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「FUJIFILM X10」第4回――夏の日差しとフィルムシミュレーション長期試用リポート

» 2012年08月02日 13時56分 公開
[佐藤直宏,ITmedia]
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photo 「FUJIFILM X10」

 前回より間が空いてしまったが、「FUJIFILM X10」の4回目である。最近のデジカメはいわゆるデジタルフィルター系の機能を搭載する機種が多く、手軽な操作で「ポップ」「トイカメラ」など特徴的な写真を楽しめる。そしてこのX10だが、いわゆるデジタルフィルター系の機能は用意されておらず、その代わりに「フィルムシミュレーション」が用意されている。今回はそのあたりのお話を。

 X10に用意されているフィルムシミュレーションは、同社銀塩フィルムの名前が付けられている「PROVIA」「Velvia」「ASTIA」の3つで、PROVIAがスタンダード、Velviaがビビット、ASTIAがソフトとされており、そのほかにもモノクロやセピアも用意されている。それぞれのフィルムシミュレーションだが、PROVIAは「標準的な発色と階調」、Velviaは「高彩度な発色とメリハリある階調」、ASTIAは「落ち着いた発色とソフトな階調」と説明されている。まずはこの3枚の違いを見てみよう。

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photophotophoto 左から「PROVIA」「Velvia」「ASTIA」の各適用

 デジタルフィルターのある意味分かりやすい効果とはひと味異なり、微妙なニュアンスの違いが見受けられる。スタンダードのPROVIAは彩度の押さえられた落ち着いたトーンにまとめられており、派手さはないものの、被写体や状況を選ばずに使える。また、Velviaはハッキリクッキリ、ASTIAはいうならばソフトで豊かな階調とそれぞれに特徴を持つことも分かる。一番上の雲の写真で言えば、炎天下の夏を太陽のコントラストを濃厚な感じで切り取るならVelvia、雲のふわっとした感じを出すならASTIAというところか。

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photophotophoto 左から「PROVIA」「Velvia」「ASTIA」

 これら3つはいずれにしても極端な効果というより、命名の下となったフィルムのもつニュアンスの再現(だから“シミュレーション”なのだが)を主眼としているため、好みのシミュレーションを常用するという撮影スタイルもありだろう。

 前述したよう、フィルムシミュレーションにはこの3つだけではなく、「モノクロ」と「セピア」も用意されており、モノクロにはさらに「+Yeフィルター」(コントラストを強調し、青空が少し濃くなる)、「+Rフィルター」(コントラストを強調し、青空が濃くなる)、「+Gフィルター」(唇、肌の調子を出し、ポートレートに適する)のバリエーションもあり、モノクロだけでも4種類が用意されている。

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photophoto モノクロ、モノクロ+Yeフィルター、モノクロ+Rフィルター、モノクロ+Gフィルター

 各フィルムシミュレーションの設定はメニューから行えるが、「Fn」ボタンへの割り当てもできる。「PROVIA」「Velvia」「ASTIA」の撮り比べは、連写メニューに含まれているブラケット撮影が便利だが、RAWおよびRAW+JPEGに設定した状態だとフィルムシミュレーションブラケットはメニューに表れないので、RAW撮影を多用するひとは留意しておくこと。

 モノクロとセピアについてはブラケット撮影の用意はないが、ダイナミックレンジ100%/200%/400%をワンシャッターで撮るダイナミックレンジブラケットを併用することで、ワンシャッターでモノクロやセピアにも微妙なニュアンスの違いを加えながら撮影できる。特に夏の日中など日差しが強いときのダイナミックレンジ400%は、プラスの露出補正とはまた違った柔らかな仕上がりになって面白い。

 FUJIFILM X10は硬派な大人向けの本格的なカメラという印象を強く与える製品だが、こうした微妙なニュアンスの違いを楽しめることを確認すると、前述の印象が強まるのである。派手さはないかもしれないが、長く楽しめる製品であることを再確認した次第だ。

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photophotophoto フィルムシミュレーション「モノクロ」 ダイナミックレンジブラケット撮影。左からダイナミックレンジ100%、200%、400%

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