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コンパクトデジカメはスマートフォンとの関係を見直すべき2011年注目したカメラ&トピックス(ライター小山編)

» 2011年12月26日 16時00分 公開
[ITmedia]

 今年もさまざまなデジタルカメラが登場して市場を沸かせたカメラ業界。デジタル一眼レフもまだまだ人気だが、特にミラーレスカメラがさらに好調。一方、コンパクトデジカメはスマートフォンの爆発的人気で、苦しい状況が続いている。今年は東日本大震災、タイ洪水などと災害の影響も受けたカメラ業界だが、来年はさらなる飛躍を期待したい。

本格志向から遊び心まで、バラエティに富んだミラーレス

 今年一番のトピックスはミラーレス。特にいよいよ参入したニコンの「Nikon 1」とペンタックスの「PENTAX Q」は注目。いずれも社名をモデル名に入れているあたり、力が入っているとも解釈できるが、いずれにしてもさらにミラーレスのバリエーションが拡大した点は大きなトピックだ。

photophoto ニコン「Nikon 1」、ペンタックス「PENTAX Q」

 この2シリーズとも、ソニーNEXシリーズやオリンパス・パナソニックのマイクロフォーサーズと比べて撮像素子が小さいのは、メリットにもデメリットにもなるが、他に比べてセンサーサイズが小さいという点をどうカバーしていくのか。その点、PENTAX Qはコンパクトデジカメクラスのセンサーサイズだが、レンズ交換が可能で、実売価格が安く遊び心のあるレンズも用意しているのは面白い。

 上位から下位機種まで3機種を一気に投入したオリンパス、ハイエンドクラスの製品を用意したパナソニック、洪水の影響で発売が延びてしまったが、ソニーもNEXシリーズの上位機種を発表しており、ミラーレス機も本格的な撮影に使えるようになってきている。主要カメラメーカーでは、残るキヤノンの動向が気になるところだが、来年もミラーレスの普及は続きそうな勢いだ。

コンパクトカメラとスマートフォンの関係

 コンパクトデジカメは、今やiPhoneを代表とするスマートフォンの影響をかなり受けてしまっている。iPhone 4Sではかなりの画質向上を図っており、光学ズームや光学式手ブレ補正まで搭載した機種が出てくると、スナップはスマートフォン(携帯)カメラで十分という人は多いだろう。

 スマートフォンの場合、携帯基地局や無線LANの情報を併用し、高速に位置情報を取得できるため、GPSだけで撮影位置を取得しようとするデジカメではどうしても追いつけない部分があるし、通信機能を内蔵しているため、すぐに撮影画像をアップロードできるのはスマートフォンの強みだ。

 スマートフォンはアプリで機能を追加してカメラ機能を強化できるし、タッチパネルによる操作の快適さは、いまだにコンパクトデジカメが追いつけない部分。コンパクトデジカメにも、高倍率ズームやデジカメメーカーならではの画質向上ノウハウといった優位点はあるが、生き残りをかけた対策が必要だろう。正式には別会社とはいえ、グループでスマートフォンも作っているメーカーは、もう少しカメラ部門と携帯部門の交流が必要なようにも思う。

 その中で国内販売はされていないが、サムスン「SH100」は1つの方向性を示す製品といえるかもしれない。無線LANを内蔵し、スマートフォンアプリを使うことでダイレクトにカメラと接続して、撮影した画像を転送できる。それだけでなく、スマートフォンの画面をカメラのビューファインダーがわりに使い、リモートで撮影できるし、位置情報もスマートフォンから取得できる。スマートフォンではできない撮影をカメラに任せ、撮影画像を閲覧したりネットで共有したりといった部分はスマートフォンで行うという使い分けができる。

photo サムソン「SH100」。下にあるスマートフォンがファインダーとなっている。実際に使ってみると、遅延があるので動体撮影は難しいが、固定しての撮影だと十分に活用できる

 このように、通信機能や位置情報機能、操作性といった部分をスマートフォンが担当し、カメラとしてはコンパクトデジカメを使うという手法は面白い。日本でもパナソニックが「DMC-FX90」(レビュー:スマホ&クラウド連携のWi-Fi搭載デジカメ LUMIX「DMC-FX90」)で無線LANを内蔵し、撮影画像をスマートフォンのアプリ経由で活用する機能を提案しているが、SH100の方がよりスマートフォンとの親和性が高い。ソニーやニコンは過去に無線LAN内蔵デジカメを発売しているが、時を経て、より現在の方が無線LANを内蔵するメリットが大きいだろう。

 SH100自体はカメラとしては低価格モデルだし、アプリのメンテナンスもあまりされていないようで、今後、サムスンがどうしていくかは分からない。とはいえ、SH100が利用している、アクセスポイントを介さずに無線LAN搭載デバイス同士を直接接続できる「Wi-Fi Direct」はすでに規格化されており、スマートフォンのWi-Fi Direct対応が進めば、カメラとスマートフォンの接続性も向上して使い勝手はよくなる。

 コンパクトな無線LANチップを作るメーカーもあるし、コストもスマートフォンの普及で低下傾向にあることも追い風になるだろう。単純に撮影画像をすぐにスマートフォンに転送できるだけならEye-Fiでもできるが、スマートフォンでのリモート撮影にも対応し、細かな設定ができるなら、カメラへの無線LAN内蔵は有効な取り組みにはなると思う。

 コンパクトデジカメについて語る際、忘れてはならないのはリコー「GR DIGITAL」シリーズなど高級志向製品の登場だ。

 今年はミラーレスタイプが多く登場した年であるのと同時に、いわゆる高級コンパクトデジカメも多く登場した年であった。前述のGR DIGITALも最新作の「IV」が登場し、オリンパスからは「XZ-1」、富士フイルムからは「FUJIFILM X10」、キヤノンからは「PowerShot S100」と各社より製品が登場した。

 いずれも優れたレンズ描写で高い画質を実現しており、これは利便性追求と異なる1つの方向性となるだろう。スマートフォンといかに両立させるか、来年はさらなる工夫が求められる。

photophoto リコー「GR DIGITAL IV」、オリンパス「XZ-1」
photophoto 、富士フイルム「FUJIFILM X10」、キヤノン「PowerShot S100」

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