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“プロ仕様”のA3ノビ顔料フォトプリンタ――「PX-5V」を検証する普通のプリンタに用はありません(1/4 ページ)

» 2011年05月12日 11時50分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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エプソン入魂のA3ノビ対応フォトプリンタはどこが進化したのか?

「EPSON Proselection」シリーズの新しいA3ノビ対応フォトプリンタ「PX-5V」

 エプソンは「EPSON Proselection」シリーズとして、写真印刷の品質にこだわったインクジェットプリンタを用意している。インクシステムや対応するメディア(印刷用紙)、用紙サイズ、給排紙の機構など、写真印刷をとことん楽しむための設計になっており、家庭向けの複合機や単機能モデルとは一線を画す。

 そのぶん、本体価格もランニングコストも家庭向けの主力プリンタに比べてアップするが、写真画質を至上とするデジカメユーザーは物ともしない。むしろプロ、アマを問わず、ぜいたくな仕様が写真愛好家から喝采(かっさい)を浴び、支持され続けてきた。

 このEPSON Proselectionシリーズから2011年2月、新モデルの「PX-5V」が発売された。最大用紙サイズはA3ノビ、インクは8色構成の顔料系であり、ラインアップの位置付けとしては名機との呼び声も高い「PX-5600」(2008年6月に発売)の後継モデルにあたる。

 今回はPX-5600との比較を交えつつ、その実力に迫っていこう。

印刷精度と使い勝手を高めた新デザインのボディ

 PX-5VがPX-5600と大きく変わったのは、ボディの設計だ。天面をフルフラットに仕上げたボックス型の新デザインを採用しており、特に給紙と排紙の機構にはかなりのテコ入れをしてきた。

 まずエプソンが行ったのは、用紙の先端と後端部における紙送り精度の向上だ。このためにPX-5Vでは、紙送り時の負荷変動を低減するような設計になっている。具体的にはメインローラーへの挿入角度の見直し、これを最適化することで、精度の安定化を図った。これと同時に用紙の停止制御も最適化し、送紙方向の揺らぎによる画質の低下を低減している。無論、フチなし印刷時に生じる先端と後端での画質劣化も抑制できるだろう。また、送紙精度の向上は間接的に、キャリッジ速度の向上をも可能にし、プリントスピードの向上にもつながっている。

 さらに精度を高めるため、フレーム剛性の強化も行った。インク数が多いPX-5Vのプリントヘッドはサイズが大きく、高速で走査すれば、かなりの振動が生じる。これがインクのドロップ精度を低下(画質の低下)させてしまう。これに対し、例えばキヤノンの競合機「PIXUS Pro9500 Mark II」ではフレーム剛性を大幅に引き上げ、フレームのきしみを抑制したが、PX-5Vも同様のアプローチをしてきた。このため、PX-5600から重量が約2.8キロ重い約15キロとなっている。

 ちなみに剛性を高めたにも関わらず、ボディサイズはPX-5600とほぼ同等に収めている点はうれしい。PX-5600の616(幅)×322(奥行き)×214(高さ)ミリに対して、PX-5Vは616(幅)×369(奥行き)×228(高さ)ミリだ。最も増加した奥行きでも50ミリ弱に抑えている。画質のために設置性を犠牲にしていないのは好感が持てる。

ボックス型のボディデザインを採用。使用時には後部の給紙トレイと前面の排紙トレイが伸びる

 ボディデザインでのハイライトがもう1つある。フロント手差し給紙機構を採用した点だ。このクラスのプリンタでは、紙厚のあるアート紙に印刷するユーザーが多く、その場合は後部トレイではなく、印刷用紙を曲げずに正確な搬送が行える手差し給紙トレイを使うわけだが、PX-5600はファインアート紙の手差しトレイがリア(背面)だった。ただでさえ一手間かかる手差し給紙をわざわざプリンタの背面に回り込んで行うのは面倒だったのだ。

 1枚、2枚の印刷ならばともかく、印刷の調子を変えつつ、複数部を出すようなときには、やはりフロント側から済ませられるようになったのは大きい。筆者のような短気者には、フロント給紙機構は何物にも代えがたいほど魅力的に映る。

 しかも、単純にフロントからの手差し給紙に対応しただけでなく、フィード機構がなかなかに凝っている。まず、フロントの給紙トレイと背面の用紙スロットを開き、フロント中央部にある手差しトレイを押し込む。すると手差しトレイが手前に飛び出すので、ガイドラインに合わせて用紙をセットし、OKボタンを押す。フィードが開始されたら用紙がセットされるまで数秒待ち、セットが完了したら、手差しトレイを押し込んで収納する。これで準備は完了なので、PCからジョブを送ればよい。こうして、給紙の安定性は大幅にアップした。

前面から簡単にアクセスできるフロント手差しトレイを装備(写真=左/中央)。アート紙や厚紙でなければ、後部トレイを利用する(写真=右)

ロール紙をセットし、パノラマ写真を印刷することも可能(写真=左)。CD/DVD/BDレーベルプリントも高画質で楽しめる(写真=右)

カラー液晶モニタ付きの操作パネル、有線/無線LANを搭載

 操作パネルにも注目だ。2.5型のカラー液晶モニタを初めて採用したほか、上下ボタン、OKボタン、戻るボタン、キャンセルボタン、インクチェックLEDなどが並ぶ。これらを用いて各種のメンテナンスやダイレクトプリントが行えるほか、液晶モニタにはプリンタのステータスも表示されるため、PCを立ち上げずともインク残量などプリンタの状態が把握できる。

 また、先ほど述べたフロント手差しトレイへの用紙のセット方法についても、液晶モニタに手順を追って表示されるので、迷うことなく扱えるはずだ。

視認性の高い2.5型カラー液晶モニタを装備(写真=左)。フロント手差しトレイを利用する場合、液晶モニタに操作手順が表示される(写真=中央/右)

 PCとの接続インタフェースはUSBポートに加えて、ネットワーク経由での印刷に対応する有線LAN(100BASE-TX)と無線LAN(IEEE802.11b/g/n)も搭載。前面には、USB DIRECT Print/PictBridge対応のUSBポートも備えた。

 なお、エプソンの家庭向け複合機と同様、iPad/iPhoneからのワイヤレスプリント(App Storeから対応アプリ「ePrint」の導入が必要)もサポートしている。

背面にPC接続用のUSBポートと有線LANポートを装備(写真=左)。前面にはUSB DIRECT Print/PictBridge対応のUSBポートも備える(写真=右)

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