構図については、見たものをすべて写そうとするのではなく、一部分を切り取るような感覚を持つことが、引き締まった構図で撮るためのコツです。例えば、真っ赤に染まったカエデの大木に出会うと、その迫力に圧倒されて、つい正面から木の全体を撮ってしまいがちです。しかし、ストレートに木の全体を捉えても、その状況の説明写真にはなりますが、面白い写真になるとはいえません。被写体の全部を画面内には収めず、むしろはみ出すくらいのサイズで撮ったほうがスケール感を表現できることが多いといえます。
次の2枚も、風景を切り取る感覚でフレーミングしたものです。1枚目は、紅葉によって画面の周辺を覆い、トンネルのような構図を作ってみました。2枚目は、シルエットになった木を縦に配置して、画面を分割するような構図を狙っています。どちらも、写真に写っていない部分があるからこそ、構図に緊張感が生まれます。
構図を考える上で、背景の処理も重要なポイントです。基本は、写したい紅葉以外の要素を画面から排除し、できるだけ背景がシンプルになるように気を付けること。特にクローズアップで紅葉を撮る場合は、カメラの位置や向きを少し動かすだけで、背景は大きく変化します。その紅葉が最も引き立つアングルを探してみましょう。
次の4枚は、紅葉の葉に数センチの距離まで近寄って撮影したもの。今回使用したSTYLUS XZ-2は、1/1.7型のセンサーを搭載したコンパクトデジカメなので、通常の撮影では、デジタル一眼のような大きなボケは期待できません。しかし、レンズの開放値が明るいので、このような近接撮影では背景にきれいな丸ボケが生じます。
次の写真では、あえて真上から見下ろす平坦な構図を選び、パターンとしての面白さを狙ってみました。落ち葉の形や色に加え、地面のテクスチャが気になって撮影したものです。
構図はシンプルにまとめることが基本ですが、その上で「主役(紅葉)を引き立たせるために、あえて脇役を写し込む」という考え方を取り入れると、紅葉写真に変化や広がりを与えることができます。脇役とは、例えば水や雲、霧、鳥、昆虫といった紅葉のそばにある被写体です。自然のものに限らず、歩行者や車、建物、看板などでも構いません。
紅葉はシャッターチャンスが限られるため、狙い通りのイメージで撮ることは簡単ではありません。しかし、上手いか下手かは別として、とにかく赤や黄色に染まった葉っぱさえ写っていれば「紅葉写真」として成立する面白い被写体でもあります。既存のイメージだけにとらわれず、年に1度の紅葉撮影を自由な発想で楽しんでみてください。
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