インタビュー
» 2013年08月19日 10時30分 UPDATE

“富士フイルムならではの色”がある、その秘密を聞く (1/2)

「あのメーカーのカメラはあの色がいいよね」 カメラ好きの間では何気なく出る会話だが、富士フイルムのカメラについては「特に肌色がいい」と言われることが多い。その秘密を聞いた。

[荻窪圭,ITmedia]

 デジタルカメラの場合、今さら言うまででもないのだけれど、いい撮像素子といいレンズがあって露出がしっかり合ってればどのカメラでも同じ写真が撮れるかというと、そんなことはない。

 撮像素子がとらえた信号をデジタル化し、そこから画像を作り出すという処理の違いで、それぞれ微妙に異なった絵が出てくる。それが面白いところでもあり、絵にこだわりがある写真好きになるほどカメラ選びで悩むところでもある。

 富士フイルムはどうか。

 実はデジカメ黎明(れいめい)期から、富士フイルムのデジカメはすごく発色がいいといわれてきた。そこに富士フイルムならではのノウハウはどのくらいあるのか、そこで差別化がどうなされているのか。そんな富士フイルムの絵づくりについて、技術マネージャーの芦田氏に突撃してみたのである。

photo 富士フイルム R&D 統括本部 光学・電子機器商品開発センター 技術マネージャー 芦田哲郎氏

「フジのカメラは肌色がいい」は意図されたものか

――いきなりぶっちゃけますが、富士フイルムのデジカメは発色がいい、特に肌色がいいとよくいわれますし、わたしもそう思います。実際、そんなに他社と比べて違うものなのでしょうか?

芦田氏: 正直、特にコンパクトカメラにおいては各社とも絵づくりが似てきていると思います。ただ、その中で、各社とも「ここはキープしたい」というこだわりがあるように見えます。どこが大事か、というのはメーカーによって違いますね。

 富士フイルムの場合は、人が見たときに心地いい色を目指してます。ここは銀塩フィルム時代と基本的には同じです。撮影した人のみならず、その場にいなかった人がその写真を見て心地よく見えるような写真をイメージしています。

――それは記憶色重視ということですね

芦田氏: そうですね。細かくいうと、われわれは色再現には3つの項目があると思っています。ひとつめは階調性、ふたつめは忠実な表現、みっつめがその記憶色の再現です。これらに加えて安定したオートホワイトバランス。どれも重要ですが、特に記憶色と呼ばれる部分を大事にしているのは確かです。

 記憶色といってもいろいろな色があるのですが、富士フイルムではマリンブルーやスカイブルーといった青、それから緑、そして肌。この3点に重きを置いています。青や緑は一般的に彩度が高い色が好まれますから、やや鮮やか目にしています。

――多くの人が富士フイルムは肌色がきれいに出ると言っていますし、わたしもそう感じてます。肌に関しては何か特別な処理をしてるのでしょうか?

芦田氏: 青や緑は彩度を上げた方が好まれますが、肌色に関してはそうではありません。明るく鮮やかな方が健康的だと感じられますが、緑や青ほど明るく鮮やかにすればよいというものでもありません。また、肌を測色的に分光をしっかり測って忠実に再現すると、見る人に好まれない色になるという側面もあり、フィルム時代から肌色には気をつけてますね。銀塩時代は化学反応、今はデジタル処理と、手段は違いますが思うところは同じです。

photo

――どのカメラメーカーも肌色には気をつけていると思うのですが、富士フイルムの場合は少し赤みがさしていて健康的に見えるというイメージがあります。

芦田氏: それはその通りです。健康的な肌、というのはキーワードとしてあります。特に黄色人種系では、少しピンキーな、赤みをさした肌が好まれるという傾向がありますから、好ましい肌色という意味でそういう傾向になってます。

 さらに肌色で重要なのは色だけではありません。「滑らかな肌」という表現をしてますが、肌の色が滑らかにつながるような設計をしてます。

――滑らかさというと明暗のグラデーションをきれいにということでしょうか?

芦田氏: その通りです。そしてなめらかさで重要なのは明暗だけではありません。顔の明るいところから暗いところへの過程で色相がズレてしまうことがあるんです。そうならないよう輝度による色相の差を上手に埋めることを「つながりがいい」と昔から表現しており、それを目指して必要な技術を入れています。色と明るさの両方の階調が滑らかでなければなりません。

――肌色の表現にはホワイトバランスをどう処理するかも欠かせませんよね。

芦田氏: はい。多くのシーンでオートホワイトバランス(AWB)を選択して撮っていると思いますから、AWBでどれだけ安定した肌を再現するかも効いてきます。

 AWBはいろんな評価をして、光源はこうだろうと決めて、その光源ではこう見えたらきれいだねという方向に直していますが、それと同じくらい重要なのが安定性です。少しシーンが変わっただけで、色が変わるような不安定さでは困りますからね。

――室内だと照明の色温度が落ちますし、屋外でも日陰に入ると色温度が上がりますよね。そういうときの処理はどうしているのでしょう?

芦田氏: 照明の雰囲気は少し残すようにしています。AWBの方針として、その場の雰囲気、たとえばタングステン灯の下で撮るときはその赤みを少し残すようにしています。ただ、屋外の日陰で青みが残るというような点については直して欲しいという要望もありますから、少しずつ直すようにしています。

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――逆に肌色を重視しすぎると背景の鮮やかさに欠ける、という問題も出てきますよね。

芦田氏: 現状はフィルムシミュレーションで対応してます。たとえば、ベルビアモードでは肌色よりも風景を重視した鮮やかな絵づくりになりますし、アスティアでは両立を目指し、プロビアはいろいろなシーンに使えるようセッティングしています。

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