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「α99は間口の広いフルサイズ」――ソニーに聞く「フルサイズ」(前編)(2/2 ページ)

» 2012年11月21日 10時00分 公開
[野村シンヤ,ITmedia]
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間口を広くとったカメラの設計

━━α99について、想定したユーザー層はありますでしょうか。

内田氏:  α900をお持ちのユーザーから「早く出してくれ」と要望を受けておりましたので、それに応えるべくこの機種を出したのですが、α700といった中級機からのステップアップ、またはエントリークラスからのステップアップとしても手にして欲しいと思っています。

━━α900やα700といった中上級機からはもちろん、α55などエントリークラスからの乗り換えも視野に入れているのですね。

内田氏:  実際ファミリー機としてα55、それ以前の機種からたくさんのαのファミリー機ユーザーがいらっしゃいます。そういった方からもステップアップして、フルサイズ機を使いたいという要望も受けておりましたので、そういった方たちもターゲットとしています。

漆戸氏: そうした思いがあることもあり、APS-Cサイズ機用として展開している「DT」レンズを装着しても問題なく利用できる仕様としています。ファインダーは電子式ですから、DTレンズを装着すると自動的にDTレンズに適したように視野も切り替わり、違和感なく利用して頂けると思います。

 「フルサイズ用のレンズを持ってないから、フルサイズ機を買ったらレンズも買わないと」 と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、このようにお手持ちのDTレンズもそのまま使えます。α99というカメラに興味を持って頂いたのであれば、まずはボディのみをお求め頂き、ゆくゆくはカールツァイスを初めとした高性能レンズに興味を持って頂き、購入して頂けるとありがたいです。

(一同爆笑)

内田氏:  転送するデータ量やメカ的な動作の関係上、どうしてもフルサイズ機はAPS-Cサイズ機に比べて連写速度で劣るという傾向にありますが、α99では画像サイズが小さくなるものの連写速度を上げられる撮影モードがありますので、連写枚数を最高10枚コマ/秒まで速めることができます(フルサイズ記録時は最高6コマ/秒)。

漆戸氏:  撮影ポジションや構図は大切な要素ですが、機材が大きくなると制限を受けやすくなると思うのです。 小型軽量なモデルならば、比較的簡単に色々なスタイルで撮って頂けると思うのですが、α99でも可能な限りそれに近づけよう 、バリアングル液晶を搭載しています。フルサイズ機でバリアングル液晶を搭載するのは、いまのところα99しかないはずです。

 背面液晶でリアルタイムにプレビューができ、なおかつバリアングルですので、高低さまざまなポジションでの撮影が容易です。そうした自由度の高さも、表現の幅につながると思います。

━━α99はα900よりも体積的にも小さくなっているのでしょうか?

内田氏、漆戸氏:  ええ。小さくなっております(編注:α99は約147×111.2×78.4ミリ/約733グラム、α900は約156.3×116.9×81.9ミリ/約850グラム いずれも本体のみ)。

内田氏: αユーザーには年配の方も多くいらっしゃるのですが、体験会などではα99を手に持ってしみじみと「軽くなったなぁ」とおっしゃってくれています。「これ(軽さ)が一番大事」とおっしゃる方も多いという印象です。

━━α99へ乗り換えるユーザーについては、αだけでなく、NEXシリーズといったミラーレスのユーザーも想定しているのでしょうか。

漆戸氏:  撮る対象によってはNEXシリーズではなく、αのようなカメラを使いたいという方もいらっしゃいますから、NEXユーザーに対しても配慮をしています。 機能面でいえば、Wi-Fi関係など一部を除いた主な撮影機能はNEXにあってα99にないということのないよう、一通り実装しています。

漆戸氏:  例えば顔認識やスマイルシャッターなど、撮影をアシストする機能もα99では備えています。ただ、NEXシリーズ に比べて、利用時の優先順は低いだろうと想定していますので、それら機能へのアクセスはNEXシリーズなどに比べて優先順位を低くしてあります。 肩の撮影モードダイヤルを見て頂ければ分かりますが、パノラマ撮影機能も搭載しています。

内田氏: できれば、手軽に持ち運びたいときはNEX 、本格的に撮りたいときはこちら(α99)と、両方の機種を使い分けしていただけるとうれしいですね。

━━どうしても「フルサイズ機」という言葉からは、ややもすれば取っつきにくい、ストイックなカメラを連想してしまいます。ですが、オートポートレートフレーミングなど、ユーザーを手助けする機能も多く用意されていますし、比較的利用しやすい場所にボタンやメニューが配置されています。こうしたアシスト的な機能も積極的に使って欲しいという意味なのでしょうか。

漆戸氏:  間口を広く取りたかったという思いはあります。(ユーザーアシスト的な機能の充実した)エントリーモデルから入った方に、「あの機能、気に入っていたのに α99にはないんだね」ということがないようにしています。それと、 α900のお客様は絵作りにこだわる方が多くいらっしゃるので、そういったお客様のために新しい絵作りや撮影機能を入れました。 非常に間口の広いカメラとして作ってあります。

━━その、絵作り系としてはどういった機能がありますか?

漆戸氏: α900のころになかったものとしてはオートHDR機能がありますね。あと、ピクチャーエフェクトなどですね。

内田氏:  絵作りとは違うのですが、連写合成による「手持ち夜景」機能も入っていますので、フルサイズならではの画質で、しかも、簡単に撮れますというのもポイントかと思います。

漆戸氏: そうした意味では、シーンに応じて画面を分割し最適処理を行う「エリア分割ノイズリダクション」もα900にはなかった機能です。あとパノラマ撮影機能もありますね。

内田氏: オートHDRや先ほどの手持ち夜景、パノラマなどソニーが先んじて搭載してきた機能はぜひ試して頂きたいです。パノラマやピクチャーエフェクトなどは決してお遊びの機能ではなく、表現のひとつとして使って頂ける機能です。実際、プロの方でもこういった機能を使って作品を撮っている方もいらっしゃいますしね。

━━「α99でこれを撮ってもらいたい」という被写体やシーンはありますか?

漆戸氏: このクラスのカメラを手にする方となれば、皆さん 、それぞれにコダワリをもって撮影されているかと思うので、 「これを撮ってください」というものはありませんが、今回、α99の開発に際して決めたの は「いろいろと工夫して写真が撮れる道具 として作ろう」ということでした。 いろいろな機能や表現の可能性を入れ込むことで、あらゆる撮影の用途に耐える道具としてです。

 ですので、風景でも街頭でのスナップでも、スポーツでも、この道具=α99を使って写真を 撮りたいと思った方が、狙い通りに撮れる 道具にしたつもりです。

(後編に続く)

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