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CP+ 2012に見る、3つのトレンドCP+ 2012

» 2012年02月14日 10時12分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 昨年を1万5000人近く上回る来場者を集め、盛況の内に幕を閉じた「CP+ 2012」。カメラメーカー各社の展示はまとめページを参照して欲しいが、本稿では会場全体から読み取れる2012年のデジカメトレンドについて触れてみたい。

ミラーレスの多様化

 ややもすると手軽さを前面に押し出した製品が多かったミラーレスカメラは、ここに来て「画質」や「高級感」「デザイン性」など手軽さ以外の要素を持った製品が多く増え、ジャンルとしての存在感を大きく高めている。

 ローパスフィルタを搭載しない機構で高い解像感を実現した富士フイルム「FUJIFILM X-Pro1」、往年の名機「OLYMPUS OM-1」を連想させるデザインのオリンパス「OLYMPUS OM-D E-M5」、デザインの自由度を生かしたデザイナーズモデルのペンタックス「PENTAX K-01」、「唯一無二のスナップカメラ」をうたうソニー「NEX-7」など、各社が大々的にアピールしていた機種の多くがミラーレスタイプだ。

photophoto 富士フイルム「FUJIFILM X-Pro1」(写真=左)、オリンパス「OLYMPUS OM-D E-M5」(写真=右)
photophoto ペンタックス「PENTAX K-01」(写真=左)、ソニー「NEX-7」(写真=右)
photophoto CP+開幕前日に発表されたオリンパス「OLYMPUS OM-D E-M5」の体験コーナー

 そもそも「ミラーレス」と呼ばれるカメラは、狭義的には文字通りミラーボックスを搭載しない製品を指す。ミラーレスタイプが少なかった昔はAFスピードなど性能面でデジタル一眼レフに見劣りすることも多く、あくまでも小型軽量さを前面に押し出した――言い換えば絶対的な性能で勝負しないアプローチを取る――製品が多かった。

 しかし、世代を重ねることでノウハウも蓄積され、カメラシステムとしても充実が進んだ。また、性能自体も向上し、パフォーマンス的にもデジタル一眼レフに比肩する存在となりつつある。そこでミラーボックスを内蔵しないことによるデザインの自由度を生かし、そのうえで他社との差別化を「画質」や「高級感」「デザイン性」などに求める製品が多数登場したのが、今回のCP+に見えるミラーレスカメラの多様化の正体といえる。

カメラとスマートフォンの連携

 コンパクトデジタルカメラにとって、最大のライバルはミラーレスでも一眼レフでもなく、スマートフォン(携帯電話)のカメラ機能となっている。iPhoneに代表されるスマートフォンは高い撮影機能を備えており、また、搭載する通信機能によって、SNSなどネットサービスとの親和性も高い。

 そこでカメラメーカー各社の取り組んでいるのが、「撮影はデジタルカメラ、ネットサービスはスマートフォンの通信機能で」というスマートフォンとの連携だ。コンパクトデジカメはスマートフォンと競争するのではなく、機能を分担して共存しようという考え方である。

photophoto 「DSC-TX300V」(写真=左)、「FinePix Z1000 EXR」(写真=右)。いずれも搭載する無線LANにてスマートフォンへ撮影画像の転送が行える

 具体的にはカメラに無線LAN機能を搭載し、撮影したデータを無線LANでスマートフォンへ送信、スマートフォンから各種ネットサービスへ写真をアップする、あるいはスマートフォンの液晶画面で写真を楽しもうという提案がなされている。ソニー「DSC-TX300V」はパソコンへの撮影データ転送や充電もワイヤレス化されており(付属クレードルとカメラ本体が非接触通信する)、「ワイヤレス」はコンパクトデジカメの今後にとって、重要な意味を持ちそうである。

 CP+ではキヤノン「IXY 1」「IXY 420F」、富士フイルム「FinePix Z1000EXR」、パナソニック「DMC-FX80」、ソニー「DSC-TX300V」など無線LANによるスマートフォン連係機能を搭載した製品が展示されていた。ちなみに無線LAN対応はビデオカメラの世界にも登場し始めており、キヤノン「iVIS HF M52」、JVCケンウッド「GZ-VX770」「GZ-EX270」「GZ-EX250」が無線LANによる画像転送機能を備えている。

高級機の充実

 カメラの本懐である「高画質」への取り組みも盛んだ。

 CP+開幕前日にニコンが3630万画素のフルサイズ機「D800」「D800E」を発表。「D4」も体験できる同社ブースのタッチ&トライコーナー連日大勢のファンが列をなしたほか、ローパスフィルターレスの新型センサーを搭載した富士フイルム「FUJIFILM X-Pro1」やキヤノンが3月下旬に販売するEOS-1Ds MarkIII/EOS-1D MarkIV後継のフラグシップ機「EOS-1D X」に触れられるコーナーにも多くの人が詰めかけた。

photophoto ニコン「D800」(写真=左)、キヤノン「EOS-1D X」(写真=右)
photo 「D4」「D800」の体験コーナーは常に長蛇の列

 また、コンパクトデジタルカメラの高画質指向モデルも各社より登場し、関心を集めている。レンズ一体型という形式のメリットを、本体の小型化より専用設計レンズを組み合わせることで得られる画質の向上に求めた結果として生まれた製品ジャンルであり、シグマの「SGIMA DP1 Merrill」「SIGMA DP2 Merrill」、ニコン「COOLPIX P310」、キヤノン「PowerShot G1 X」、富士フイルム「FUJIFILM X10」、リコーGXR用カメラユニット「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」などが注目を集めていた。

 いずれも手軽さや軽さ、初心者に優しいインタフェースなどより、画質を追求したモデルと位置づけられており、カメラファンからの関心は高い。こうした旧来からのカメラファンを魅了する高級機が各社より用意され、多くの関心を集めたことも、今回のCP+で特筆すべきことだろう。

photophoto シグマ「SIGMA DP2 Merrill」(写真=左)ニコン「COOLPIX P310」(写真=右)
photophoto キヤノン「PowerShot G1 X」(写真=左)、リコーGXR用カメラユニット「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」(写真=右)

 多くの新製品が実際に試用可能な状態で用意された今回のCP+からは、このようなトレンドを見とれたが、製品セグメントとして欠けているものがあった。それはエントリー〜ミドルクラスのデジタル一眼レフだ。ミラーレスタイプを充実させることで、その領域をカバーする意向を示すメーカーもあるが、キヤノンで言えば「EOS Kiss X5」「EOS 60D」、ニコンで言えば「D5100」「D3100」といった製品の後継に当たる製品は姿を見せなかった。

 昨年に起こった災害や円高はカメラメーカーに少なからず影響を与えており、また、オリンピックイヤーであることから、ジャンルとして伸びの見込めるミラーレスと、確実に需要のある高級機を優先した結果とも考えられるが、エントリー〜ミドルクラスのデジタル一眼レフにもまだまだ需要はあり、自分の撮影スタイルからそのジャンルを愛好する人々も多い。各社の新製品発表に期待したいところである。

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