正直、コンデジはちょっと停滞したかな。2010年のソニーが見せた「スイングパノラマ」「手持ち夜景」「HDR」に迫る新しい撮り方は現れず、GPS搭載機も増えたけれども実用レベルな機種はわずかで、タッチパネル搭載機も増えたけれどもiPhoneやAndroidを触り慣れた手には不満があり、目に付いたのはレンズのスペックがやたら上がったことと、信じられないくらい実売価格が下がったことくらい。
デジタル一眼レフ分野はというと、こちらもあまり目新しいモデルはなく、3月の大震災や秋のタイの洪水の影響もあって、本番は2012年か。それに対してミラーレスカメラは元気だった。
コンデジでも一眼レフでもない新しいジャンルのカメラを模索したり(ニコンのNikon 1やソニーのNEXシリーズがそうだ)、大人の道楽みたいな面白いカメラが出てきたり(PENTAX Qとか)。どう成長していくか楽しみである。
特にNEX-7のアイデアやNEX-5Nの完成度の高さは特筆すべきだと思う。ソニーはよい仕事をしている。オリンパスとパナソニックも3モデルずつ投入し、完成度をワンランク上げてきた。
そんな中で1台を上げるとすると……NEX-7にするかNikon 1にするか、自腹で買ったパナソニックのDMC-G3にするか、あれこれ悩んだあげく、「PENTAX Q」にしちゃいました。大本命の中からひとつを選ぶことができず、ついダークホースに目が行っちゃった、みたいなもんだと思ってください。
デジタルの面白さをふんだんに盛り込んだ「道楽ミニチュアカメラ」ってとこがよいのだ。F1.9の単焦点レンズだけをつけて、ヘンなエフェクトをかけまくった写真を撮って遊ぶのがいい。
・長期試用リポート:「PENTAX Q」第3回――ナノ一眼でユニークな動画を楽しむ
・レビュー:本気で遊べる“ナノ一眼” ペンタックス「PENTAX Q」
・“Auto110デジタル”じゃダメだ――「PENTAX Q」誕生秘話
・「ミラーレスかどうか」は関係ない――PENTAX Qの目指す道
・手のひらに収まる、世界最小最軽量デジカメ 「PENTAX Q」
でも一番注目したいのはマイクロフォーサーズ陣営のレンズの充実ぶり。特に今年を象徴する製品として、オリンパスの「M.ZUIKO 45mm F1.8」とパナソニックの「LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH.」の2本を挙げたい。中望遠と標準である。
明るくて手頃な単焦点レンズをぐっと充実させてきたのだ。フォーサーズ系は撮像素子が小さい分レンズをコンパクトにできるので交換レンズを持ち歩きやすいのもよい。特にオリンパスの45mmF1.8は明るいしデザインも新鮮だし安いしよく写る。明るい単焦点レンズがあってこそ、レンズ交換式カメラは楽しいのだと思い出させてくれる。
さらにパナソニックもオリンパスも電動ズームレンズを投入してきた。そういう意味でも、マイクロフォーサーズ陣営のレンズラインアップは面白いのである。
・第2回 ライカ印のコンパクトマクロ――パナソニック「LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.」
・電動ズーム採用、防じん・防滴「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3EZ」
・長期試用リポート:「DMC-GX1」第2回――電動ズームレンズと動画の関係
・パンケーキサイズの超薄型ズームなど、パナソニックから「X」レンズ
・オリンパス、ボケを気軽に楽しめる「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」
コンデジに元気がなかったと書いたけれども、ハイエンド機に注目すべき2台が登場したのは見逃してはいけない。
ひとつは富士フイルムの「FUJIFILM X10」、もうひとつはキヤノンの「Powershot S100」。やはり廉価なコンデジとはクオリティや使い勝手が違う。
写りがいいコンデジが欲しい、という人がいたら迷わずS100をお勧めすると思う。でも今年の代表として1台を選ぶなら、明るいマニュアルズームレンズが気持ちいいクラシックデザインのX10かな。
これも大人の道楽的な趣味のカメラなんだけど、撮ってて気持ちいいのだ。レンズ交換できるだけが能じゃない、と主張してるようでもあり(まあこんなカメラを作ってる富士フイルムも2012年にはミラーレスカメラを出すわけだが)。
・長期試用リポート:「FUJIFILM X10」第3回――画質の要、レンズに注目する
・レビュー:アナログとデジタルの融合したプレミアムコンパクト――「FUJIFILM X10」
・富士フイルム、高級志向「X」シリーズを定義 高倍率機やミラーレスも投入
・ズーム連動式ファインダー搭載、プレミアムコンパクト「X10」
で、個人的に2010年までと大きく変わったのは、自分が持ち歩くカメラの構成。
昨年まではiPhone&コンデジ(それと余裕があったら一眼レフかNEX-5)って構成で出かけるが多かった、というかそれが当たり前だった。日常のちょっとしたスナップはコンデジで、ちゃんと撮りたい被写体が出てきたら(もっぱら猫なんだけど)バッグからデジタル一眼を取りだし、その場でアップしたい写真のときだけiPhoneだった。
最近はもっぱら、iPhone 4S+ミラーレスカメラという組み合わせで、日常の写真はiPhone 4Sで、ちゃんと取りたいときはミラーレス。一眼レフを持って行くのは仕事で撮影するときや、本格的に撮りたいときだけになってきた。
昨年の同じ企画(2010年注目したカメラ&トピックス(ライター荻窪編):垣根がなくなった1年、だったかな)でわたしはコンデジに対して「問題は“見る・見せる”で、ここを放置するとスマートフォンに喰われる可能性がある。それが2011年の課題だろうなと思う」と書いたんだけど、なんか、ほんとうにそうなってきちゃったよ、という気分である。
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