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「α99は間口の広いフルサイズ」――ソニーに聞く「フルサイズ」(前編)(1/2 ページ)

» 2012年11月21日 10時00分 公開
[野村シンヤ,ITmedia]

 2012年9月12日、ソニーから驚くような発表があった。コンパクトデジタルカメラの「DSC-RX1」、レンズ交換式HDビデオカメラ「NEX-VG900」、そしてデジタル一眼レフの「α99」。それぞれ35ミリ・フルサイズCMOSセンサーを搭載した製品をこの秋、一挙に投入するといった内容だった(フルサイズで攻勢をかけるソニー、「NEX-5R」「NEX-6」も年内に)

 思えばソニーのフルサイズ機として初めて登場した「α900」から数えること4年。ソニーはフルサイズ機の開発を凍結してしまったのだろうか、といった憶測もあった中で今回の発表は、待っていたαユーザーはもちろんのこと、フルサイズ機に注目しているユーザーにとっては朗報と言える。ついに登場したα99をメインに、ソニーが考えるフルサイズのメリットなど色々と聞いてみたい。

 今回、商品企画を担当する内田雅貴氏(デジタルイメージング事業本部 商品企画部門 商品企画2部3課 プロダクトプランナー )と、 商品設計のまとめを担当した 漆戸寛氏(デジタルイメージング事業本部 イメージング第1事業部 商品設計2部 1課)のおふたりに話を伺ってみた。

photophoto デジタルイメージング事業本部 商品企画部門 商品企画2部3課 プロダクトプランナー 内田雅貴氏(写真=左)、デジタルイメージング事業本部 イメージング第1事業部 商品設計2部 1課 漆戸寛氏(写真=右)

α99が描き出だす、フルサイズ機の魅力

━━ごく一般的なユーザーからすると、フルサイズ機というと「センサーが大きいので画質がよい」「よくボケる」というイメージですが、フルサイズ機、α99ならではの特徴や長所を教えてください。

内田氏:  α99は当社デジタルカメララインアップにおいて、一番上にくるフラッグシップですので、このような最上位機を「持つ喜び」ですとか「よい写真が撮れる」ですとか、使っている人に対して満足感を与えることのできるカメラがフルサイズ機だと思います。

photo 「α99」

 ただ、日本ではどちらかというと下のクラスを使いこんで、最後にフルサイズ機というのがまだまだあるのかなというのがありますが、実は欧米ではフルサイズ機所有の3割から4割が20〜30代の人で、地域によっては女性が半数をしめるというデータもあります。

 ですので、α99には「いつかはフルサイズ」でなく、「いつでもフルサイズ」とでもいいましょうか、せっかくだから人生のパートナーとして、自分の感動した瞬間をとどめておく機械として一緒に過ごそうという方のための、長く使えるさまざまな工夫を施してあります。日本でも、もうちょっと若い人や女性など、色々な人にも使っていただきたいなというのがありますね。

漆戸氏: 画質やボケという観点からすると、表現の幅の広さがフルサイズ機の特長です。ボカすこともできますし、絞って精密な描写を得ることもできます。例えると、APS-Cサイズ機での写真が5本の筆で描く絵だとすると、フルサイズ機での写真は10本の筆で描く絵であって、なおかつ、絵の具の種類も多いということです。そのほかにも、ノイズが少ないなど、そういった部分で表現に幅を持たすことができます。

内田氏: 初心者の人ほどフルサイズ機を使うことで、失敗写真が少なくなる場合もあるというのもあります。例えば、高感度性能にも優れているのでシャッタースピードもコントロールしやすく、手ブレしにくい領域で撮影できるとか、暗いところでもよく撮れるといったメリットがあります。よりゆとりのあるカメラとも言えます。

漆戸氏:  たぶん、何年か前のフルサイズ機ですと、補正性能も今ほどではなく 、感度も幅広く使えないというのもあって、一部には使いづらいというのがあったかとも思うのですが、技術が進歩することでそうした使いにくさはなくなりました。

内田氏:  「α900」(2008年9月発表)のころは残念ながらまだ技術的に限られた面もありましたので、ユーザーからかなりいろいろなお声――もっとノイズを少なくして欲しいとか、高感度性能を良くして欲しい、AF性能を良くして欲しいなど――をいただきましたので、今回はそれらの要望に対して、できる限り、ソニーの技術力を結集させて対応させていただきました。

━━フルサイズの魅力を伝えるにはレンズにも気を使わないといけないと思うのですが

漆戸氏:  やはり APS-C機ですとフルサイズ用レンズを使う場合に画角が変わりますので、そのレンズが本来持っているキャラクターとは変わってしまうこともあり、レンズの性能をフルに引き出すには限界があるのですが、このα99のようなフルサイズボディならば、より高性能なレンズを使って頂ければ、それだけの価値を実感頂けると思って頂いて良いかと思います。

内田氏:  先ほどお話しました通り、ボケを表現する性能にも優れておりますので、 風景だけでなく、ポートレートなども非常に効果的に印象深く撮影できます。それもフルサイズのメリットのひとつではないかと思います。

photo α99+「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」

漆戸氏:  あと、ボケはなかなか撮影時の確認が難しいかと思うのですが、α99はトランスルーセントテクノロジー を導入し、撮影像がEVF(電子式ビューファインダー)でリアルタイムに確認できます。絞りを絞っていただいてファインダーの像を確認すると、ちゃんとそれがキレイに見える ようになっています。

 簡単に使っていただくという意味では、そういった障壁も減らしていった方がよいと思っておりますので、最新の技術も取り入れています。背景のこういったボケ具合がキレイだとか汚いだとかの話をされても、なかなか撮影時にピンとこない方もいらっしゃるわけですが、これを使っていただければ「あ、こういう風に撮れるんだ」というのが分かります。

━━α900からだいぶ間が空いたのですが、今の仕様に骨幹が固まったというのはいつくらいなのでしょうか?

漆戸氏: 2〜3年前には、今のような仕様を候補のひとつとして検討していました。

━━α900といえば光学ファインダーの評価が高いモデルでもあります。そこに電子ビューファインダーとなるトランスルーセントミラーテクノロジーを使おう、というのはその時期から決まっていたのでしょうか?

漆戸氏:  (トランスルーセントミラーテクノロジーの採用は)可能性のひとつとして、検討していました。ファインダーに対する期待値の高いクラスのモデルなので、よりベネフィットの高いモノを提供したいとは考えていました。

内田氏:  そうですね。決して光学ファインダーはナシという前提で進んだわけではありません。さまざまな可能性を精査していた時、「ユーザーが求めているもの」をちゃんと満たすモデルになるかを考え、結果として、独自技術であるトランスルーセントミラーテクノロジーを使って(EVFを採用した)方が、今後の発展性を含めてよいのではないかという結論に達しました。

━━2012年秋冬にフルサイズ機が3社から投入される状況にあると、各社が示し合わせて投入してきたのではないかと勘ぐってしまうのですが、そういったわけではないと。

(一同爆笑)

内田氏:  そうですね。ユーザーの皆様からもかなり要望が寄せられていましたので、我々としてもできるだけ早く出したかったのですが、発売できたのがたまたまこの時期、2012年秋冬だったということですね。

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