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» 2014年01月21日 07時00分 UPDATE

山形豪・自然写真撮影紀:アフリカで使う車の話

アフリカのフィールドで撮影するには、当然車が必要となる。では、一体どんな車種に乗り、どのように使っているのか?今回はそんなクルマの話

[山形豪,ITmedia]

 「広大なサバンナの中で男は1人、動物の姿を追い求め車を走らせていた」

 なんて書くと、さもソフトトップのジープか、フル装備のランドクルーザーで大地を疾走しているようなイメージが浮かんでくる。しかし、私のようなボンビー写真家の現実は、そんなにかっこ良くない。ほとんどの場合、どれだけ安い車で、どれくらいフィールドの奥まで踏み込めるかという次元でやりくりしているのだ。

photo 2013年に使ったフォルクスワーゲン・ポロ・ヴィーヴォ。南アフリカ、カラハリ・トランスフロンティア・パークにて。足回りがしっかりしていて、ダートでも運転がしやすい車だった

 では、実際どんな車に乗っているのかというと、最も多用するのは普通乗用車(セダン)のレンタカーだ。渡航前にネット予約をしておき、現地到着時に空港でピックアップする。流石に軽自動車では心もとないので、レンタル料が安い割にそれなりの荷物が積めて、航続距離が長く、長時間の運転でも疲れず、車からの撮影がしやすい(そこそこ窓が大きい)という条件に当てはまる車を選んでいる。

 今まで乗ってきた中で、最も気に入っているのはフォルクスワーゲンのセダンだ。トヨタや日産も悪くはないが、日本車は海外仕様のものでも、ドイツ車と比べてサスペンションが柔らかくて困る。例えば、トヨタ・カローラとフォルクスワーゲン・ポロを比べると、車高は大して変わらないのに、ダートを走る際、カローラではしょっちゅうハラをする。ちなみに、レンタカーは車種指定まではできないため、望み通りの車が借りられるとは限らないが、SUVに無償アップグレードされたりなんてこともまれにある。

 昨年7月から10月まで行った撮影では、首尾よくフォルクスワーゲンのポロ(VW Polo Vivo 1.3)を借りられた。ガソリン車で燃費はリッター17キロ、3カ月間で約1万7千キロを走った。その間、パンクが4回発生し、返却期日の3日前に、前方を走っていたダンプカーから石が降ってきてフロントガラスが割れたが、それ以外は目立ったトラブルもなく、至って快適に撮影をこなすことができた。

photo 撮影に際しては、窓の大きさは重要なポイントだ。この点でもフォルクスワーゲン・ポロは得点が高い。南アフリカ、カラハリ・トランスフロンティア・パークにて

 撮影地たる国立公園や動物保護区内の道は、当然ながら大半が未舗装だ。また、ナミビアのような国では、地図に記載されている幹線道路すらダートロードが大半を占める。アフリカの未舗装道路を走るには、それなりの慣れと注意が必要で、日本や北米、ヨーロッパでのドライビングとはだいぶ勝手が違う。

 その経験と知識をまったく持ち合わせていなかった十数年前、初めて行ったナミビアで、私は車を1台おシャカに(廃車に)している。この事故の一部始終は、私のウェブサイト内の「フィールド雑記」というページに書いてあるが、要は未経験の砂漠で、スピードを出し過ぎてスピンした挙げ句に車をひっくり返したのだ。幸い自分はかすり傷程度で済んだので、こうして笑い話にもできているが、後始末が大変だったことも含めて実によい勉強になった。

photo 十数年前、ナミビアの砂漠でひっくり返した車の事故直後の写真。砂漠での運転にはそれなりの慣れと知識が必要だと痛感した出来事だった。車種は超旧式のフォルクスワーゲン・ゴルフ

 あれからそれなりの経験を積み、現地の事情にも明るくなったし、車もパワステやABS、エアバッグなどが当たり前になったので、安全面はかなり改善されたと言える。何しろ当時南アフリカの安いレンタカーには、ABSはおろか、パワステやエアコンさえついていなかったのだから。

 とはいえ油断は禁物で、注意を怠れば死に至るし、道具にしても、普通の旅行では到底使わないものが必要となる。まず、車には必ず空気圧を計るタイヤゲージ、パンク修理キット、タイヤ用コンプレッサー、牽引(けんいん)ロープ、シャベルを積んでいる。砂地を走る際にはタイヤ空気圧を下げねばならないので、ゲージは必要不可欠なアイテムだ。またコンプレッサーも、一度下げた空気圧を、路面が変われば再び上げなければならないので、ないと困る。

 しかし、どうあがいても、しょせんセダンは車高が低く、トルクのない、タイヤも小さい車なので、スタックも珍しくない。まあ、砂に埋まっただけならシャベルで掘り出したり、タイヤの下に木の枝や石などの硬いものを突っ込めば、大抵どうにかなる。一番厄介なのは泥で、これは一度ハマると、自力でのリカバリーが非常に難しく、誰かが来て引っ張り出してくれるまで待つしかない。人の少ない地域では、誰かが通りかかるまで数日を要する可能性もあるので、持久戦に備えて、水と食料は絶やさないように気を付けている。

photo 2004年、ナミビアのバックロード(back road:裏道)だったろうかでスタックした際の様子。砂が深く、抜け出すのにかなりの時間と労力を要した。この時の車は日産・アルメーラ

 このように、フィールドでは普通乗用車の限界にいつも挑戦しているわけだが、絶対に四輪駆動車でしか行けない場所もアフリカには多々ある(というかそちらの方が多い)。魅力的な撮影地や、珍しい動物の生息地は基本的に辺地なのだ。従って、金のかかる四駆を使って撮影に臨む場合もあるのだが、これについてはまた別の機会に書いてみようと思う。

著者プロフィール

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山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら

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