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愛すべき二つ目小僧――コダック「EasyShare V570」矢野渉の「クラシック・デジカメで遊ぶ」(1/2 ページ)

» 2011年05月02日 15時56分 公開
[矢野渉,ITmedia]

愛すべき二つ目小僧

 コダック「EasyShare V570」を“クラシック・デジカメ”のカテゴリーへ入れることに異論があることは承知している。発売は2006年2月。クラシックと呼べるほど古い機種ではない。

 それでもあえて取り上げる理由は、V570があまりにユニークだからだ。おそらく今後、同種のデジカメが製品化されることはないだろうし、コダックも日本のデジカメ市場へ本腰を入れる可能性がかなり低いからである。要するに「希少価値」ということだ。

photo コダック「EasyShare V570」 レンズの凸部はなく、すっきりとしたデザインだ

 コダックは日本のコンシューマーデジカメ市場に対して、数機種の機種を発表し、それが売れないと分かるや否や、即、販売終了という行動を繰り返している。外資の企業らしく被害を最小限にとどめる判断なのだろうが、日本人から見れば奇妙に見える行動だ。

 日本の企業のように「客のニーズに合わせて商品開発をする」という感覚がないまま、「グローバル」で開発したものを無理やり日本で売ろうとするのだからもともと無理があるのだ。

 だから逆に、V570のような面白いデジカメが生まれたとも言えるのだが。

photo シュナイダー・クロイツナッハのバリオゴンズーム+ウルトラワイド23ミリ。意味もなく得した気分になる豪華さだ

 V570は、史上初(そしておそらく最後)のデュアルレンズ・コンパクトデジカメだ。それまでのコンデジは35〜105ミリ近辺のズームレンズが付いたものが主流で、どうしてもワイド側が弱かったのだが、それではとコダックの出した結論が、もう1本、23ミリのウルトラワイドレンズを搭載することだったのだ。

 ほぼ同時期に発売されたパナソニック「DMC-FX01」という機種が28ミリからの3.6倍ズーム(〜102ミリ)を実現していて、普及価格帯のデジカメのワイド化が始まっていたころだった。コダックはその流れに対して力技で挑んだのだろう。

 もし日本の企業がデュアルレンズのデジカメを設計しようとするならば、ほぼ100%「ターレット式」を採用するはずだ。顕微鏡の対物レンズのように、複数のレンズを回転させながら使う、あの方法だ。コスト的にもそれが正解だろう。

 ところがコダックにはそんな常識は通用しない。レンズ2種類、1/2.5型CCDを2枚を薄型ボディの中に詰め込んでしまったのである。

photo V570の背面。どことなくゲーム&ウォッチ(任天堂のアレだ)のテイストがある
photo 上面にはこのころ高級感があっただろう青色LEDが3つならぶ。輝度が高いので、薄暗い場所では目に痛いほどだ
photo 同じデザインのボタンが並ぶ。文字だけでアイコンがないので使いにくい。スレて印字が消えかかっているが、これで文字が読めなくなったらさらにイライラが増すだろう

 以上述べてきたような薀蓄(うんちく)を垂れることができるだけでも、V570を手に入れる価値はあると思う。CCDが2枚入ったデジカメはこれ以外にはないのだから。

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