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Foveon X3“Quattro”って何だ? シグマに聞く新「SIGMA dp」(前編)(2/2 ページ)

» 2014年03月26日 10時30分 公開
[荻窪圭,三井公一(人物撮影),ITmedia]
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メリルからクアトロへ

荻窪: いよいよクアトロセンサーの話ですが、一番の特徴は、3層で画素数が異なることですよね。一番上の層は1960万画素に増え、残りの2つは490万画素に減りました。いったいなぜそんな仕組みが必要だったのか、本当にそれできちんと各画素の色を撮れるのか。その辺を突っ込ませてください。

photo クワトロセンサーの概略図。3層構造であることに変化は無いが、3層の画素数は同一ではなく、一番上の層は約20M(1960万画素)、残りの2つは約5M(490万画素)となっている

桑山氏: まず弊社が何を目指しているのかというと、解像度なのです。画作りにおいては解像度が上がれば上がるほどいいと考えています。“画素数が上がるとデータサイズが大きくなって使いづらい”“大判プリントしないので画素数はそんなに必要ない”という声もありますが、解像力が上がれば上がるほどリアリティのある画になります。単位面積当たりの画素が増えるので、細かい質感描写も可能になります。また、細かい色のグラデーションも表現できるので、より質感のある表現が可能なのです。

 でも画素数を上げるとFoveonゆえの問題が出てきます。例えば1600万画素の絵を作る場合、一般的なセンサーであれば1600万画素分のデータを扱えば良いのですが、Foveonは3層構造ですのでその3倍の4800万画素分が必要なのです。そのため、画像の保存に時間がかかったり、画像処理エンジンをフルパワーで動かすためにDPシリーズのバッテリーの持ちが悪かったりしています。

 今回、クアトロセンサーを開発するときには、当然、画素数をもっと上げようと考えました。例えば各層を約2000万画素にしたい。でも、メリルの1600万画素×3から2000万画素×3にすると、6000万画素分のデータを扱うことになり、処理時間が長くなり、バッテリーの消費も増えます。これでは使い難いのでなんとかしてFoveonらしさを残しながら画素数を減らさないといけないと。

荻窪: 一番上の層だけを2000万画素にして、残りの2つを500万画素にする、というアイディアですね。

桑山氏: はい。技術陣が実際の画素を減らしつつ、でも得られる絵は画素を増やしたのと同じようにしようと考え出しました。Foveonの特性を利用すれば4画素→1画素→1画素とすればできるのではないかと。単純にいえば、一番上の層でブルーの色情報と解像情報を取得し、その解像情報をTRUE IIIでGとRに載せて処理をすると、4:1:1から4:4:4のフルカラーの画像が出てくるのです。そうすれば、2000万画素+500万画素+500万画素でデータ量は合計で3000万画素(実際には2900万画素)に抑えることができます。

photo RGBの色情報は画素数で換算すると2000万/500万/500万画素の4:1:1となるが、TRUE IIIによって4:4:4とする

荻窪: なぜそんなことが可能に? Bの層で2000万画素でも、GとRの層では500万画素ずつですよね。でも最終的に2000万画素の絵を作るにはGとRも2000万画素にしなきゃいけない。そこで補完は必要ないのでしょうか?

桑山氏: 実は、Foveonの分光特性は、幅広い感度を持っていて、どのフォトダイオードもほかの隣接する波長をとらえているんです。この特性を生かして1:1:4を実現しています。つまり、一番上の層にはB以外にもGやRがどれくらいあるかという情報も得ているのです。この情報とGやRの色情報を加味して色を導き出しています。

 実際のディテールがあるロケーションのところで色情報を取り出しているので、補完ではありません。そのロケーションで色情報と解像情報を掛け合わせるので色解像度が落ちないのです。

photo Foveonセンサーの分光特性図

 この方法を実現したことで、解像度を上げながらもデータ量がぐっと減りました。ただ、RAWデータのファイルサイズは増えています。それは、今までの12ビット記録を14ビットにしてよりクオリティを追求しましたから、トータルではその2ビット分の増加が上回ってしまいまして。

荻窪: なんと(笑)。その分、階調特性がよくなるのですね。

桑山氏: そうなんです。しかも解像度はメリルより約30%程上がっています。同じシーンを撮影して細かい被写体や遠くに人が写っているあたりを拡大表示してみると差がわかると思います。

荻窪: 解像感が高い理由は今の話で分かりました。ただ、Foveonセンサーを使っていると高感度に弱いという印象を受けるのですが、なぜなのでしょう。

桑山氏: 高感度について、色解像度が高いとノイズによって受ける影響が大きいんですね。これが高感度になると、より目立ってきてしまいます。

 そこに強いノイズリダクションをかけると、Foveonならではの解像感が失われてしまいます。ノイズは残るけどシャープな絵を出すか、シャープさは失われるけどノイズが少ない絵にするかで前者をとったわけですね。ただパソコンでSIGMA Photo Proを使用してRAW現像していただく場合には、ご自身で調整が可能です。

荻窪: わたしは最初にクアトロセンサーの模式図を見たとき、これは下の層の画素サイズを大きくすることで高感度に強くすることを狙ったのだと感じたのですが、どうなんでしょう。

桑山氏: 1:1:4を採用したことで、データ量を減らし、処理速度の向上やバッテリー持ちの改善を図っておりますが、実際にGとRの画素サイズが大きくなったことで、ノイズ特性の改善も図っています。まだ最終的なチューニングが終わってないので具体的にはいえませんが、メリルより1段分くらいは良くなるかなと思います。

 という感じでまずはクアトロセンサー編。

 FoveonはRGBが三層構造になっている、というのは知っている人も多いだろうが、具体的にはどうなっているのか、なぜ三層の順番が、BGRなのか、その辺まで突っ込ませていただいた。それにしても、一番上の層とそれ以外の層でピクセルの大きさを変えるというアイディアもすごいし、理論上それでちゃんと復元できるというのもすごい。

 後編は、クアトロセンサーを実装したdp2 Quattroの話をしていただくのである。

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