒間隔で3コマ撮影できる連写モードの場合も同様で、3コマが並べてプレビューされ、どのカットを記録するかを選ぶようになっている。これは慣れるとけっこう良いリズムで撮影をすることができる。何より写真一枚一枚を考えて撮る習慣ができるので初心者にも良いことかも知れない。
最後にトイフォト的な機能をひとつ紹介しよう。4800Zには多重露光機能があり、その露光回数に制限がない!のだ。ただしマニュアル露出がなく、露出補正も-1.5までしかないので、露光をすればするほど写真は真っ白になってしまう。
そこで、まずマニュアルフォーカスでフレーミングとピントを固定しておいて、レンズ前に白い紙を置いてシャッター半押しでAEロック。これで-3ぐらいまで露出が落とせた。被写体を動かしては同じことを何度か繰り返して、シャッターを切って行く。
そんなことに何の意味があるのかと思う人もいるかもしれない。しかしこれが「クラシック・デジカメで遊ぶ」ことなのではないかと思う。いわば、このデジカメが生まれた時代、その背景や歴史と戯れることなのだ。
ポルシェデザインは、そのためのこれ以上無いスパイスなのである。
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