インタビュー
» 2012年09月14日 12時01分 UPDATE

プライドをかけたタフネスフラグシップ「OLYMPUS Tough TG-1」開発秘話 (1/2)

オリンパスのタフネスデジカメ「OLYMPUS Tough TG-1」は、シリーズ最上位のタフネス性能はもちろん、F2.0という防水カメラでは例を見ない明るいレンズと画質へのこだわりを持って登場した。このカメラを開発、発売するにあたっての話を聞いた。

[野村シンヤ,ITmedia]

 「OLYMPUS Tough TG-1」は過酷な環境下でも利用できるToughシリーズの最上位機として2012年6月に登場したカメラ。防水カメラとしては今まで実現されていなかったF2 .0(広角端)という明るいレンズを搭載し、従来のToughシリーズとはまったく異なる外装、レンズを中心に配置したルックスは話題を呼んだ。明らかに今までとは意気込みが違う今回の製品。なぜ今ここで投入してきたのか、どのあたりに苦労した部分があるのかと興味はつきない。

 今回、商品開発を担当する高須隆雄氏(開発本部 商品開発2部 2グループ 課長代理)と小野憲司氏(開発本部 商品開発1部 1グループ 課長代理)のおふたりをメインに、 森一幸氏(開発本部 商品開発2部 2グループ 課長)を含めたお三方に話を伺った。

photo 高須隆雄氏(開発本部 商品開発2部 2グループ 課長代理、写真左)と小野憲司氏(開発本部 商品開発1部 1グループ 課長代理、写真右)

モデルナンバーに込められた意気込み

――「OLYMPUS Tough TG-1」(以下 TG-1)は、モデルナンバーにヒトケタの数字を持ってきたことからも、自信を持って送り出したシリーズ最高峰だと分かります。まず、こちらを投入した背景をお聞かせください。

高須氏: ご察しの通り、ヒトケタの型番を持ってきたというのは、シリーズ最高峰という意味を込めて開発したという経緯があります。

photo

 オリンパスはタフネスデジカメを長く作り続けてきたのですが、近年、他社からもタフネス性能を持った製品が多く登場してきました。これまでは私たちは「撮れないところで撮れる」を作ってきたのですが、それだとどうしても防水や防じん、耐衝撃といったタフネス性能を高める方向に偏りがちでした。

 そこでシリーズの定義付けを再考し、「どこでも取れるカメラ」ではなく「撮影領域を広げるカメラ」がToughシリーズの使命ではないかと再定義することから開発はスタートしたのです。そこでカテゴリナンバーワンを取るんだ、という気持ちを込めて「TG-1」という名前としたのです。

小野氏: コンセプトというかToughシリーズの長い歴史をたどっていくと、発売当初から「撮影できない場所で撮影できる」という価値を提供してきたと思うんです。カメラメーカーとして「いかなる場所でも、撮りたい写真が撮れる」よう、TG-1を提供していきたいと考えたのです。

――「どこでも、撮りたいような写真が撮りたい」という“カメラ”に対しての要望は、やはりユーザーから寄せられたのでしょうか。

高須氏: ユーザーアンケートでは画像、画質に対する要望がとても大きかったです。タフネス性能という部分では他社よりも成功していると思うのですが、タフネス性能が一定以上満足頂けているだけに、画質に対する要望が目立つように感じられました。「タフさは十分だから、画質をもっと上げてくれ!」と結構な割合で要望をいただきました。ですので、TG-1の開発のあたってはそこを最優先しようと思いましたね。

――ユーザーからのニーズを受けて、F2.0という明るいレンズを出してきたというわけですね。

高須氏: F2.0という数字は目的ではありませんでしたが、いかなる状況でも満足できる写真を撮るために何が必要かを考えていく内に、明るいレンズが必要だという回答に至りました。明るくてシャッタースピードを稼げて、手ブレにしくく、被写体ブレしにくい――その目的のためにF2.0のレンズを搭載することにしました。F2.0ありきということで進んだわけではないのです。

――ユーザーからの声を取り入れつつ、設計していく上での答えがF2.0となったのですね。

高須氏: はい。技術陣もそうですが、あくまでもユーザー様からの声を目線において今回は開発したというのが重要なポイントですね。

F2.0実現に向けての壁

――防水カメラは構造上、どうしても屈曲光学系を採用しなくてはいけないと思うのですが、そのあたりで苦労した点などお聞かせください。

小野氏: 私が光学設計を担当したのですが、TG-1ではいままでのToughシリーズとはまったく違う、新しい光学設計を採用しています。「F2.0」「タフネス性能」「屈曲光学系」この3つを成立させる設計はとても困難で、製造も難しいものです。なおかつ、製造後にも耐衝撃など外部のストレスにさらされながら、性能を維持し続けなくてはなりません。

 そのため、培ったノウハウをすべて投入して設計したうえで、何千回というテストを繰り返しました。テストの度にデータを採取し、フィードバックをしての繰り返しでようやくいまに至るという感じです(笑)

――試験中にうまく動かなくなるというのもあったのですね。

小野氏: そんなことは多々というか、そんなことばかり(笑) 動かなくて設計を変更するということもありました。

高須氏: 新製品として登場するものは、デジタル一眼でもコンパクトデジタルカメラでも、多少は既存製品からの流用部品があります。ですが、TG-1は設計を根本から見直しているので、実は流用部品がほとんどありません。特に光学系に関しては、これ以上ないだろうというところまで突き詰めて開発設計したので、苦労が多かった部分です。

 ですが、ここまでしないと根本からの見直しにはならなかったのです。逆に言うと、やるしかなかったともいえます。

小野氏: 相当苦労しましたからね。仕上げるまでには(笑)

――名称こそ“Tough”が含まれていますが、シリーズ製品とはまったく違うと。

高須氏: 設計的にはそうですね。ただやはり長い間タフネスモデルを手がけてきた強みはあります。今まで蓄積したノウハウがあったからこそ、ここまでのものを製品化できたと思います。

高須氏: レンズ部分でもっとも苦労した部分はサイズですね。当たり前かもしれないのですが、F2.0という大きさの必要な、明るいレンズを入れるためにはそれ相応のスペースが必要になります。もともと屈曲式光学系は小さいレンズを作るための手法として用いられたもので、そこに大きなレンズを入れるというのは技術的な苦労が大きかったのです。

photo TG-1のカットモデル

――明るいレンズは大きいですが、大きなレンズを使うとボディが大きくなります。これ以上カメラが大きくなってしまうとコンパクトといえなくなってしまうでしょうし。

高須氏: サイズに関しての議論はありました。実現したいスペックのためには、どうしてもボディが大きくなってしまうというのは事実なので、どこまでだったら納得していただける大きさで収められるのか。いろいろ議論しながら進め、納得できるスペックをうまく入れられたとは思っています。

高須氏: 開発初期、設計見積もりよりも大きなレンズが出てきました。最終的に利用することになる1.5倍くらいの大きいレンズでしたね。最初に見たときには、そりゃもうびっくりしました(笑)

小野氏: デジタル一眼用レンズの方が小さいのではないかと思いましたね(笑)

高須氏: 本当にそのくらいでしたね。いかにしてもっと小さくできるのかというのは当初からだいぶ時間をかけています。一時期はモノになんないじゃないのかと、本気で思っていましたよね(笑)

小野氏: 悩みましたよね(笑)

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