小さいです(幅84.5ミリ)。軽いです(電池込みで118グラム)。でもトイカメラじゃない。このサイズでストロボ内蔵です。オートフォーカスでシームレスに10センチまでのマクロ撮影ができます。全身金属製です。と言う具合に説明を受けたら、ガジェット好きなら買わずにはいられないデジカメ、それがサイバーショットUシリーズだ。
Uシリーズは2002年7月に初代U10(130万画素)が発売されたのを皮切りに、その年の暮れにU20(200万画素)、翌年にはU30(自分撮りのミラー付き)、U40(メモリースティックデュオ対応でさらに小型化)と着実に進化をとげた。
この正当な進化型とは別に、U50(レンズがスイバル式に)、U60(水深1.5メートルまでの防水カメラ)という亜種も存在し、併売されていた。また、同じコンセプトで作られたと思われる「QUALIA(クオリア)」シリーズの016(ボディと付属品が専用アタッシュケースに収められて38万円!)というスパイカメラもどきも含めると、2002年から2003年にかけての1年4カ月の間に実に7機種が発売されたことになる。
しかしこのガジェット好き達を虜(とりこ)にしたUシリーズも、2003年11月のU40の発売をもってピリオドが打たれた。原因はカメラ付き携帯電話の急激な進化だろう。この年のなかばまでは100万画素クラスだったカメラ付きケータイは、2003年の暮れにはあっという間に200万画素になり、画素数で並ばれてしまったのだ(NTTドコモ「D505iS」など)。
ケータイの販売数はデジカメとはケタ違いに多い。当然開発費も潤沢にかけられるわけで、ソニーとしてはケータイとの争いをする前に白旗をあげたのだろう。
それにしても惜しい。こんなにもガジェット魂を刺激する製品が短期間で消えてしまったなんて。唯一の救いは、あれだけのセールスを記録したはずのUシリーズなのに、中古市場では意外に数が少ないことだ。もうさすがに撮影はしていないかもしれないが、購入者たちはUシリーズを手放さないのだと思う。
時間があれば中古カメラ店を覗くようにして、やっとU20を見つけた時はさすがにうれしかった。もちろんその場で購入し、包装は断ってU20を首から下げて街へと出た。なぜか高揚感がある。手のひらに握りこむと、アルミ合金ボディの具合の良い存在感が伝わってくる。例えるなら、小型のシェーバー、あるいはボイスレコーダーのような感触だ。いわゆるデジカメのカタチではない、何かまったく新しいジャンルの金属装置に思えてくるから不思議だ。
これは手放したくない、とにかくそばに置いておきたい。U20の魅力はすぐに理解できた。レンズカバーをスライドさせると「テレッ」という可愛らしい起動音がして、1秒ほどで撮影が可能だ。が、しかし「撮影を始める」という意気込みはまったく湧かない。普通に見えたものをさくさくと収めてゆく、といった感覚だ。
ひと通りの撮影を終えて思ったことは、U20の良さは1インチ液晶だということだ。ちょっとシニカルだが「撮った写真が細かいところまでよく見えない」のが逆にプラスになっている。
現在の薄型ボディに3インチ液晶の乗ったデジカメは、画面が大きすぎて細部が見えすぎることが多い。撮影者は欲がでるから気に入らなければ何度でも撮り直すし、フレーミングがどうの露出がどうのホワイトバランスがどうのという迷宮にはまって疲れてしまうのである。
その点U20は気楽なものである。撮影時に設定できる項目もほとんど無いし、とりあえず気になった被写体にU20を向けてシャッターを切るだけだ。撮影後は1インチ液晶を見て「あ、写ってる」、そして次へと移動するのだ。293×220ドットの液晶に何を期待しても無駄だ。むしろ絵作りをするのがバカバカしくなるほどに撮影が楽に進むのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR