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センサーとレンズスペックから見る、高級コンパクトデジカメ今夏の傾向

» 2013年07月23日 13時16分 公開
[ITmedia]

 ちらほらと夏期休暇が視野に入る時期。せっかくだからちょっといいカメラと考える人も多いだろう。そこで気になるのが、高い画質とコンパクトなサイズを両立した「高級コンパクトデジカメ」の部類に属する製品。ここでは、3月に掲載した「センサーとレンズスペックから見る、高級コンパクトデジカメ今春の傾向」をアップデートしたい。

 まずは3月からここまでに登場した(発表された)主な新製品を、センサーサイズ順にみていこう。

 フルサイズセンサー搭載機としてはソニー「DSC-RX1R」が新登場。既存「DSC-RX1」の兄弟機という位置づけのローパスレス仕様機だ。基本的にRX1をローパスレスとした以外の仕様変更はないものの、画像処理エンジンの調整などが行われており、より解像感を重視したモデルとされている。

 APS-Cサイズセンサー搭載機としては、リコー「GR」が登場した。1/1.7型(有効1200万画素)センサーを搭載する「GR DIGITAL」シリーズの後継となる製品で、撮像素子はローパスレス仕様のAPS-Cサイズ(23.7×15.7ミリ)有効1620万画素CMOSセンサーと大型化された。レンズは35ミリ換算28ミリ相当(F2.8)の「GR LENS 18.3mm/F2.8」を組み合わせている。

photophoto ソニー「DSC-RX1R」(写真=左)、リコー「GR」(写真=右)
photo 高級コンパクトデジカメが搭載する撮像素子のサイズ比較(簡略図)

 1型センサー搭載機にもソニー「DSC-RX100 II」(DSC-RX100 M2)という新型が登場した。こちらもレンズなどは既存「DSC-RX100」と同一の兄弟機に当たるバリエーションモデルだが、センサーを高感度特性に優れた裏面照射型としたほか、背面液晶をチルトタイプに変更して操作性を高め、ホットシュー(マルチインタフェースシュー)も搭載。NFCにも新たに対応した。

photophoto パナソニック「DMC-LF1」(写真=左)、ペンタックス「PENTAX MX-1」(写真=右)

 「高級コンパクト」というくくりでは、どうしても大型センサー搭載機が目立つ印象になってしまうのは否めないが、より小さなセンサーを搭載したモデルにも新製品が登場している。

 ペンタックス「PENTAX MX-1」は1/1.7型 有効1200画素の裏面照射型CMOSセンサーに28〜112ミリ相当(F1.8-2.5)を組み合わせたモデル。特筆すべきはテレ端までF2.5と明るいレンズで、1/1.7型センサー搭載製品のなかでは、オリンパス「STYLUS XZ-2」に比肩する(XZ-2は28〜112ミリ相当 F1.8-2.5)。外装に真ちゅうなどを用いることで、銀塩カメラ「MX」を連想させるスタイルとしていることも魅力といえよう(初出時、XZ-2についての記載に誤りがありましたので、訂正させて頂きました 2013/8/21 13:50)。

 パナソニック「DMC-LF1」はセンサーサイズこそ1/1.7型と、高級コンパクトのジャンルではおとなしめなサイズだが、同サイズのセンサーを搭載する他製品に比べると破格とも言える高倍率の7.1倍ズームレンズ(28〜200ミリ相当)を搭載。また、EVFも備えており、本格カメラとしての雰囲気も十分に味わえる。同サイズセンサーを搭載する同社既存製品「DMC-LX7」に比べるとレンズの明るさでは劣るが(LX7は24〜90ミリ相当 F1.4-2.3)、ズーム倍率では勝り、ボディサイズはLF1のほうが小さい。画質と利便性のバランスを上手に取ったモデルといえそうである。

 少し毛色が違うものの、クラシカルなデザインのカメラという意味ではソニー「DSC-HX50V」も紹介したい。30倍ズームレンズを搭載するいわゆる高倍率ズーム機に属する製品だが、露出補正ダイヤルや5枚羽根による虹彩絞り、ホットシューを備えており、凝った撮影にも対応できる。


 3月からの情報アップデートということもあり、各社ラインアップに大幅な追加変更は見られず、新製品の登場も控えめといった感があるものの、これだけの製品数が用意されていることから、「本格的なカメラ(あるいはちょっといいカメラ)が欲しい」という需要はいまだ継続していることが分かる。

 全体の傾向(比較的大型のセンサーを搭載するモデルは単焦点レンズ、比較的小型なセンサーを搭載するモデルはズームレンズなど)に変化は見られないが、パナソニック「DMC-LF1」やソニー「DSC-HX50V」といった新顔を見ていると各社「高級コンパクト」の解釈にも幅が広がりが出始めているように思える。

 高級コンパクトという製品ジャンルはこれまで、写真ファンに向けたコアなモデルが中心であり、ほぼそのすべてといえたが、「せっかくの旅行なのだからちょっといいカメラが欲しい」といったモチベーションで高級コンパクトに関心を持ち始めた、いわゆるライト層までをカバーし始めているように感じられる。――これから写真を趣味にしてくれるかもしれない層の取り込み――。各社が現在、企画検討している新製品がもつテーマのひとつはこれかもしれない。

photo 「DSC-RX100 II」にて、ISO10000の超高感度撮影
製品名 撮像素子サイズ 有効画素数 レンズ(35ミリ換算) 備考
DSC-RX1 35ミリフルサイズ(35.8×23.9ミリ) 2430万画素 35ミリ相当/F2.0 カールツァイス「ゾナーT*」レンズ
DSC-RX1R 35ミリフルサイズ(35.8×23.9ミリ) 2430万画素 35ミリ相当/F2.0 カールツァイス「ゾナーT*」レンズ、ローパスレス仕様
GR APS-C(23.7×15.7ミリ) 1620万画素 28ミリ相当/F2.8 ローパスレス仕様
SIGMA DP3 Merrill APS-C(23.5×15.7ミリ) 4600万画素(4800×3200×3層 R/G/B) 75ミリ相当/F2.8 Foveon X3、画像サイズは最大4704×3136ピクセル
SIGMA DP2 Merrill APS-C(23.5×15.7ミリ) 4600万画素(4800×3200×3層 R/G/B) 45ミリ相当/F2.8 Foveon X3、画像サイズは最大4704×3136ピクセル
SIGMA DP1 Merrill APS-C(23.5×15.7ミリ) 4600万画素(4800×3200×3層 R/G/B) 28ミリ相当/F2.8 Foveon X3、画像サイズは最大4704×3136ピクセル
COOLPIX A APS-C(23.6×15.6ミリ) 1616万画素 28ミリ相当/F2.8 ローパスレス
FUJIFILM X100S APS-C(23.6×15.6ミリ) 1630万画素 35ミリ相当/F2.0 ローパスレス X-TRANS CMOS II、ハイブリッドファインダー、点像復元
PowerShot G1 X 1.5型 1500万画素 28〜112ミリ相当(F2.8-5.8) バリアングル液晶
DSC-RX100 1型(13.2×8.8ミリ) 2020万画素 28〜100ミリ相当(F1.8-4.9) T*コーティング
DSC-RX100 II 1型(13.2×8.8ミリ) 2020万画素 28〜100ミリ相当(F1.8-4.9) 裏面照射型センサー、マルチインタフェースシュー、チルト液晶、NFC、T*コーティング
FUJIFILM X20 2/3型 1200万画素 28〜112ミリ相当(F2.0-2.8) ローパスレス X-TRANS CMOS II、アドバンスト光学ファインダー、点像復元
FUJIFILM XF1 2/3型 1200万画素 25〜100ミリ相当(F1.8-4.9) EXRCOMS
COOLPIX P330 1/1.7型 1219万画素 24〜120ミリ相当(F1.8-5.6) GPS
PowerShot S110 1/1.7型 1210万画素 24〜120ミリ相当(F2.0-5.9) Wi-Fi、タッチパネル
PowerShot G15 1/1.7型 1210万画素 28〜140ミリ相当(F1.8-2.8) ハイブリッドIS
DMC-LX7 1/1.7型 1010万画素 24〜90ミリ相当(F1.4-2.3) マルチアスペクト対応
DMC-LF1 1/1.7型 1210万画素 28〜200ミリ相当(F2.0-5.9) EVF搭載
STYLUS XZ-2 1/1.7型 1200万画素 28〜112ミリ相当(F1.8-2.5) ハイブリッドコントロールリング
GR DIGITAL IV 1/1.7型 1000万画素 28ミリ相当(F1.9) 1センチマクロ、ハイブリッドAFシステム
STYLUS XZ-10 1/2.3型 1200万画素 26〜130ミリ相当(F1.8-2.7) i.ZUIKO DIGITALレンズ、「PHOTO STORY」
DSC-HX50V 1/2.3型 2040万画素 24〜720ミリ相当(F3.5-6.3) 高倍率(30倍)ズームレンズ、5枚羽根虹彩絞り、Wi-Fi、GPS

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