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続くミラーレスの好調、停滞するコンパクト、そして「スマートカメラ」の足音2012年注目したカメラ&トピックス(ライター 小山編)

» 2012年12月26日 10時43分 公開
[小山安博,ITmedia]

コンデジの生き残り策は

 ミラーレスカメラはいよいよキヤノンが「EOS M」を投入。各社勢揃いしてさらに選択肢が充実したが、世界的な市場で見るとミラーレスの市場は、まだレンズ交換式の20%以下に過ぎない。低価格なデジタル一眼レフカメラの登場で世界的なカメラ市場は拡大したが、欧米や新興国市場でミラーレスが受け入れられるのか、どのように発展するかは今年も未知数という印象だった。

 一方、コンパクトデジカメの縮小を加速させているのが、スマートフォンの隆盛だ。スマートフォンが一般化し、SNSの隆盛が輪をかけ、「写真を撮って投稿する」という流れが本格化した。さらに、今年に入ってスマートフォンの低価格化、カメラの高画質化も進展したのも大きい。

photo photokina 2012でソニーが発表した、欧州のデジタルカメラ市場動向。欧州ではスマートフォンに押されて市場が減少している

 その中で、面白いのが2月に発表されたNokiaの「808 PureView」(Mobile World Congress 2012:Windows Phone新モデルや超高画素カメラケータイを展示――Nokia)だ。4100万画素のセンサーを搭載しており、この高画素を利用してノイズ低減、疑似ズームなどの機能を備え、極小画素でレンズも強化しづらいケータイカメラのデメリットを、ソフトウェア的に解消する仕組みを備えた。ただ現時点で、後継機は出ておらず、Windows Phone 8端末の「Lumia 920」では、「PureView」を名乗りつつ、画素数は一般的な870万画素に落ち着いている。さらにPureViewの開発者もNokiaからの退職を発表しており、今後の展開は不透明だが、その方向性は面白い。

photophoto Nokiaの808 PureView(写真=左)。中心部を拡大して疑似的にズームできる(写真=右)

 いずれにしても、昨年から続くスマートフォンの隆盛は、コンパクトデジカメに大きな影響を与えている。逆に、スマートフォンでの撮影が一般的になることで、その発展として「もう少しいいカメラで撮影したい」という要求が強まることも想像できる。この辺りは、ミラーレスカメラへの導線として注目だろう。

photo スマートフォンとしては破格の大きさの808 PureViewのセンサー

高級コンパクトの存在感

 こうしたスマートフォンカメラの進展の中で、コンパクトデジカメはどうするか。今年はドイツで世界最大規模のカメラ関連展示会「photokina 2012」が開催されたなかで注目したいのが、ソニーの「DSR-RX100」と「DSC-RX1」。RX100はphotokinaより前の発表だが、photokinaでの発表となったRX1を含めて、面白い存在だ。

photophoto DSC-RX100(写真=左)とDSC-RX1(写真=右)

 いずれも「高級コンパクトデジカメ」に位置づけられ、RX100は1インチ、RX1はフルサイズのセンサーを搭載してする。コンパクトデジカメサイズながら、高画質を目指した製品だ。ソニーでは、コンパクトデジカメの生き残り策として、「高級コンパクト」と「旅カメラ」の2点を挙げており、高倍率ズーム搭載の「旅カメラ」とともに、スマートフォンでは対応が難しい領域をカバーする方針を示している。この辺りは、各社とも注力している領域で、スマートフォンとのすみ分けを図っている。

 個人的には、スマートフォンは高画素化をある程度で抑え、コンパクトデジカメではセンサーの大型化を始め、カメラとしての可能性を追求してほしい。スマートフォン側は、夏に発表された「Exmor RS」センサーが登場すれば、カメラとしてのパフォーマンスがさらに向上しそうだし、コンパクトデジカメにもない「HDRムービー」といった独特の機能も実現できる。スマートフォンにはスマートフォンの、カメラにはカメラの、専用機器としてのメリットを生かした製品を期待したい。

カメラをスマートに

 コンパクトデジカメのもう1つの方向性を示す製品として、ニコン「COOLPIX S800c」とサムスン「GALAXY Camera」の2つも注目したい。両者とも、カメラのOSとしてスマートフォン向けOSのAndroidを採用している。

photophoto COOLPIX S800c
photophoto GALAXY Camera

 Androidを採用したことで、スマートフォン向けのアプリを使ってSNSへの画像投稿が簡単に行えるのがメリット。S800cは無線LAN、GALAXY Cameraは3Gまたは4Gの携帯回線に対応しており、スマートフォンのように「撮影してSNSに投稿する」行為が快適に行える。特にGALAXY Cameraは、音声通話非対応なものの、携帯回線を使っていつでもどこでも投稿できる。

 カメラとしては、S800cが光学10倍ズーム、GALAXY Cameraが21倍ズームという高倍率ズームを搭載。それぞれ3.5型、4.8型のディスプレイを搭載している。ただ、S800cはAndroid OSのバージョンとしては2.3、GALAXY Cameraは4.1を採用しており、機能やスペックはGALAXY Cameraの方が上。この辺りは、スマートフォン開発に慣れているサムスンの方に分がありそうだ。

 いずれにしても、スマートフォン用OSを搭載することで、豊富なアプリをそのまま活用できるのはメリット。ニコンはもとより、サムスンもカメラ事業を続けており、カメラとしての性能も期待できる。もちろん、スマートフォン的な文字入力もできるので、SNSとの相性も良く、インターネットとの親和性も高いので、「カメラのスマート化」として期待できる方向性だろう。

 カメラのスマート化では、ソニーのアプローチも興味深い。「NEX」シリーズの新機種「NEX-5R」「NEX-6」では、Wi-Fiを標準搭載し、さらに独自アプリに対応したことで、スマートフォンのようにアプリを追加し、インターネット経由で画像投稿などができる。

 GALAXY CameraなどのようにAndroid OSを搭載するわけではないため、アプリの自由度は少ないが、その分だけ簡単に利用できるので今後の展開も期待したいところ。「スマートフォンとの連携」部分でも、もう少し展開の余地がありそうだ。

 ただ、Androidのようなスマートフォン用OSが、デジカメのOSとして最適かというと議論の余地もある。それでも、スマートフォン並みのパフォーマンス、無線通信機能、SNSとの親和性、アプリでの拡張性、といったキーワードは、今後のデジカメでもポイントとなりそうだ。

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