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» 2013年03月12日 20時20分 UPDATE

荻窪圭のiPhoneカメラ講座:第4回 “連写+合成”ができるHDR撮影を活用する

iPhoneに限らず、スマホやデジカメの撮像素子はとても小さいので、一度に取り込める光の量が少なく、ちょっと光が多いと明るいところが真っ白になり、暗いところがつぶれてしまう。そこで活用したいのが「HDR」なのだ。

[荻窪圭,ITmedia]

 iPhone……に限らず、スマホやコンパクトデジカメに使われてる撮像素子(イメージセンサー)ってとても小さいわけである。とても小さいのに800万とか1600万とかのたくさんの画素がびっしり並んでる。それはすごいことなんだけれども、その分「画素ひとつあたりのサイズ」が小さくなる。2μm(マイクロメートル)とかいってもよく分かんないけど、とにかく小さい。

 小さいと、当然ながら一度に受けられる光の量も少なくなる。ちょっと光が多いと明るい箇所が真っ白になっちゃうし、ちょっと少ないと暗い箇所が暗すぎてよく分かんなくなる。一度に捉えられる明暗差が少ないわけで、それをダイナミックレンジが狭い、なんていう。

 例えばこの写真。

photo

 なんてことない。神社の拝殿を正面から撮ったものだけど、空の明るいところが真っ白になってるし、肝心の拝殿は暗くてよく分からない。拝殿をタッチAF/AEしてから撮ると空は真っ白になって極端だし、逆だと肝心の拝殿が真っ暗でシルエットになっちゃう。どうすればいいだろう。

 で、むかしむかしのあるとき、賢い人たちは考えた。「そうだ、明るい写真と暗い写真の両方を撮ってうまく合成してやれば、広い明暗差を1枚に収められるんじゃね?」

 そして出てきたのがHDRって技術だ。HDRは「ハイダイナミックレンジ」の略。昔は三脚を立ててカメラが動かないようにして露出を変えた(つまり明るさを変えた)写真を複数枚撮影してPC上で合成していたのだけど、技術の進歩はえらいもので、その場でリアルタイム合成するカメラが登場し、やがてiPhoneにもそれが取り入れられたのだ。

ハイライト部の白飛びを抑える方向に働く

 使い方は簡単。カメラ画面でオプションをタップすると「HDRオンオフ」って項目がある。これをオンにしてやるといい。そうすればiPhoneがこっそり3枚を超高速連写し、うまいこと合成した写真を記録してくれる(合成に数秒かかるけど、そこは我慢ってことで)。連写+合成をするので、ちょっとだけ余計にじっとしていること。

photo オプションの「HDR」をオンにする

 風景系、特に神社仏閣系を撮りたいときに都合がいい。空が明るくて、ちょっと色が暗い木造建築の場合、HDRかけると両方ともなんとか捉えてくれる。というわけで先ほどの写真のHDR版をどうぞ。

photo HDRをオンにして撮ると、空も拝殿も両方とも生きた写真になる

 これがHDR撮影の代表的な効果だ。3枚撮影した写真全部を同じように使うのか、ハイライト部とシャドウ部のどちらを重視するかはiPhoneが判断してるので、あまり極端な結果になることはないし、HDRの必要がないときは、通常写真と変わらない結果になることもある。

photophoto 通常撮影。空の左の方が明るすぎて空のグラデーションもちょっと不自然になっている(写真=左)。HDRのおかげで、空は滑らかな青いグラデーションになり、シャドウ部も少し復活して、もみじの赤が、よりくっきりと映えてきた。ただ、影の部分は無理には持ち上げてない(写真=右)

 全体としてハイライト部の白飛びを抑える方向に働くことが多いようで、夜景を撮るときにもいい。

photophoto 通常撮影の夜の京都タワー(写真=左)。HDR撮影した夜の京都タワー(写真=右)

 基本的にHDRはオンのままにしておいていいが、HDRが期待したように働いてくれないことがある。そんなときどうするか。HDRをかけてない写真も同時に残してくれれば、あとで自分で判断できていいのだ。

 というわけで「設定」の「写真とカメラ」だ。これの下の方に「HDR」って項目がある。そこの「通常の写真を残す」をオンにしておくこと。

photophoto 「設定」→「写真とカメラ」で「通常の写真を残す」を「オン」にするべし

 そうすると、HDRをかけた写真とかけてない写真の2枚を残してくれるのだ。HDRしない方が結果がよかった場合もあるし、HDRって3枚を連写して合成するという処理の関係上「動いてる被写体がいた」ときに失敗する可能性があるけど、それを防げるわけだ。

 撮る前にどっちがいいかを判断するのは困難だしめんどくさいので、2枚残してましな方を採用するのが賢いのである。

 例えば次の2枚の料理写真。

photophoto 通常撮影(写真=左)とHDR撮影(写真=右)

 明るさを料理に合わせて撮ってるのだけど、そうすると白いお皿が白くトんじゃう。HDR撮影の方はそこを補ってくれた。しかし、こっちとしては白いお皿は真っ白にトんじゃってもよいのだ。その分明るく見えるし。そんなときは通常撮影の方がいい。

動いているものをHDRで撮ると……

 続いて、動く物体がいたとき。たまたま3枚連写して合成してるんだなあ、というのがよく分かる写真が撮れたのでどうぞ。

photo 一見普通の風景だけど、右上に黒い三連星的な鳥が。。。

 右上の鳥を拡大してみたのがこちらだ。

photo 鳥のあたりを等倍表示してみた

 見事に普通→暗いの→明るいのと微妙に異なる3羽が写ってる。分身の術ですな。HDRだとこういうことがある。特に強い風が吹いているときは危険。

photo だんごの暖簾がすごいことになっております

 でも面白いことに、動体を撮ったら必ず破綻するというわけではないのだよね。3枚のうちどれをどう使うかは、iPhoneにおまかせであって、時には良きに計らってくれることもあるのだ。

photophoto 通常撮影(写真=左)とHDR撮影(写真=右)

 これ、手前のユリカモメにAF/AEロックして、カモメが羽ばたいた瞬間を狙って撮った写真。2枚目がHDR撮影なんだけど(背景のビルのあたりを見比べるとHDRしてるのが分かる)、これだけ派手に動いていながら、合成時の破綻がほとんどない(よく見ると、手前のユリカモメの羽根の一部が透けてるけど、そのくらいは許容範囲)。

 たまたま、ユリカモメのあたりは明暗差が極端じゃない分、ほかのカットと合成されずに済んだだけだと思うけど、そういうこともあるのだ。コツは普段からHDRはオンにしておいて、とりあえず撮ってみること。ダメならダメで通常撮影分を使えばいいだけだしね。世の中そんなもんです。

今週の小技:タッチAF/AEとHDRを組み合わせる

 先週、うちの大五郎(白い方)とかふか(キジトラの方)が並んでる写真を例として出したわけです。

photo

 左が大五郎に明るさを合わせた写真、右がかふかに明るさを合わせた写真。でもHDR機能があればカメラが良きに計らってくれるんだから、わざわざ片方に明るさを合わせなくてもいいじゃん、と思うじゃないですか。まあそれはある意味正しいのだけれども、上記の2枚のHDR撮影版を見ると、あながちそうともいえない。

photophoto 大五郎に合わせた方のHDR版(写真=左)。かふかに合わせた方のHDR版。全体にちょっと明るめに

 このように、撮影時にどこに明るさを合わせてシャッターを押したかでHDRの結果も違ってくるわけである。つまるところ、タッチAF/AEとHDRを併用して、希望通りに撮れていた方を選ぶってのが一番ってことですね。

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