ソニーが11月にフルサイズのミラーレス機「α7」を販売開始してから、早いもので1カ月が過ぎた。カメラ好きの間ではオールドレンズの母艦として使われることも多いようだが、フルサイズ機としては低価格なため、初めてのフルサイズ機としての購入も十分に検討に値するだろう。では、「初めてのフルサイズ機」として本製品を眺めると、本製品はどのような姿を見せるのか。APS-CのNEXシリーズを都合3台使ってきたものの、フルサイズ機は初めてという立場からの印象をお伝えしたい。
手にしたのは、ベーシックな販売形態となる「α7 ズームレンズキット」(ILCE-7K)。既報の通り、αにはスタンダードモデルの「α7」と高画素&ローパスレス仕様の「α7R」が用意されており、現在の所、販売形態としてはα7をレンズキットで購入するほか、α7をボディのみ、α7Rをボディのみ、と3通りから選択できる。
純正/社外品のマウントアダプター経由でフルサイズ対応の純正レンズ(FEレンズ)以外を装着するならばボディのみという購入の選択も成り立つが、コスト高にもなりかねない。手持ちのレンズを使うことが第一ではなく、フルサイズに興味があるんだけど……というのが購入動機ならば、選択はズームレンズキットのみというのが現状だろう。
レンズキットに付属する「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」(SEL2870)はフルサイズ対応ズームレンズといっても軽く(スペックシート上は295グラム)、レンズをボディに装着して、バッテリーやメモリカードを装着しても800グラム以内に収まる。α7本体グリップの握り心地もよく、ホールド感は上々に思える。右手一本で軽々と扱える感覚はNEX-5シリーズに通じるものがある。
前後2つの電子ダイヤル、露出補正ダイヤル、撮影モードダイヤルのいずれもカチカチとした適切なクリック感があって、“操作している”感は高い。それに標準ズームレンズを装着しても800グラムを下回る重量は“フルサイズ”という響きに反して、軽快なハンドリングを提供してくれる。EVFの反応は良好で、「フルサイズだから」「ミラーレスだから」といったエクスキューズを感じることなく、撮ることに没頭できる。
とはいえども、没頭を阻害する要素もいくつか散見される。EVFメインで撮影をしているとEVFの暗さが気になってくるほか(実際のところ、そう暗いわけではないのだが、撮影しているうちにいつの間にかOVFと比較して“暗いなあ”と感じてしまうことがある)、個人的にはどうしてもなじめないのがシャッターボタンだ。
α7のシャッターボタンはストロークに遊びが多く、シャッターを切ったときにも押し込んだ感覚に乏しいので、シャッターを切るというより、ボタンを押すという感覚しか得られない。もちろんこれには個体差もあると思われるが、複数の販売店でα7を触っても、カッチリしたシャッターの個体には巡り会わなかったので、これはそういう設定で出荷されているのだろう。使っていくうちに慣れるとは思うが、NEX-5RなどいままでのNEXシリーズではそういった感想を得たことはなかったので記しておきたいと思う。
今回はすべて「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」を使って撮影したが、確かにフルサイズセンサーらしい階調性の豊かさや暗所ノイズの少なさは体感できたものの、やはりこのレンズではボディの能力をすべて引き出しているようには感じられなかった。次回は現在入手できるもうひとつのフルサイズ対応FEレンズである「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」との組み合わせを試してみたいと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR