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小春日和にこそ似合うカメラ――オリンパス「C-2020 Zoom」矢野渉の「クラシック・デジカメで遊ぶ」(2/2 ページ)

» 2011年12月14日 11時00分 公開
[矢野渉,ITmedia]
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スタジオで物撮りをしてみる

 1/2型211万画素CCDはもはや過去の遺物なのか。確かめるためにマイスタジオで商品撮影をしてみた。本体側面に付いているシンクロコネクタがちょっと「その気にさせた」のである。大型ストロボによる多灯ライティング。かなりシビアなライトを入れればC-2020の極限の能力が出てくるはずだからだ。

photo 左後方からの固めの光をキッカーライトとして使っている。本体の白飛びはなく、ヘアライン加工が美しく表現された
photo 真後ろからのえぐるようなメインライト。右後方からも舐めるようなライトを入れてみた。この厳しいライティングでも質感を残しているのがすごい。ダイナミックレンジの広さがよくわかる

 思いっきり意地悪なライティングを試してみたにもかかわらず、C-2020 Zoomはよく付いてくる。もう絶対白飛びしているだろうと思うライトの下で、彼はギリギリまで粘るのだ。これは今では少なくなった、補色系フィルターを使ったCCDだからかもしれない。

 また補色系CCDの弱点と言われているパープルフリンジに関しても、C-2020 Zoomでは全くと言っていいほど見られない。このミニカーの屋根のエッジ部分には当然パープルフリンジが出ると予測していたが、皆無なのである。

 驚くべき能力を秘めたC-2020 Zoom。Webに掲載する写真ならこれで十分な気がする。

優しい色、だから秋冬デジカメとして

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 スナップカメラとして使うには、C-2020 Zommは色調がおとなしすぎる印象だ。補色系なのでしょうがない部分もあるが、彩度を上げるような設定がまったくないので色はいじりようがない。ただ、ダイナミックレンジの広さが作る、階調が豊富な柔らかい写真はC-2020 Zoomの真骨頂だ。ちょっと鄙(ひな)びた、心象風景のような表現にはうってつけなのである。

 このデジカメは、心が浮き立つ春や、直射日光が降り注ぐ夏に使ってはいけない、と僕は思う。影が長く伸びるようになり、コートの襟を立てて家路を急ぎ始める秋冬にこそ似合いのデジカメだ。厳しい寒さの合間に訪れた、柔らかな日差しが差し込む小春日和の居間で、C-2020 Zoomと語り合い、今日は何を撮ろうかと目的もなく外へ出て行く瞬間は人生の小さな喜びなのである。

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