写真家や画家が強調したい部分を3D化するようなものはこれまでなく、それによる表現手法の増加に加えて、デジタル絵画によって「複製ができない」点を樫尾社長はメリットとして強調する。写真や絵画をスキャンしたり写真に撮って2次元として複製することはできるが、3次元の立体物は、そうした手段では容易に複製できない。そうした権利保護の観点からもメリットがあると樫尾社長はいう。
写真は銀塩の世界でも現実を写し取ることに苦労していただろうし、デジタル写真もそれを置き換えただけだった、とは持永氏。それに対して、デジタルであればHDRのように表現したいものを強調したり、部分的に切り出したり、合成したりすることが容易になる。「表現は作り出せるもの」(持永氏)という考えの発展した先が、今回のデジタル絵画だという。
立体化といっても、現実に即して何センチ持ち上がっているというように測って立体化するのではなく、作者が表現したいものを3Dという手段で拡大強調する。写真の楽しみ方を増やせるとともに、文化の発展にも寄与できる、と持永氏は語る。
昨今は、デジカメで3D写真を撮影したり、3D対応テレビで3D映画を見たりといった、3D技術が一般化しているが、持永氏は「結局は立体に見せている“偽物”」と指摘する。また、擬似的ではなく、あくまでも意図的な立体作品として作り出されるデジタル絵画について樫尾社長は「こういうものが世の中にあってしかるべきではないか」と述べる。
技術的にはほぼ完成しているが、ビジネスモデルについては「まだ検討中」(樫尾社長)の段階。ただ、「イメージングスクウェア」のような一般向けサービスというよりも、写真家や画家、コンピュータアートなどの作者の作品として利用されることを想定しているようだ。いずれにしても年内には新規事業として立ち上げ、来期には収益に貢献させたい考えだ。
「これまで、カシオ計算機はほとんどのものをデジタル化してきた」と樫尾社長。時計、計算機、楽器もデジタル化してきたのがカシオという会社で、「絵もデジタル化できるのではないか、そこから発想した」という。「あらゆるものをデジタル化したのだから、絵もデジタル化できるはず」と考えた時に、その絵のデジタル化とは何か、という問いがあり、それを樫尾社長は、「強調したい所を物理的に3D化する」ことだと考えたそうだ。
「問題は、出力されたデジタル絵画が、一般ユーザーにどれだけ親しまれるか」と樫尾社長は話すが、完成したデジタル絵画に対して樫尾社長は自信を見せており、今後の発展に意欲を見せている。
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