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第150回 桜と天気と背景の関係今日から始めるデジカメ撮影術(2/3 ページ)

» 2012年03月23日 11時00分 公開
[荻窪圭,ITmedia]

曇天下で名木を撮る

 と、曇天下の話になったところで「名木を撮りにはるばるでかけたら急にどんよりとして小雨すら降ってきたでござる」の巻に突入するわけである。

 2011年のゴールデンウィーク、会津若松まで小旅行に行ってきたのだ。会津若松は福島県にあるが、山間部なので震災の被害は比較的少ないものの、観光客は激減してるというので、では石部桜でも撮りに行くかと思ったのである。東北地方は東京より桜が遅れて咲くので、GW初日ならかろうじて満開チョイ過ぎくらいを楽しめるのだ。

 石部桜は会津若松の飯盛山麓あたりに、田んぼの中にぽつんと立ってる推定樹齢600年の老木。

 ソメイヨシノが作り出されたのが江戸時代末期といわれてるので、ソメイヨシノが誕生する何100年も前からある古木となる。調べてみると、エドヒガンザクラという野生種の桜らしい。飯盛山から北を見ると、田んぼの中に1本だけ巨大な木が立ってるのが分かる。

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 桜らしき木がちらほらと見えるので分かりにくいけれど、田んぼの真ん中といえばあれ。望遠レンズに交換して撮ったのがこちら。小雨がぱらつきそうな重い曇天下なのでちょっともやっとしてるけど、それはご勘弁を。巨大な桜でこんな天候なのにカメラを構えてる人がいる。

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 晴れた日だったらもっと人がすごかったろう。

 余談だけど、上の写真はさざえ堂の裏から撮っている。さざえ堂は内部が2つのらせん階段でできてる堂で、入口から入ってらせん状に上って最上部に達し、そのままもうひとつの螺旋で降りてくるという面白い構造の建造物。

 江戸時代後期(1796年)に建てられたもので、昨年の大地震にも耐えたけれども、行ってみるとけっこうガタがきてて、ビビったりします。でも面白いので古い建築が好きな人にお勧め。

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 ここから下りて徒歩で向かうのは石部桜。ところどころに立っている案内板に沿って住宅街や田畠の中を歩いて行くと、突然見えてくる。

photo 角度はいい感じなのだが、天候と電柱と電線が残念
photo 矢印が桜を指し示す感じになるよう、しゃがんで撮影してみた

 ちらほらと見える人の影がみな傘をさしてることから分かるよう、あいにくの天候だったのだけれど、その立派さはよく分かる。樹齢600年と推定される、と昭和60年に立てられた看板にあったので、だいたい14後半〜15世紀前半あたり。室町時代前半からここにあった桜だと思うと感慨深い。江戸時代の会津の文献にも「石部桜」として出てくるくらい、当時から有名だったのだ。

 上の写真だと1本の巨木に見えるが、別角度から撮ると実はこんなである。電線がどうしてもはいっちゃうのが残念なところ。

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 もともと1本の木だったのか、何本か集まっているのかは分からないけど、これ全体が石部桜。せっかくなので根っこの写真もどうぞ。いやもうただただ歴史を感じさせる、もつれあった根っこがなまめかしい。

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 桜にたどり着いたので、枝の下から広角レンズで見上げてみた。

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 でも、小雨がパラつくような日に、空が入る全体像をきれいに撮るのは難しい。そんなときは、雨の日のしっとり感を狙ってみる。

 小雨がぱらつく中、古木と向き合う。雨の日はそのしっとり感が出るような写真も忘れずに。根元にほこらがあったのでそれに合わせて。濡れた地面に落ちた花びらがなかなかいい。

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 せっかくきたのだから雨だけどきれいな桜の姿も残したいというときは、ちょっと寄って、プラスの露出補正をかけて全体に白っぽくほわっと仕上げてやるといい。

photophoto どちらも+1〜1.3の補正をかけて明るめに仕上げている

 緑を背景にするのもいい。曇っている分、陽射しによる陰影が出ないのでやわらかい感じになる。天気が良くない時、空はなかったことにしてちょっと上から撮ってやるのはひとつの手だ。

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 この連載では何度も桜を取り上げてるけど、「名木」といわれてる名前のついた桜は今回が初めて。

 慣れないことをするから雨に降られたりするんだが、これだけ歴史ある古木となるとその数百年が随所に刻まれているようで、よいものですな。

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