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たたずまいの良いカメラ――「FUJIFILM X」とは何かインタビュー(2/2 ページ)

» 2012年06月11日 10時00分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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「X-Pro1は第一弾の集大成」

――かくして、レンズ交換式のX-Pro1に至ったわけですが。

河原氏: わたしどもにとってはX-Pro1が第一弾の集大成と考えています。あくまでも第一弾の、ですが。

――X100の登場時、センサーとレンズのたったひとつの組み合わせでないと得られない高画質という話があったのですが、X-Pro1ではレンズ交換式になりました。交換式にしても十分なクオリティを達成したということでしょうか?

河原氏: そう言うこともできます。X-Pro1はセンサーが進化しています。入射角の問題などを解決してレンズ交換式に対応できるセンサー「X-Trans CMOSセンサー」が作れたのです。特に解像感はX-Pro1の方が上がっています。でも、ハイブリッドビューファインダーを搭載したレンズ交換式ではX100のサイズにならないし、10センチマクロの実現も難しい。優劣はつけづらいですね。

photo 「X-Trans CMOSセンサー」

――解像感が上がったのはローパスフィルターレスが大きいと思うのですが、それは初めから決めていたのでしょうか?

河原: 解像感を上げるために、ローパスフィルターはつけたくなかったんです。開発陣の中で、レンズの良さを引き出すためにローパスフィルターを外そうという発想ははじめからありました。ただローパスフィルターも意味があってついていたものですから、外すだけではいけない。そこはセンサーの開発陣がモアレや偽色が出にくくするにはどうするかを考え、それが可能なピクセル配列や信号処理を考えだしました。それが最初のブレイクスルーですね。もうひとつ、ハイブリッドファインダーをレンズに応じて変倍させるというのも大変でした。

――第一弾の集大成が出たばかりでこうしたことを聞くのはなんなのですが、Xシリーズはこれでかなり幅広いラインナップになりました。将来はXマウントを使ったレンズ交換式と、レンズ固定式の2つのラインが平行して開発されていくと考えてよいのでしょうか?

河原氏: そのふたつだけじゃないかもしれませんよ(笑)。

「FUJIFILM X」としてのアイデンティティー

――その中で、Xシリーズとしての統一感はどのように出していくのでしょう。クラシカルなスタイルがベースになっていくのでしょうか

河原氏: Xシリーズは往年のカメラのスタイルだと思われがちですし、シニア層に人気があるのも確かですが、ユーザー層は30代男性が一番、続いて20〜30代女性が多いという調査結果もあります。30代以下の方は逆にこのデザインが新しいと感じるんです。デジタルカメラとしては高価ですが、長く使えそうだし画質も良さそうだということで、価格に対する価値を認めてくださる方が買って下さいます。長く使えるものには対価を認めてくださる方が大勢いらっしゃることがX100で分かりましたので、自信がつきました。

今井氏: デジタルカメラも単に画像を得るのではなく、そこまでの過程が大事だと思うのです。撮るときの気持ちよさ、使っていて身体的に気持ちいい「もの」としてのよさと、カメラとしてのユニークさの両方を追求していくのがXシリーズです。

 基本的にはカメラとしての本質的な良さを盛り込みつつ、我々独自の革新的な要素――X100でいうと、クラシックな外観とハイブリッドファインダーがそうですし、X10ではスナップズームがそうですが――、そういうカメラの本質を土台にしたユニークさを必ず盛り込むということを軸足に展開していきたいと考えています。

河原氏: シンプルにいうと“撮る愉しさ”と“持つ愉しさ”ですね。持つ愉しさはなかなか味わえません。飾っておくだけでも満足感があったり、感性を刺激したり。それを実現するためにはコストよりも素材ありきで、持つ愉しさの優先順位が高いんです。

今井氏: それをぼくらは「10年デザイン」と呼んでいます。X100は往年のカメラとしてのたたずまいを追求しました。今後も長く使えそうということを大事にしていきたいと思っています。

photo


 今回、「カメラとしてのたたずまい」という言葉がいいなあと思ったわけである。コストとスペック重視で量産されるコンパクトデジカメとは一線を画した、ハイエンドのカメラに求められるものをうまく表現した言葉だ。

 それにしても、X100が登場してまだ1年あまりしか経過していないことには今更ながら驚かされる。その中でこれだけ幅広い機種をそろえたのだから、実にすごい。しかも4モデルそれぞれが同じテイストを保ちつつもキャラクターを重複させず、まったく別のカメラになっている。

 初代モデルとなったX100が成功するかどうか分からない内からX10もX-Pro1も開発していたわけで、思い切ったことをする会社だとも驚かされた。このあと既存の4つのラインナップを熟成していくのか、さらなる変化を見せてくれるのか、いずれにしろ楽しみである。

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