これまでNikon 1 J1について、高感度の実用性、連写の実用性と、このクラスのデジカメとしてはディープな内容でリポートをしてきた。マーケット的にいえば、コンパクトデジカメからのステップアップや女子向けであろうカメラなのだが、ベースとなるカメラの潜在能力の高く、コアな層にもっとアピールしても良いカメラだと思ったからだ。
・長期試用リポート:「Nikon 1 J1」第2回――多彩な高速連写機能を試す
・長期試用リポート:「Nikon 1 J1」第1回――仕事に使えるカメラか
第3回となる今回は、動画機能と使ってみて気付いた点をまとめてみたいと思う。
J1はフルHD(1920×1080ピクセル)/60iの滑らかな動画と、400fps(640×240ピクセル)、1200fps(320×120ピクセル)の超スローモーション動画を撮影できる点が特徴となっている。フルHD動画のデータ形式は.MOV(映像コーデック:H.264、音声コーデック:AAC 48KHz)となっており対応している動画編集ソフトが多く扱いやすい。基本的な動画編集は付属ソフトである「View NX2」で、簡単なカット編集であれば、J1の再生メニューから行える。
動画の撮影は、独立した動画撮影ボタンがあるにも関わらず、モードダイヤルを動画撮影モードに切り替える必要がある。この手続きは残念だが、動画モードに切り替えると、アスペクト比16:9(3840×2160ピクセル、JPEG固定)の静止画が撮影可能なので、アスペクト変更モードと頭を切り換えるのもいいかも知れない。また、動画撮影中でも、この16:9のフル解像度の静止画を別に記録することができるので実用的だ(一回の動画撮影中に静止画は最大15コマ)。
これらの機能をサポートするのが、フルタイムで駆動するオートフォーカスだ。センサー内蔵の位相差AFとコントラストAFを巧みに制御することで、フォーカスが迷うことない自然な映像を作りだしている。
マニュアルフォーカスとなると話は別でやや使いづらい。背面のロータリーマルチセレクターを使用しての静止画ピント合わせに関しては問題ないのだが、動画撮影中のリアルタイムのピントの送りには、ロータリーマルチセレクターが小さすぎて操作に無理がある。置きピンで撮影すると言う用途と割り切った方が良いだろう。
撮影データを確認して気付いたのだが、キットレンズである「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6」はズーミング中に絞り値が変わるため一瞬露出が変わってしまう。ズームレンズの仕組み上、仕方がないことだが、映像を観る限りあと少しのチューニングで改善しそうな可能があるので、ファームウェアのバージョンアップがあると良いのだが……。
Nikon 1 J1というカメラは、エントリーモデルという割り切りからか、露出プログラムへのアクセスが遠回りとなっている。使う側がこれにどう合わせこむかだが、露出を固定できるMモードは特殊だが、基本的にはPモードのプログラムシフトでAモードやSモードに対応できるので、あえてPモード固定という使い方を提案したい。
Pモードで測光した値は、背面の拡大レバーでプログラムシフトできる。シャッタースピードや絞り値が気に入らなければシーンに合わせてプログラムシフトで調整可能だ。さらに露出補正、AE-Lはロータリーマルチセレクター内の専用のボタンとなっており使いやすい。オートフォーカスをシングルポイントに設定した場合のフォーカスフレームの移動は、OKボタンを押すことで移動可能となり使い勝手が良い。通常の撮影であれば、この操作だけで十分だろう。
残念なのは、撮影後の画像確認が常にオンとなっているため、撮影のテンポを崩されてしまう点だ。この機能のオン・オフが欲しいところだ。ただ、動画モードで静止画を撮影した場合はこの撮影後の画像確認がない。アスペクト比と若干記録画素数は変わってしまうが、レスポンス重視なら動画撮影モードで撮影するのも一つのアイディアかもしれない。
画質に関しては、ISO100でも暗部にノイズが見られたり、カラーノイズが見られる。とはいえ、他のコンパクトデジタルカメラのような、ノイズリダクションで塗りつぶされたり、シャープネスによって粉っぽいザラザラ感はなく、素材として自然な絵であることがJ1の良さである。
このカラーノイズに関しては、おまかせシーンで風景+アクティブDライティング・オンという設定になった時が顕著にみられるようだ。対応策としては、P/A/S/Mモードでピクチャーコントロールをスタンダードに、アクティブDライティングをオフにする、もしくはRAWで撮影して画質をコントロールするなどが挙げられる。
RAW撮影に関しては、連続撮影のためのバッファが大きく使い勝手良いので、同社「D」シリーズなど一眼レフカメラと同じ感覚で撮影できる実用的な機能だ。
J1を使ってみて、良い意味での被写界深度の深さ、そして動画機能、機動性は一眼レフカメラとは違った魅力があると感じた。入門機としてはもちろんだが、一眼レフカメラと併用すると、強烈な個性を持ったサブカメラであることを実感できるのではないだろうか。
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