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12倍ズームに無線LAN、意欲的な原点回帰――キヤノン「IXY 1」(1/3 ページ)

» 2012年03月13日 17時58分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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 コンパクトデジカメの定番として支持され続けている、キヤノン「IXY」シリーズも登場からずいぶんと時間がたった。ラインアップも広がり、型番もややこしくなってきて、数字を聞いてもどれがいつ発売されたどんな機種だか混乱してきた昨今、とうとう「これが主役だ!」と主張せんばかりの新しい名前を携えてきた。

 それが「IXY 1」である。

photo 「IXY 1」(ホワイト)。ホワイトモデルも鏡胴は黒。白い故に、本体左右下にあるスロットカバーの隙間(片方がmicroSDカードスロット、もう片方がバッテリ)が気になってしまうのだが、高望みしすぎか

 デザインは角が丸かった最近のモデルから一新して、フラットな長方形で、カラーはブラックとホワイトの2色。このボディは縦横が黄金比(1:1.61803398……)となっていて美しいのだという。確かに縦横のおさまりは悪くなく、ウリとしては面白い。

photophoto 真正面から。この縦横が黄金比。言われてみれば美しいような、言われないと分からないようなだが、確かにバランスはいい

 もうひとつのポイントは無線LAN機能。キヤノンもまた無線LANを使ってスマートフォンとの連携を試みてきたのだ。実は数年前も無線LAN搭載のIXYがあったが、いまひとつぱっとしなかった。今回は定着するか。

シーン認識数が増えたこだわりオート

 昨年のIXY主力モデルには大ざっぱにいって、F2.0からの明るいレンズを持ち、ズーム倍率は高くないが広角と暗所に強い「IXY 32S」と、高倍率で望遠重視の「IXY 51S」の2つだった。IXY 1は望遠重視「5x系」の後継モデル。35ミリ換算28ミリ〜336ミリ相当の12倍ズームまでという高倍率を実現している。

 厚さ19.8ミリのフラットなボディに、屈曲光学系と沈胴式レンズを組み合わせたレンズが収められており、撮影時のレンズの飛び出しは少ない。しかもレンズ収納時には、光を屈曲させるプリズムを待避させることで厚みを抑える工夫もなされている。起動時にカメラに耳をくっつけると、レンズが繰り出される音に続いて、内部で別の駆動音がする。このときプリズムを動かしているのだろう。凝った構造を考えるものである。

photo 上から。屈曲光学系を組み合わせているので、レンズはあまり出てこないのがわかる。上面には電源と再生キーが至近距離で並んでる。右端にあるのは無線LANのインジケータ

 開放F値はF3.4-5.6とワイド端はやや暗めで、望遠端は2011年モデルより少し明るい。最短撮影距離はレンズ前1センチとかなり寄れる。

 撮像素子は総画素数1680万画素の裏面照射型CMOSセンサーでありながら、有効画素数は1010万画素。たぶん、レンズのイメージサークルが微妙に小さく、センサーの中央部1010万画素分だけを使ってるのだろう。

 画素数より、デザインと薄さ、それに高倍率を優先した結果と思われるが、じゃあ1010万画素だから使ってて不自由があるかというと、まったくなく、少なくともIXYというカメラに求められるのは画素数よりもスタイリッシュさとオートでも安定した写りなわけで、そこは欠点にはなるまい。

 では実際に使ってみる。

 ボディは超シンプル。上部に電源と再生とズームレバー付のシャッターボタンがあるだけ。再生ボタンも電源キーとして動作するので、電源キーを押せば撮影モードで、再生キーを押せばいきなり再生モードで起動すると思っていい。近い位置にあるので間違って押してしまうこともあるだろうが、慣れればどうということはない。

photo 背面は全面がタッチパネル式液晶。16:9のワイドタイプのため左右の空間にボタンを並べられる
photo タッチAFは至極便利。難しいことを考えなくても撮りたいものを指で指し示せばいいだけだから感覚的でもある。タッチしたターゲットに対して自動追尾となる

 背面には3.2型ワイド液晶があり、操作はすべてタッチパネル。撮影モードは全部で23個あるが、普通なら「シーンモード」の下層にある項目もフラットに並んでおり、「IXYはこだわりオートで使うもの」と考えればよくできている。シーンモードに入って、さらに選ぶよりシンプルで分かりやすい。

 シーンモード画面には、モードが6つずつ4ページに渡って並ぶが、撮影頻度が低そうなものは後ろの方にある。その中身はスノーや打上花火といういわゆる「シーンモード」に入りそうなものから、手持ち夜景やトイカメラといった特殊な撮影をするものまで多種多彩だ。

photophoto こんな感じで全部で4ページ。左右の三角をタッチしてページをめくる。1ページあたりのアイコンを6つにおさえたことで操作ミスしづらく分かりやすい。よく使う機能はたいてい最初の2ページにあるし、という感じ

 ワイド画面には必要な機能ボタンが左右並んでおり、タッチしてそれを選ぶ。アイコンの並びや取捨選択はカスタマイズできるため、よく使うものを一度セットすれば、あとは画面をタッチするだけでいい。これはよくできてる。

photo ボタンはカスタマイズが可能。左右びっしりと並べると全部で10個

 ただ、Pモードなどでちょっと凝った撮影をしたり、メニューから細かい設定をしようと思うと、結構たいへん。スクロールさせるために指をスライドさせる必要があるのだが、スマートフォンなどに比べて感度が低いのか、なかなか狙ったとおりに動いてくれず、イライラするのだ。そろそろここにも手をつけて。まあ、環境設定は頻繁に行うものじゃないし、普段の撮影はたいてい「こだわりオート」で済んでしまうので目くじらを立てるほどではないか。

photophoto メニュー内容は従来のIXYと同じ。コンティニアスAFや水銀灯自動補正などもここで行う。感圧式のタッチパネルで細かなスクロールはちょっと難しいのが難点。これもタッチパネル向きのUIでデザインしてなおしてもらえるとよいと思う

 「こだわりオート」はいわゆる「シーン自動認識オート」だが、認識できるシーンが32から58に大幅増だという。よく見ると、増えたシーンのほとんどが「人物系」。

 特に面白いのは、寝顔だと認識すると感度を上げて連写+合成でノイズを減らす「寝顔認識」や、笑顔だと認識すると「3枚連写」して一番いいものを残す「笑顔認識」、動いている子供だと認識すると3枚連写してそのまま残してくれるという被写体に応じて切り替わる点。

 実際に試してみたが(作例にはありません。すみません)、これはなかなか面白い。寝顔認識は、子供の寝顔を撮りたいけどフラッシュは使えないし部屋を明るくすると起きちゃうし、というニーズに応じたものらしい。

 ここまでやったのなら、夜景時は自動的に連写+合成できれいな夜景を撮るくらいできそうだが、なぜかそっちはスルーなので、自分で手持ち夜景モードを選ぶべし。

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