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Eye-Fi「ダイレクトモード」の価値を考える

» 2011年05月27日 15時12分 公開
[ITmedia]
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 無線LAN機能を内蔵したSDメモリーカード「Eye-Fi」の「ダイレクトモード」は、周囲に無線LAN環境がなくても、撮影したカメラの画像を無線で対応アプリをインストールしたiOS/Android端末に転送し、撮影画像をすぐにiPhoneやiPadなどで閲覧できる機能だ。

 本機能については既にレビュー記事(撮影画像をすぐiPhoneでチェック――Eye-Fi「ダイレクトモード」を試す)を掲載しているので、概略や設定方法についてはそちらを参照して頂きたいが、「外出先でも、常に快適な直接転送で画像を閲覧できるか」といえば、残念ながら答えはノーだ。

 Eye-Fiカードの挙動を理解しながら、ダイレクトモードの「価値」を考えてみたい。

ダイレクトモードの仕組み

 前述のレビュー記事に記載されているが、まずはダイレクトモードの動作について確認しておこう。ダイレクトモードでの画像転送にいたるまでのカードの挙動は以下のようになる。

(1) Eye-Fiカードが接続可能な周囲の無線LANアクセスポイント(AP)を検索する。

(2) 接続できるAPがない場合、Eye-FiカードはSSIDを一時的に公開し、別の無線LAN端末がカードへ接続できる状態とする

(3) Eye-Fiカード自体がAPとして機能し、Eye-Fiカードから直接そのiOS/Android端末へ画像を転送できるようになる

 このようなステップを踏んだ結果、カメラで撮影した画像が直接、Eye-FiアプリのインストールされたiOS/Android端末へ転送されることになる。

 ここで注意すべきは、Eye-Fiカードがどのような順番でネットワーク接続を試みるかを理解しておくことだ。Eye-Fiカードは元来、構築された無線LAN環境へ自身が接続する(つまりEye-FiカードがAPとならない)挙動を前提としているので、上記の(1)から(2)に至る間、Eye-Fiカードは以下のような順番で既存ネットワークへの接続を試みる。

  •  PCなどが生成したアドホックネットワーク(ソフトウェアAP)
  •  無線LANなどが生成したインフラストラクチャネットワーク
  •  公衆無線LANなどオープンなネットワーク

 この順番で接続を試みて接続を確立できなかった場合に初めて、Eye-Fiカードがダイレクトモードに切り替わり、自らがAPとなる。つまり、周囲に接続できるネットワークが存在しない状況にならないと、ダイレクトモードとしての転送は行われない。

 公衆無線LANを含めて多くの無線LAN環境が周囲に存在する今、町中にいると、周囲に接続できるネットワークが存在しない状況というのはなかなかない。それに、実際に利用した人は既に感じていることだと思うが、ダイレクトモードはその接続を保てない状況に陥ることも多い。

 上記のステップを経てダイレクトモードの接続が確立されても、カメラの電源がOFFになればその接続は切れる。そして、再接続する必要が生じても、その前にiOS/Android端末側がなんらかのネットワークを見つけて接続してしまうと、Eye-Fiカードが生成したAPは無駄になってしまうからだ。

photophotophoto iPhoneでの例。iPhoneがポータブルWi-Fiに接続している状態()写真=左)で、Eye-Fiカードがダイレクトモードを起動するとAPとしてiPhoneから認識可能となり(写真=中)、手動でそのAPを選択すれば(写真=右)無事にダイレクトモードでの転送が行える

 自宅やオフィス、あるいはカフェ店内や駅のホームなど無線LAN環境が構築されている場所は多く、常時携帯するiOS/Android端末にはなんらかの接続先がすでに設定されているだろう。多くのiOS/Android端末は無線LANとの接続を頻繁に切り替えることを前提としていないため、現実的にはダイレクトモードを使うためだけに接続を切り替えるのは手間がかかる作業となる。それに、ダイレクトモードだけで運用するという設定が用意されていないこともあり、あくまでもオプション的な運用として位置づけられていると考えた方が良いだろう。

Eye-Fiアプリの価値を確認させてくれたダイレクトモード

photo モバイルWi-Fiルーターを利用して、デジカメ画像をiPhoneへ転送中

 ダイレクトモードの概要を見るだけだと「Pocket Wi-Fiなどを持ち歩かずとも、外出先で撮影したデジカメ画像をダイレクトモードでiPhoneやiPadなどへ転送し、3GネットワークでTwitterやFacebookなどへポストする」という使い方が思い浮かぶ。しかし、現在の仕様を見る限りでは、撮影しながら随時、何かをするというよりも、撮った写真を後からiOS/Android端末で確認するという用途を想定しているようである。

 Eye-Fiカードは元来、APを経由して、設定されたPCやクラウドサービスへ画像を転送するというアイテムであり、Eye-FiカードとEye-FiアプリのインストールされたiOS/Android端末が同一のAPに接続している場合には、そのネットワークを介しての画像転送が行われるようになっている。

 現在のところ、先も述べたよう、意図的にダイレクトモードで運用するという設定は用意されていないため、「外出先でも、常に快適な直接転送で画像を閲覧」するためには、無線LANルーターの携帯が最も現実的という解が導き出される。それでは意味がないと感じるひともいるだろうが(筆者も最初はそう思った)、Eye-Fiアプリに目をやると、また異なる側面が見えてくる。

 これまでEye-Fiは撮影されたデジカメ画像をPCのローカルフォルダ、あるいはクラウドサービスへ転送することを目的としていたが、Eye-Fiアプリを用いることで、「撮影画像をiOS/Android搭載のモバイル端末へ転送する」という第3の使い方ができるようになっている(Eye-Fiアプリ自体は2009年にリリースされていたが、当時はiPhoneで撮影した画像をPCのローカルフォルダあるいはクラウドサービスへ転送するアプリだった)。これはPCレスの環境構築を目指すなど、その人の使い方によっては大きなメリットとなりうる。

 これまで述べたように、接続の維持という問題がある以上、ダイレクトモードが活躍する機会は少ないかもしれないが、Eye-Fiカード&Eye-FiアプリをインストールしたiOS/Android端末という組み合わせは、デジカメ画像の楽しさを広げてくれることになりそうである。

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