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アフリカの撮影現場で起きる機材トラブルとバックアップの重要性山形豪・自然写真撮影紀

» 2013年11月22日 10時27分 公開
[山形豪,ITmedia]

 機材トラブルは、大概最も起きてほしくない時に起きるもので、過去幾度となく冷や汗(脂汗)をかいてきた。そのため、撮り直しのきかない現場では、撮影機材でも、データストレージでもそうだが、バックアップを準備することは極めて重要だ。

photo 普段撮影に使用しているD4とD800 タフネスカメラの「Nikon Coolpix AW110」にて撮影

ボディは複数台必要

 どんな撮影でも、携行するボディが1台だけというのはリスクが高過ぎる。1台が壊れても即座に別のボディで撮影を継続できるようにしておかねば、大切なショット、決定的な瞬間を逃してしまうかもしれない。まさかスマホで撮影続行とはいかないのである(いまだにフィーチャーフォンしか持っていない私には、それすらできないが……)。

 現在使用しているボディはD4とD800の2台だ。特性が異なっているので、どちらがメインでどちらがサブという位置づけはないのだが、操作方法がほとんど同じなので、同じ感覚で使えるのがありがたい。本当はボディがもう1台あれば、広角から超望遠のレンズ3本をそれぞれ付けっぱなしにして、レンズ交換の回数も減らしたいところなのだが、それだと機材の体積と重量が増え過ぎて、移動が困難になる上に、経済的な負担も大きくなるので、現在のところ2台体勢でやりくりしている。

photo 今回、南部アフリカでの撮影に使用した機材。この他にもパソコンやポータブルHDDなど周辺機器多数

 従って、もし現場で2台のカメラが同時に使用不能になった場合は、運が悪過ぎたとあきらめるしかない。しかしまがら幸いこれまでのところ、両方一気にダメになる事態には見舞われていない。自分の極めて荒っぽい(雑な)機材の扱いを顧みると、これはかなり奇跡に近いのではと思う一方で、やはり耐久性の高い機材を使っているおかげではないかとも感じる。仕事として写真を撮る以上、この辺りにも高額なハイエンドモデルを使わねばならない理由があるわけだ。決して安価とは言えないあの価格には、その辺りの「保険料」が入っているのだと自分には言い聞かせている。

レンズも数本あった方が安心

 ボディが2台あってもレンズが1本だけでは当然話にならない。今回のフィールドには、計6本のレンズを持って行った。特殊用途の「Ai AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D」と「PC-E Nikkor 24mm f/3.5」以外に、広角側2本(Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED、AF-S Nikkor 24-70mm f/2.8G ED)と望遠側2本(AF-S Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR、Ai AF-S Nikkor ED 500mm F4D II(IF))である。当然、あらゆる画角がカバーできるようにというのが第一目的であるが、広角、望遠ともに一本が壊れても撮影が継続できるようにするためという理由もある。

photo 車からの撮影時には、機材は助手席に置く

 機材の故障および破損の原因で圧倒的に多いのは落下による衝撃だ。繰り返しになるが、私は機材の扱いがかなり荒い。綺麗に使うことより即応性を重視しているので、車から撮影する際などは、ボディ/レンズは助手席の上に置きっぱなしにして、すぐ手に取れるようにしている。それだけに、しょっちゅう落としもするのだ。

 7月末から10月末まで南部アフリカで撮影を行っていた際も、ご多分に漏れずAF-S 24-70mm f2.8Gを落として壊した。落下の衝撃で鏡筒がへこみ、ズームリングが回らなくなってしまったのだ。使用頻度の高い標準ズームが戦線離脱となったのは痛手だったが、広角側はAF-S 17-35mm f2.8D があったので助かった。

 そのほかにも、今回は星空の撮影中にD800が雲台から滑り落ちたり、D4のファインダーアイピースが割れたり、80-400mmのズームリングが回らなくなったりと、実に様々なトラブルに見舞われたが、いずれも撮影に大きな支障をきたすことなく済んだ。やはりバックアップは安心して撮影に臨むにあたって必要不可欠なのだ。ただ、機材の修理/メンテナンス代が約7万円というかなりの高額になったのは大きな誤算だった……。

photo ナミブ砂漠での撮影中、見事に割れたD4のファインダーアイピース。 Nikon D800, AF-Micro Nikkor 60mm f2.8D, 1/500秒 f11 ISO1600

【お知らせ】

 東京ミッドタウンの富士フイルムスクエアにて開催中の企画写真展「生(ライフ)〜写真がとらえる野性〜」に山形氏が参加しています。野生の中で懸命に生きる生き物たちの姿を山形氏のほか、鍵井靖章氏、前川貴行氏、松本紀生氏が追っています。

 会場内には写真撮影OKのコーナーもあり、11月30日(土)14時からは参加4名のトークショーも行われます。詳細は富士フイルムスクウェアのWebサイトhttp://fujifilmsquare.jp/をご覧下さい。


著者プロフィール

山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら

【お知らせ】山形氏の著作として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが好評発売中です。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)


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