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なぜ一眼風?、画質はPro1と同じ? 「FUJIFILM X-T1」誕生と狙いインタビュー(1/2 ページ)

» 2014年04月03日 12時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 富士フイルムが創立80周年記念製品として投入した「FUJIFILM X-T1」。クラシカルなデザインはシリーズ製品共通ながら、そのスタイルはこれまでのレンズ交換式FUJIFILM Xで採用されてきたレンジファインダー風ではなく、ファインダーを光軸上の配置とした一眼レフ風とするなど、そのコンセプト自体も既存モデルと一線を画する部分が散見される。FUJIFILM X-T1はどのような意図で生み出されたのか、Xシリーズの商品企画を担当する同社光学電子映像事業部 営業部 担当マネージャーの上野隆氏に話を聞いた。

photo 富士フイルム「FUJIFILM X-T1」

X-T1のスタイルは“両輪”で行われた証

上野氏: ご存じの通りレンズ交換式カメラは、複数のレンズを交換することでさまざまな人の、さまざまな利用スタイルに対応できるシステムカメラです。ですが、私たちはXシリーズを投入する際、いきなりすべてのひとに受け入れてもらえるもの(システム)を準備するより、まずはひとつのスタイルを打ち出すことから参入しようと考えました。そして投入したのが、X100です。レンズ固定式の製品ですが「富士フイルムならではの色と画質」を提示することが、納得感のある方法ではないかと考えたからです。

photo 富士フイルム 光学電子映像事業部営業部 担当マネージャーの上野隆氏

 レンズについても「提示」型の用意から始まりました。レンズ交換式の第1弾「X-Pro1」と同時に用意した3本はすべて単焦点(「XF18mmF2 R」「XF35mmF1.4 R」「XF60mmF2.4 R Macro」)で、スナップカメラとしての存在感を提示するレンズラインアップとしました。

 その後に広角レンズや標準ズーム、それに望遠ズームなどレンズバリエーションを拡大することでさまざまな撮影スタイル、利用者に受け入れてもらえるようにと取り組みを進めてきました。

 レンズの充実が進むにつれて、レンズのキャラクターに応じたボディが必要だろうという段階 ―― 大きなレンズを快適に使うためにはボディをしっかりと保持できるグリップも必要ですし、焦点距離の長い撮影ならば光軸上にファインダーも欲しい ―― つまりX-T1の企画に至りました。

――レンズとボディの企画は並行して進めているということでしょうか

上野氏: そうです。例えば「XF23mmF1.4 R」は組み合わせるボディとしてX-Pro1、「XF27mm F2.8」はX-M1をイメージしていましたし、「XF56mmF1.2 R」はバッテリーグリップを装着したX-T1をイメージしています。レンズ交換式カメラはレンズとボディを両輪として考えていかなくてはなりませんし、利用シーンをイメージしてのレンズ企画というものもあります。私は双方の企画に携わっていますので、両者の関係は緊密なものにしているつもりです。

 35ミリ換算で35/50/85ミリ相当の明るい単焦点レンズは、単焦点レンズのなかでも特別な意味のあるレンズですし、当初からのシリーズコンセプト、スナップシューティングに使うレンズとしては外せないものです。85ミリ相当となる「XF56mmF1.2 R」は当初、開放F値 F1.4で企画し、ロードマップにもそのように記載していましたが、APS-Cミラーレスに組み合わせるということから、ピントの合わせやすさや被写界深度の実用性、価格、サイズ、どれを見てもF1.2で提供するメリットが十分あると考えたのでロードマップを変更したのです。

――レンズとボディを両輪として製品企画を進めていくなかで、X-T1の一眼レフ風デザインは必然的に生まれたということですが、ニコン「Df」やオリンパス「OM-D E-M1」など各社より登場している、いわゆる趣味層向けカメラのボディデザインが類似しているのはなぜでしょう。

上野氏: 「使いやすいカメラ、趣味層に向けたカメラはなにか」を自問してゆく結果、方向性として各社似てしまっているという気がします。ただ、私たちとしては初代機であるX100から継続してダイヤルを多用した操作インタフェースを採用し、ミラーレス機がファインダーを非搭載とする潮流の中、X-Pro1のハイブリッドビューファインダーやX-T1のマルチモードビューファインダーなど、徹底してファインダーにこだわっており、取り組みとしてのブレはないと自負しています。

 もっとも、それが革新的だと言っている訳ではありません。ダイヤルで撮影操作を行いファインダーで被写体を見ながら撮るというカメラの原点に忠実なだけで、“写真機の原点に戻る”というXシリーズの基本を踏襲しているのです。

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