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» 2013年03月22日 15時58分 UPDATE

山形豪・自然写真撮影紀:ナミビアへの誘い その2 オットセイのコロニーとサケイの群れ

前回は様々な種類の動物と出会えるエトシャ国立公園についてだったが、今回はナミビアで生き物の大群を撮影できる場所をご紹介する。

[山形豪,ITmedia]

ケープクロスのオットセイコロニー

 広大なナミブ砂漠を日が沈む方へ進んでいくと、砂の海は突如として南大西洋の荒波にとって変わる。それがナミビアの西の果てだ。北に位置するアンゴラと南アフリカとに挟まれているナミビアの海岸線は、総延長1570キロメートルにも及ぶ。

 樹木はおろか、草すらもろくに生えておらず、一見すると生命とは無縁とも思えてしまう海辺にも、生き物であふれている場所が存在する。ケープクロス・オットセイ保護区(Cape Cross Seal Reserve)もそのひとつだ。ここはミナミアフリカオットセイの大コロニーとして世界的に知られている。

photo ケープクロスのオットセイコロニー ニコンF5、AF-S 28-70mm f2.8 フジクローム・プロビア

 ミナミアフリカオットセイは南部アフリカ固有の海獣だ。オスとメスで随分とサイズが違い、成獣のメスが体重40〜80キログラムなのに対し、オスは200キログラム以上、大きなもので350キロにも達する。ケープクロスには、多い時で21万頭に達するオットセイが集結する。メスたちが一斉に子育てを始める11月から12月にかけてのコロニーの賑わいはすさまじく、写真を撮ろうにもどこを切り取ったらよいのか分からなくなるほどだ。また、そこかしこでオスたちが巨体をぶつけ合い縄張り争いを繰り広げるなど、写真好きならずとも一見の価値がある。

photo 縄張り争いをするミナミアフリカオットセイのオス ニコンD200、AF-S 500mm f4、1/350 f4 ISO400

これだけ間近でオットセイの大群を撮影できるロケーションはそうそうない。しかし、実は難点もある。それは筆舌に尽くしがたいほどの悪臭だ。当然と言ってしまえばそれまでなのだが、あれだけの数の、それも魚介類ばかりを食べる獣たちが一堂に会すれば、空気中に漂う臭気は生半可なものではなくなる。運悪く風が海側から吹いてくる日は、鼻で息をするとめまいがするほどだ。それでも気合で何とか撮影をするのだが、服や髪の毛のみならず、三脚やカメラにまで臭いが染み付くので、後始末には苦労する。

 ちなみに、アザラシとオットセイ、とてもよく似ているが、違いはどこにあるかというと、耳たぶがあり、前ヒレと後ヒレを折り曲げて歩くことができるのがオットセイだ。対してアザラシには耳たぶがなく、陸では前ヒレを使って這うことしかできない。

世界遺産・トワイフルフォンテインで鳥の大群を撮る

 ケープクロスから内陸部に向かって北へ進むと、やがてダマラ・ランドと呼ばれる乾燥地帯になる。この地にはナミビアで唯一のユネスコ世界遺産、トワイフルフォンテイン(Twyfelfontein)がある。自然豊かなナミビアであれば、当然自然遺産だろうと思いきや、実は文化遺産である。

 6000年から2000年ほど前にこの地域で暮らしていたサン族の人々(狩猟採集民で、俗にブッシュマンとも呼ばれている)が描いた岩絵が数多く残っているのだ。ライオンやキリン、オリックスなど、今日でもエトシャ国立公園などで見られる野生動物たちがいきいきと描写されている。

photo 世界遺産、トワイフルフォンテインに残る岩絵 ニコンD200、AF-S 18-70mm f4.5-4G、1/400 f7.1 ISO200

 これらの岩絵からは、大昔の人々がいかに自然や動物と密接な関わりを持ちながら暮らしていたかが感じ取れる。しかし、生きた野生動物の撮影に主眼を置く私のような人間にとっては、過去に思いをはせるだけがトワイフルフォンテインを訪れる目的ではない。実は付近に湧き水(オアシス)があり、そこに多くの野鳥が集まってくるのだ。

 特に多いのがクリムネサケイ(栗胸沙鶏)という鳥で、日によって1000羽以上が入れ替わり立ち代りやってくる。水場に降り立つとサケイたちは、喉の渇きを癒すだけでなく、水の中に入り胸から腹にかけての羽毛に水をしみ込ませてから飛び去る。これは、まだ飛行のできない雛に水を持って帰るための行為だ。水の少ない砂漠に生きる鳥ならではの興味深い習性である。

photo オアシスに集まるクリムネサケイ ニコンD200、AF-S VR 70-200 f2.8G、1/2000 f5.6 ISO320
photo 羽毛に水をしみ込ませるクリムネサケイ ニコンD200、AF-S 500mm f4、1/320 f11 ISO400

 このように、ナミビアは海にも陸にも多くの魅力を秘めており、自然写真家にとっては飽きる事のないフィールドである。

著者プロフィール

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山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら

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