インタビュー
» 2012年06月11日 10時00分 UPDATE

インタビュー:たたずまいの良いカメラ――「FUJIFILM X」とは何か (1/2)

X100の登場から1年足らずの間に4機種を投入した、「FUJIFILM X」。それぞれ異なるキャラクターを持ちながら、シリーズ製品としてのコンセプトにブレはないように見える。FUJIFILM Xのいままでと今、これからについて話を聞いた。

[荻窪圭,ITmedia]

 デジカメ界で勢いを感じさせるブランドとして、「FUJIFILM X」を挙げることに異論を挟む向きは少ないだろう。2011年3月のX100発表からX10、X-S1、X-Pro1とわずか1年あまりで一気にラインナップを広げた。2/3型センサーのズームレンズ一体型モデルから、APS-Cサイズのレンズ交換式まで実に幅広くて面白い。

photo 「FUJIFILM X-Pro1」

 2007年の「FinePix S5Pro」を最後にデジタル一眼レフから離れ、高級機の投入が久しくなかった富士フイルムが新たな形で投入したXシリーズにどんな意図があったのか、なぜあのタイミングだったのか。Xシリーズはなぜセンサーサイズが機種によって違うのか、いったいどこへ向かおうとしているのか。

 そんな話を聞いてきたのである。話を伺ったのは、商品企画を担当する河原洋氏(電子映像事業部 商品部 担当課長)と、デザイン担当の今井雅純氏(デザインセンター チーフ)のおふたりだ。

――高級機が久しかった状態から、X100というハイエンド機がいきなり「APS-Cサイズセンサーのレンズ一体型単焦点コンパクト」というスタイルで登場したときは驚きました。一眼レフでもミラーレス一眼でもなく、コンパクトカメラスタイルで来たのはなぜだったのでしょう。

河原氏: 当時、富士フイルムのデジカメ事業が軌道に乗ってきたころ、営業部門からプレミアムなカメラが欲しいという要望が出てきたのです。技術的にはいつでも作れる要素はあったのですが、どんなカメラにするかが大きな課題でした。

photo 電子映像事業部 商品部 担当課長 河原洋氏

 富士フイルムの世界中のメンバーを集めて議論する場があり、そこで「プレミアムなコンパクトカメラ」という方向性が決まりました。Xシリーズの実質的なスタートですね。ただし「プレミアム」とは具体的にどんなカメラにするかが難しくて、それを形にするまで1年くらいかけました。

今井氏: かなりじっくりいろんなメンバーで議論しました。富士フイルムらしいプレミアムカメラを作りたいということで、デザインもさまざまなパターンを検討しました。

photo デザインセンター チーフ 今井雅純氏

 “握る”ということに特化したアイデア、“両手持ちの気持ちよさ”を追求したアイデアなど、さまざまな考え方や切り口を持ったプレミアムの方向性が、デザインスケッチで展開されました。それらが自然淘汰され、このX100の「往年のカメラらしいスタイル」へ自然とたどり着きました。

河原氏: 最初はセンサーサイズをどうするかから検討しました。どうせならNo1の画質を実現したい。例えばマイクロフォーサーズも検討したのですが、両者の差は、特に高感度時の画質において大きかったのです。フルサイズというより大きなセンサーもありますが、コンパクトサイズが重要であることと、APS-Cであればゆくゆくはフルサイズと同じような画質を実現できるという予測もありました。その結果、APS-Cが最適である、と結論が出ました。

今井: 外観デザインやインタフェースもゼロから開発しています。ファインダーをのぞいて撮るカメラとして、操作系をどこにどういう配置をすればいいのか、例えば露出補正ダイヤルは親指ですぐ回せる位置に、ハイブリッドファインダーのレバーもホールド時は邪魔にならずに使うときは指が届く位置に置いています。

河原: プロ写真家の方にも相当意見を聞きました。そのとき、全員一致でこうして欲しいと意見があったものは実現しています。

X100と並行開発されたX-Pro1

――X100のあと、X100、XS-1、X-Pro1と立て続けにセンサーが異なるモデルやレンズ交換式モデルが出ました。やはり当初からレンズ交換式も開発していたのでしょうか。

河原: もちろん、最初からレンズ交換式や、他のセンサーサイズも考えていて、いずれにしろ一機種で終わらせるつもりはなく、平行して開発を進めていました。特にレンズ交換の場合はマウントをかなり早くから決定しなければならないので、X100とほぼ平行して進めました。X100が我々の予想を超えて評判がよく、これならいけるんじゃないかということで、X100のどういうところが受け入れられたのかを把握しつつ、それを次のモデルに反映させていったのが今までの流れです。

photo 「FUJIFILM X100」

――つまり、レンズ交換式モデルやセンサーサイズが異なるサイズも平行して検討・開発していたからこそ、評判がよかったX100のテイストを他のモデルに引き継ぎつつ、けっこう短期間にラインナップを広げられたと。

河原氏: そうです。短期間に4機種出してますから、X100を出してから考えていたのではとうてい間に合いません(笑)。

――例えば、X100とX10はレンズも単焦点とズームですし、センサーサイズも違います。これだけ異なるモデルを同じ「FUJIFILM X」というシリーズ名で投入するというのは、どういう意図でしょう?

河原氏: X100は万能のカメラではないです、わたしどもは1台で100人が100人とも満足できるカメラを作ることはとても難しいと考えています。撮影スタイルはさまざまなので、APC-Sサイズセンサーにズームレンズを搭載した製品も検討しましたが、そうするとサイズが大きくなってしまいます。そこでセンサーサイズを小さくして、X100とは違うユーザーに対して、違うメッセージを送りたいと考えたのがX10です。

今井: カメラは自分の想いを表現する道具のひとつですから、筆記具に筆もあれば鉛筆もクレヨンもあるように、カメラにもX100のようなものもあれば、もっと気楽に持ち歩いて撮りたいというニーズもある。わたしも1ユーザーとしてそういう気持ちを持っています。X-S1の場合は超望遠を使い、例えば野生動物を撮るようなネイチャーフォトなどを想定しています。この撮影領域の広さを一眼レフで実現しようとすると、レンズ何本も持って行かなければなりませんが、X-S1なら1台で済みます。これからも用途や被写体を考えて、開発していきたいと思っています。

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