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» 2012年10月22日 17時12分 UPDATE

山形豪・自然写真撮影紀:アフリカで感じた、ニコン「D4」の問題と不満

ニコンのフラグシップ機「D4」を導入してアフリカに2カ月ほど滞在した。前回は連写やフォーカストラッキングなどについて話したが、今回は南アフリカのフィールドで使ってみた感想を述べさせていただく。

[山形豪,ITmedia]

 ひさびさのアフリカ長期滞在に備えて導入したニコン「D4」。前回(山形豪・自然写真撮影紀:ニコン「D4」でアフリカの野生動物を撮る)は連写速度やフォーカストラッキングの性能などについて話したが、今回は南アフリカのフィールドで使ってみた感想を述べさせていただく。

 連写速度や耐久性のほかにもD4の「売り」となっているのが、最高常用感度 ISO12800というすさまじいまでの感度の高さだ。ISO 12800では流石にディテールのロスは生じるし、シャドー部にカラーノイズや筋状ノイズが発生するため、どんな場面でも使えるというわけではないが、野生動物、とりわけ昼間あまり活動しない種を撮影する際には非常に有り難い。

 例えば8月のカラハリ砂漠で、日の出30分前という非常に輝度の低い時間帯に、自分に向かって走ってくるヒョウの撮影に成功した。肉眼では暗過ぎてピントのヤマなどとても見えなかった。設定は、500ミリのレンズで絞りはF4(開放)、ISO感度12800、シャッタースピードが1/160、測光は分割評価測光、AFモードはC(コンティニュアス)、三脚も使用している。

 相手の動きがもう少し速かったらアウトとういギリギリの状況だったが、何とかシャープに写っている。ヒョウの瞳孔が大きく開いていることからも、いかに暗かったがお分かり頂けるだろう。これまでならカメラを手に取ることすら諦めていた状況だが、超高感度に加えて、高速連写、低輝度でもトラッキングが可能なAFセンサーの3つが揃うことでこのような写真の撮影が可能となった。

photo 日の出前の低輝度環境で撮影に成功したヒョウ。南アフリカ、カラハリ・トランスフロンティア・パーク ニコンD4、AF-S 500mm F4、1/160 F4 ISO12800
photo 夜間、高感度で撮影したブチハイエナ。背景のシャドー部に顕著なノイズが出ている。南アフリカ、クルーガー国立公園。ニコンD4、VR 70-300mm f4.5-5.6G、1/60 f13 ISO6400、ストロボ「SB-800」使用

 さて、最近のデジタル一眼レフには動画撮影機能が搭載されておりD4も例外ではないが、現在のところ私の撮影はスチールが主体であり、動画についてはまだまだ勉強中だと言わざるを得ない。従ってD4の動画機能については、ここでは割愛させていただく点をご了承いただきたい。

D4の問題と不満

 すさまじいまでの高性能をアフリカのフィールドでも発揮してくれたD4だが、問題や不満が皆無というわけでもない。2カ月間のアフリカでの撮影中に、静電気に起因すると思われる突然のエラー表示や、シャッターが切れなくなる現象などに何度か遭遇している。

 カラハリは極度に乾燥した環境である上に、絶えず微細なホコリが飛んでいる。そのため四六時中静電気が発生するのだ。いずれのケースも、電源を入れたままバッテリーを抜くことで解消したが、あらゆる環境での使用を想定して開発されたはずのD4であればこそ、決定的な場面でまったく写真が撮れなくなるというのは、ゆゆしき問題といわざるを得ない。

 ただ不思議なことに、この問題が発生したのはフィールドに入って最初の10日間くらいで、それ以後は一切、トラブルが起きていない。別にファームウェアを変更したわけでもないし、カメラの扱い方も変えていないので、原因は未だ不明のままだ。

 D4の性能面で一番気になるのは、バッテリーの持ちの悪さだ。電安法とやらの改正によって、容量を減らさざるを得なかったためと聞いているが、野生動物を撮影する場合、ただでさえ電力消費量の多い超望遠レンズで予測駆動フォーカスを多用するため、かなりの勢いでバッテリーがなくなる。

photo カラハリ砂漠で使用中のD4。500mmのレンズと組み合わせてAFを多用するとバッテリーの減りは速い。ニコンD700、AF-S 17-35mm f2.8D、1/250 f14 ISO200

 私が現在使用している「AF-S 500mm F4」はVRのついていない旧型だが、VR搭載レンズを使えば当然電力消費量はさらに上がる。GPSユニットやワイヤレストランスミッターなどの周辺機器を使用すればこの問題はさらに顕著になる。しかも、D3シリーズのバッテリーが流用できるかと思いきや、それも無理ときている。

 今回は車からの撮影がほとんどだったため、車載インバーターにチャージャーをつないで充電が可能だったが、そのような電源が確保できないフィールドでの長期の撮影には、バッテリー(EN-EL18)をいくつも携帯する必要性が生じてしまう。決して軽くも小さくもないこのバッテリーをいくつも携帯するのはかなり煩わしいだろう。値段も安いとは言い難いのでなおさらだ。そのうちアメリカあたりでサードパーティー製の大容量バッテリーが発売されることを期待している次第だ。

 もうひとつ引っかかっているのが、フォーカスエリアがいまだに画面中心部にしか配置されていない点だ。いくらエリアが51点もあっても、画面の四隅にまではない。ピントを合わせたい部分が端の方にある場合、結局はピントを合わせてから構図を決定せねばならず、フォーカスポイントが5点しかなかったF5の時代と比べて、やっていることに大して差がないというのは残念だ。

 そして最後に、何故CFカードのダブルスロットにせず、XQD(注:XQDとCFカード Type Iのデュアル構成)を採用したのか理解に苦しむ。XQDは書き込み速度が極めて速い新規格のカードらしいが、現在のところ私の周りであれを使っている人間はほとんどいない。既存のハイエンドユーザーにしてみれば、既にCFを多数使用しているわけで、マルチカードリーダーも対応していないような新規格のカードとCFカードとの併用を強いられるのは迷惑千万である。

 ただでさえ使用するカメラによってはCFとSDを両方持ち歩かねばならないのに、この上さらにメモリーカードの種類が増えるのも煩わしくてたまらない。ソニーの新規格を中途半端に採用して、昔のベータマックスの二の舞になりはしないかという危惧もある。D4のマイナーチェンジモデル(例えばD4sとか?)が出たらCFカードのダブルスロットに戻っていたなんて事態も充分にあり得ると思っているのは私だけではないはずだ……。

 とまあ様々文句も述べてみたが、D4はこれまで私が使ってきたどのカメラよりも高性能であることは間違いない。ゆえに今回のフィールドワークでは、これまで撮りたくても撮れなかったような写真の撮影に成功したし、アフリカでさらに多くのチャレンジをしてみたくなったので大変満足している。

著者プロフィール

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山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら

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